谷 好通コラム

2005年04月18日(月曜日)

1159.American Dream

今回のアメリカ出張では、合計700枚にのぼる写真を撮った。
それだけたくさんのことを感じたことでもある。
だから、書きたい事も山ほどある。

 

しかし、いつまでもアメリカのことばかりを書いていても、
日本に帰ってきてから事を何も書けなくなってしまう。

 

一昨日には涙が出るほどのうれしいことがあったし、
昨日は、人間以外の生き物から切ないほどの情を感じ、胸が詰まった。
今日は今日で、昔の青い自分を思い出させられて、胸が痛くなることがあった。
私は、何でこんなに毎日、感動してしまうのだろう。
ちょっとおかしいのではないかと思うこともある。
で、
毎日書きたいことだらけなのだが、自分の筆のスピードがついていかないし、
日本に帰ってきてから嵐のような生活になっている。
アメリカの書きたい事がまだいっぱい残っているのだが、
しかし、いつまでも時間をかけていてもイカンと思うし、
どうせ、また、アメリカには行くことになるだろう、近いうちに。
その時にまたいっぱい書けばいい。
だから、
アメリカでのことはこの話で終わりにしようと思う。

 

 

 

Los Angelesでは何軒もの「米式大量連続洗車」の店を見た。
特に、詳しく店の運営について話を聞かせてくれたMr. Grantの店は圧巻であった。
彼の店は高級住宅街の中にあって、
いわゆる高級車が数多く来店している。
ベンツ、BMW、ポルシェ、ジャガー、キャデラック、
まるで高級車の見本市のようである。

 

この店は確実に儲かっている。
見学に行ったのが晴れた土曜日であることを割り引いても、
ものすごい来店の客数には圧倒された。
この店は半端ではない利益を上げていることは間違いなさそうだ。

 

 

洗車のメニューからの平均単価は多分20ドルぐらいだろうか、
しかし、会員として割引を行なっているようで、それを考えると15ドルぐらいか。
彼は具体的な金額は口にしない。
しかし、月間の来店台数が約18,000台である事は教えてくれた。

 

私の勝手な計算では、
・洗車売上げが、
15ドル×18,000台=270,000ドル
(日本円28,500,000円!)

 

・コーティング、室内クリーニングなどのディテールが
20台に一台として、
(ディテールの単価は意外と高い。平均60ドルぐらいか)
18,000/20台×60ドル=54,000ドル
(日本円5,670,000円)

 

・ガソリンの給油が
洗車三台の内一台として、
(受付で給油サービスもしているが、市況より少し高いので客はあまり入れない。)
18,000台/3台×山勘で利益5ドル?=270,000ドル?
(日本円3,150,000円?)

 

その他にもオイル・小物などの若干の販売利益があるだろうがそれは無視しても、
この店の売上げは五千万円、粗利益では三千二百万円以上のものであろうと
勝手に想像した。

 

高級住宅地の、しかも商売として一等地であろうこの店は
ゆうに一千坪以上の敷地を持ち、
オールコンクリート張りのきれいなフィールドに立派な建物と、巨大な機械。
これらの投資と償却、リースをむちゃくちゃ乱暴に、
店舗費として1ヶ月7~8百万かかるとする。(大雑把過ぎることは百も承知)
問題は人件費だが、
洗車機の中で洗車をしたり、
フィールドで仕上げをしていたスタッフの時給は、6.75ドル/hと聞いた。
日本円で約700円/時(意外と安い!)
作業スタッフは60名いると聞いた。
(200時間/月×700円×60名)+管理者達の給料=900万円/月位だろうか。

 

その他の水道高熱・保険代(訴訟国家のアメリカではこれが大きいはず)で、
2~3百万円かかったとしても、
会社の運営利益は、1ヵ月に一千万円以上はあるはずだ。

 

これはすごいことで、
一年の経常利益が一億円以上ある企業は日本でも数百社に一社と言っていい。
それを一軒の洗車屋が出しているとしたら、
これはびっくり仰天なのだ。

 

ここはLos Angelesでもトップクラスの店ではあるはずで、
どの店でもここまで儲かっているかどうかは解らないが、
いずれにしても、
Los Angelesの洗車屋は非常に儲かるビジネスであることは間違いない。
(全米の中でも南カリフォルニア地区は特に洗車が多いとおっしゃっていた。)

 

ここで注目すべきは、
200時間/月×700円×60名=7,400,000円という部分。
全体の利益の中の20%程度でしかない。

 

働いているのは、ほとんどがヒスパニッシュで特にMexicanが多い。
メキシコから移住してきた人、あるいは働きに来ている人だ。
彼らの給料は安い。
時給6.75ドルは、日本円で約700円。
月200時間働くとして、月給にすると140000円。(手取りはもっと安い)
こんな給料で、物価が高いLos Angelesでやっていけるのであろうか。
もちろん無理である。
しかし、
彼らには“チップ”という収入源があるのだ。
これが、給料以上の収入源になっているのだ。

