谷 好通コラム

2005年05月30日(月曜日)

1181.花粉症とブラックバス

“ひらめき”というものは、
突然、何の兆しも無く、ふと頭の中に浮かび上がってくるもので、
熟考の末のひらめき、集中して考えた末のひらめきというものは、多分ほとんどない。

 

いつもは一つ一つのことを別々に考えていて、
それぞれに違う結論を出しているものが、
ある時、突然、たくさんの事がフッとリンクしてきて、
別々に考えている時とはまったく違う結論を思いつく。
それまで解決できなかった事が、その思い付いた事で一挙に解決する。
そんなひらめきもある。

 

あるいは、たくさんの別々の事があって、それぞれに結論が出ているのだが、
なんとなくモヤモヤしていたことが、
突然、違った角度で見た時に、それぞれが関連付いていることに気が付き、
すべて、つじつまが合うことがある。
「な~んだ、そういうことか」ということ。

 

あるいは、一つ一つは普通のことに思えても、
それが全部集まると、非常に特殊なこと、あるいは何かが特定されることもある。

 

たとえば、
「A」のことを知っている人は大勢いて、それ自体は普通のことである。
そして、自分のことを「B」のような人間であるという人も大勢いて、
それ自体は普通のことである。
「C」のことについても、「D」のことについても
同様なことが言える。

 

しかし、「A」のことを知っていて、
「B」のような人で、「C」も「D」にも当てはまる人というのは、
世界中にただ一人しかいない。
そんな風に、フッと気がつくことがある。

 

もっと具体的に言うと、
何か事件があって、
たくさんの物的証拠と状況証拠があるが、
それぞれは、犯人を特定できるものではないが、
すべての物的証拠と状況証拠を照らし合わせると、
ただ一人の人物にたどり着き、
その人物が犯人であるとすると、すべてのつじつまが合う。
そんな事がよくある。

 

事件その?・花粉症

 

春から夏にかけて「花粉症」が猛威を振るうが、
なぜか都会の人に花粉症が多い。
花粉症の原因が、杉の木やヒノキの花粉が原因なら、
杉やヒノキの生えている山林の里の方が花粉の量が多いはずで、
山林の里の人は、すべて鼻水ジュルジュル、目は真っ赤っかのはずだが、
そんな悲惨な花粉症の人は、むしろ都会の人の方にうんと多い。

 

これはおかしい。

 

多分、これは推理でしかないが、
本当の山奥の杉やヒノキは営林としての手入れがきちんとされていて、
たいして花粉は出ない。
だから、山奥に住んでいる人は平気なのだ。
しかし、
都会に近い山林は製薬会社が買い占めて、
杉やヒノキをわざわざたくさん植えて、
しかも、なるべくたくさんの花粉が出るような品種を、
わざわざ手入れをしないようにして、花粉がたくさん出るようにしているに違いない。

 

花粉症の薬や、特殊な花粉症用のマスクがたくさん売れるようにだ。
都会で花粉症が多いのは、製薬会社とマスクメーカーの謀略なのだ。
これで、すべてのつじつまが合う。

 

 

事件その?・ブラックバス

 

ずいぶん前から、
日本国中の池や湖に、外来種のブラックバスやブルーギルなど、
小魚を大量に食べる獰猛な種の魚が棲み付くようになった。
そして、それらの外来種が、
日本の池や湖に元々住んでいるフナやタナゴを食べつくし、
日本の自然の生態系を深刻に脅かしている。

 

問題のブラックバスやブルーギルなどの獰猛な外来種は、
ある時期、一挙に日本国中の池や湖に広がった。

 

これはおかしい。

 

ちょうどこの頃、
ルアーなどを使ったスポーツフィッシングなるものが、急激に、流行した。
これは、ブラックバスとかブルーギルのような
小魚を激しく追う肉食魚の性質を利用したもので、
昔ながらのエサ釣りとは趣を異なる。

 

元々、日本の池や湖には、そんなスポーツフィッシングに合う魚は少なかった。
居ても、かろうじてニジマスとか岩魚など
山奥の清流に棲む魚たちがいるだけで、それもブラックバスほど獰猛ではない。
しかも、ニジマス釣りなどの多くの場合、
そこまで行くには遠く、かなり歩くことも必要で、
日本におけるルアーフィッシングはそんなに普及するものではなかった。

 

対してブラックバスやブルーギルなどは、
それほど清らかな環境が必要でもなく、
都会に近い池や湖でも十分に生きて行ける逞しさを持っている。
しかも、擬餌であるルアーを追う性質も強い。
いやいや何よりも、ヒットしてからのファイトが素晴らしい。
ルアーフィッシングはブラックバスが、色々な意味において最高なのだ。