 

欧米には「チップ」という習慣があって。
洗車などのサービスに対しては、払うべき料金に20%程度を上乗せして払う。
洗車の出来栄えが気に入らなければ払わなくてもいいし、
10%でもかまわない。
何か特別に感謝したいことがあれば30%でもかまわないのだろう。
概して20%のチップを客は払う。
それは、すべてサービスを提供したスタッフ達のものとなる。

 

彼らは、会社から給料をもらい、(給料がゼロの場合もあるという)
直接接した客からも“チップ”の形で収入を得る。

 

だから、会社は利益の20%程度の給料をスタッフに払っておけば、
料金とは別に料金の20%のチップを客からスタッフはもらうので、それでいいのだ。

 

物価の安い、つまり所得の低い近隣の途上国からの出稼ぎ労働者がいて、
しかも、彼らが必要な額の半分程度を給料として払っておけば、
彼らはチップで十分に生活を賄っていく。
それでうまく行っているのである。

 

アメリカが元祖の大量生産工場のように、
ものすごい数の車を、
広大な敷地と大量処理の連続洗車機を使って、
“とんでもない数のスタッフが”、
洗車と仕上げを、作り上げていく構造は、

 

移民、あるいは出稼ぎ労働者という「低所得層」があって、
しかも、チップという習慣があり、
人件費を極端に低く抑えられる仕組みが、
“とんでもない数のスタッフ”を動員できることによって「支えられている。」
と言ってもいいのではないだろうか。

 

「この仕組みは、日本ではなかなか実現できないなぁ~」

 

何箇所かの連続洗車場を見て、私はそう思った。
しかし、日本でも過去に、
何箇所かこの方式を採用したような洗車屋さんを見たことがある。
よくは知らないのだが、
東京とか関東のような濃密なマーケットの存在するところでは、
ある程度の成功を実現しているが、
地方都市などでこの仕組みを取り入れたところはほぼ撤退したと認識している。

 

高い人件費をカバーできるような圧倒的な需要がないと通用しないということか。
時代は変わっていくので、まだ解らないが、
現時点では、この仕組みは、日本では無理があるように思えた。

 

 

アメリカは自由の国である。
無数の大成功者が豪華な家に住み、贅を凝らした生活をしている。

 

Los Angeles郡のビバリーヒルズでは、
数億円もするような家々が延々と続いていたし、

 

 

ハリウッドでは、最高の華やかさに溢れていた。
(私たちでもホンの少し観光をしたのだ。)

 

 

しかし、この華やかさの裏では人間同士の激しい戦いもあるのだろう。
写真には撮れなかったが、
その場所の反対側の道路で“人が撃たれ”、
警察官が、それを処理をしていたのを見てしまった。
しかし、驚くべきは、
その間も、このショーマン達のパフォーマンスはほぼ一時も休むことが無かったのだ。
彼らは“プロ”なのである。

 

 

車を洗わせる側と、
車を一生懸命洗う側。
チップを払う側と、チップをもらう側。
アメリカは、日本などとは比べようも無く、そこがはっきりしている。

 

 

ならば、アメリカは非情な国かというと、そうではない。

 

彼ら、たとえばMexicanだって、
どんなチャンスを掴むか、
どんなに頑張れるか、
どんな才能を持っているか、
こけから、どれだけの能力を持つことが出来るのか、
何よりも、成功に対する不屈の情熱を持って、自らの実現力を発揮できるかで、
チップを払う側に回ることはもちろん、
大成功を手にすることは、決して不可能ではないのだ。

 

そんな人もいっぱいいるし、
みんなチップをもらいながら、それを、夢見て頑張っているのだ。
それが許される国なのだ。
アメリカという国は。

 

アメリカンドリームっていうのは、
本当にあるのだろう。

 

彼らの表情は決して暗くない。
むしろ希望に溢れているように感じる人もいた。

 

「今はこいつを磨いているが、見てろよ、もうすぐ、俺の車になるんだぜ。絶対に」

 

 

とりあえず、これでアメリカの話は終わりです。
今回の出張ではたくさんの方たちに、たくさんの親切を受けました。
大変なお世話もいただきました。
San AntonioのRobertさん。
Los AngelesのGrantさん。
私たちに話をしていただいても、
ご自分たちになんと利益もないのに、よく、色々なことを教えていただきました。
深く感謝いたします。

 

 

トニー谷川さんには、何と言ったら良いやら、
言い尽くせないものがあります。
私はものすごくトニーに興味を持ってしまいました。
でも、解らない事がいっぱいで、
今度もう一度お会いした時にいっぱいのことを聞いて、話して、
ぜひたくさんのことを書いて見たい。そう思っています。
また、アメリカに行くまで待ってください。必ず書きます。

 

今回のアメリカは、トニーがすべてでした。
ありがとうございました。

 

(私のお気に入りの写真です。)

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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