 

日本国中の池や湖にブラックバスを放流しよう。
そうすれば、みんなが手軽に、手身近かに、豪快なブラッバスのファイトが楽しめる。
そして、ルアーやロッド、リールなどの釣具などがたくさん売れる。

 

日本の自然の生態系を乱しているのは、そんな不純な動機を持った人間の仕業か?
証拠があるわけではない。
ひょっとしたら、自然にブラックバスが広がったのかもしれない。

 

しかし、ブラックバスやブルーギルが、池から池へと歩いて生息地を拡げる訳がない。
残念ながら、ブラックバスやブルーギルは歩けないのだ。

 

それとも、洪水などで池や湖からあふれた水に乗って拡がったか?
いや、そんなことは有り得ない。

 

日本の川や池、湖は、自然が壊滅状態になるほどまでに
護岸工事でコンクリートで固められていて、
いまや洪水など滅多にないのだ。

 

短い期間に一挙に生息地を広げた原因は、
どう考えても、
人間が、日本国中に、せっせとブラックバスを放流した以外には考えられない。

 

では、誰がそんなことをやったのか。

 

ルアーフィッシングを手軽に楽しみたいユーザーと、
もっとルアーフィッシングを普及させ
もっと多くのルアーフィシング愛好家を作り、
ルアーやロッド、リールなどを販売したい釣具のメーカー・販売店の利益が一致した。

 

手を汚したのは誰か?

 

そこまで推理した者は、いっせいに気がついた。
ちょうどその頃、日の出の勢いで急激に伸びてきた会社があったのだ。
釣具の“上州屋”。

 

状況証拠は揃った。

 

娯楽としての王者であった“釣り”が、ゴルフとかの他の娯楽の普及によって、
世の栄枯盛衰の習のごとく、
娯楽の王者を滑り落ちそうな時、
昔からの釣りを、ルアーを使ったスポーツフィッシングとして、
新鮮な新しい娯楽に育てようと、
上州屋が、
身に火の粉を浴びる思いで、日本国中の池や湖にブラックバスを放流した。
そして、そのたくらみは見事に功を奏して、
日本国中に、ルアーフィッシングが普及したのだ。

 

そのもっとも功労である上州屋が急成長したのは言うまでもない。

 

なるほど、そう考えれば
すべてのつじつまが合う。見事な推理である。!(^^)!

 

・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
なんちゃって、
・・・・・・・・・・・、ぜんぶ、嘘、ウ・ソ・である。

 

「事件その?花粉症」は、すべて私の作り話で、
「事件その?ブラックバス」も、誰かから酔っ払った席で聞いた与太話である。
そんなことがある訳がないし、
あったら、世の中が狂っているとしか言いようがない。

 

でも、本当かもしれない。
こんな馬鹿な話、立証のしようがないのと同じように、
完全に否定するだけの逆証拠もない。

 

(こんな無茶苦茶なつじつま合わせのような推論だけで、
中世のヨーロッパでは、何十万人もの女性が“魔女”として処刑されたし、
文化大革命では“反革命分子”としてでっち上げられ、
一説には何千万人もの人が処刑された。
まだ50年も経っていない、ついこの間のことである。)

 

 

花粉症の話も、
ブラックバスの話も、他愛のないつくり話である。
こんな類の話を、私たちの間では酒部チックな話と言って、みんなで楽しんでいる。
こんな話は、思いっきり大げさに言って、ウソに決まってるように話すのが、
面白く、正統なのである。

 

でも、決して「ナンチャッテ、ぜんぶ嘘だよ~」と言ってはいけない。
だれど相手に、これは絶対に嘘だと気が付かせねばならないことも必要なのだ。
この辺が、酒部チックの難しさである。

 

ひらめきは、面白くはあるのだが、
少しぐらいつじつまが合ったとしても、真実とは限らない。

 

こんな話を、誰かを落とし込む目的で使うことはよくあることで、
それは卑劣極まりないことだ。

 

酒部チックとは、そんな卑劣なものとは正反対に、
明るく笑い飛ばすことに意義がある。

 

この二つの話、昨日、
グリットの吉田君に同行した何とかという(また名前を忘れてしまった)
真面目を絵に描いたような人に、約十分間、
仕事の話の合間の余興として、マジな顔をして話した。

 

しばらく、この人は信じられないような顔をしながらも、
しばらく、半分信じていた。

 

 

あ~、面白かった。

 

私は、だんだん酒部チックになってきたようだ。
(まだまだ、本家には足元にも及ばないが)

 

 

気がついたら、
会社の事務所の入り口に、きれいな花が咲いている。
手入れされたこの花壇の素晴らしい犯人は、間違いなく池本部長である。

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    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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