谷 好通コラム

2005年06月13日(月曜日)

1191.シンガポール雑感

日本の本屋で買ってきてもらったシンガポールのガイド本によると、
シンガポールは、自由貿易と税金の大幅軽減の政策によって、
驚異的な経済発展を遂げたとあった。

 

香港もそうであったように、
経済活動において、
関税と所得と消費に対する大きな税金は、概してマイナスの素であるようだ。

 

これは、実際に貿易に多少なりとも関わり、
実際に会社を経営してみて、
買い手に5%の税金が一律にかかり、
その会社が生み出した利益(所得)に大きな税金(48%)がかかることを体験し、
実感として思うことである。

 

何にでも税金がかかってくると、
消費者に安く物を提供することが出来ない。
“身動きが取れない”という圧迫感を感じることがよくある。

 

特に輸出入には、税金以外にも課税のための手続き費用という形で、
少なからずコストがかかってくる。
税金を掛けるために更なるコストがかかることは、
何か理不尽なことに思えてくるのだ。
ちょうど、
都市高速で高速代を徴収するための料金所で、
ひどい渋滞が起きることがよくあるが、
あれは高速道路の高速としての意味を激減させている自己矛盾と同じように思える。

 

シンガポールにおいては、かの昔、
その地理的なメリット活かし、自由貿易港として、
東洋と西洋を結ぶ貿易の中継点となり、急激な発展を見た。
また、それに伴う金融も発展した。
これは香港と同じように、国とは言えないほど小さな面積の国で、
非常に特殊な状態における特別な例であることはわかるが、
自由貿易が実現していることと、
法人税が22%という税金の安い国は、本当にうらやましいと思う。

 

シンガポールの超近代的ビルが並ぶ金融街

 

 

シンガポールは美しい国である。
そして、豊かな国である。
一つ一つのビルが非常によくデザインされて、品が良く
建築のクォリティは高く、
街は隅々まで掃除されており、緑も多い。
人々は表情豊かで、どの顔も幸せそうに見える。
シンガポールは、
絶対的に経済が豊かなのであろう。

 

しかし、狭い国であるだけに車の増加には非常に神経質だ。
台数を抑制するために色々な政策が行なわれていると聞いた。

 

ガイドをお願いしたAngさんから聞いた話。

 

まず、
シンガポールでは車の税金が恐ろしく高く、
私たちが日本で買う乗用車の値段の2倍になると言っていた。
しかも、毎年の新車登録の数が決められていて、
その枠を入札で買うので、
登録だけで2万シンガポールドル(140万円)もかかる。
例えば、ベンツのC180クラスを買うとなると、
車が500万円、車の取得の税金が500万円、登録の枠を買うのに140万円。
ざっと1,140万円かかるというのだ。
日本のカローラクラスでも500万円以上かかる。

 

ガソリンの税金も高い。
シンガポールは、大規模な原油の製油設備を持っていて、
ガソリン等の製品を輸出する国なのだが、
自国の車のための燃料には、たっぷりと税金をかけて、高くしてある。
それでもレギュラーで100円/?と、日本より安いぐらいだが。

 

自家用車に乗ることが金がかかるようにしてある。

 

もう一つ大切なことがある。
これは中国でも痛切に思ったことだが、
タクシーの値段が、日本とは桁違いに安いのだ。
車種は、トヨタのクラウンみたいな車(タクシー版のコンフォート)
そしてベンツのEクラスである。

 

初乗りが2.4シンガポールドル(168円)で、
そこから1メーター・0.1シンガポールドル(7円)ずつ上がっていく。
日曜日の混んでいない街中を10分・5kmぐらい走って、
5シンガポールドル(350円)
街中から空港まで何キロあったのだろうか
高速道路を15分以上、計25分ぐらい走って、確実に15km以上はある。
とにかく相当走って、
15シンガポールドル(1,050円)

 

タクシーを“足”として使える料金になっているのだ。
実感として、日本のタクシーとは桁違いに安い。

 

タクシーを日常の足として使えるぐらいの値段にして、
自家用車を持つ必要性を無くしている。あるいは減らしている。
これなら、自家用車を持たなくても、日常の生活にまったく不便を感じない。
タクシーは街中を十分に走り回っているし、
いつ、どこでも捕まえることが出来る。
タクシーの方も、客が絶えず、高い乗車率で安い価格をカバーしている。
街を走っている車の半分くらいがタクシーという感じがするぐらい。
とにかく、タクシーは多い。そして、便利だ。
中国でも同じであった。

 

タクシーを不自由なく日常的に使えるようにして、自家用車の増加を抑制する。
これば十分に有効な手段だ。

 

それでも、豊かなシンガポールでは自家用車が増えて仕方がない。
そこで、もう一つの渋滞抑制策がある。

 

タクシーに乗っている時、
シンガポールの車のすべてが、面白い物を付けているのを教えられた。

 

 

これ、早い話が日本で言う「ETC」である。
(シンガポールではERDとか何とかと呼んでいた。)
料金回収業務のいらない「プリペイド式」で、
シンガポールでは、すべての車に取り付けてあり、
この運用方法が面白い。

 

高速道路でも、このETC(面倒なので日本名で呼ぶ)は使われるが、
“都心部”に入る箇所の道路にもETCの料金徴収装置が取り付けてある。

 

通勤時間である午前8時から9時半(不確実)の間は、“高い料金”が引き落とされ、
普段の昼間は“安い料金”で引き落とされる。
それが夜とか、休日には、
無料になってしまう。
道が混む時間には、高い料金を取って、なるべく走らせないようにして、
夜間とか休日は、道が空いているので、どんどん走りなさい。
という仕掛けだ。

 

これは、名案だと思った。

 

考えてみれば、この国の人口の78%が中国人だ。
中国人に何かルールを守らせようとしたら、「罰金」が一番効く。
あるいは金がかかるようにすればいい。
これは中国本土でも実証されている。

 

やらせたくない事があれば、金がかかるように税金を掛け、
あるいは罰金を課す。
やってもいいことは、無料。あるいは無税。
その意味で、貿易は国のためになり税金は課さない。自由貿易が基本なのだ。

 

この国では、政府の力が大変強く、
しかも、汚職が極めて少ないので、政府の政策が有効なのだそうだ。

 

ガイドのAngさんが言うには、「シンガポールは真面目の国よ」

 

 

そういえば、シンガポールで有名なのが、
町のどこでもタバコが吸えない事だ。
特に、タバコのポイ捨ては最高1000シンガポールドル(7万円)が課せられる。
観光客誘致のために、町の美化を進めるための法律なのだそうだ。

 

シンガポールでタバコが吸えるのは、
ホテルの自分の部屋の中か、特定のタクシーの中だけ。
あとは、どこもタバコは吸えない。
そう聞いて来た。

 

今回の一泊3日の強行軍の旅で、
ひょっとしたらタバコがやめられるかもしれないと、妙な期待までしてきた。
ところが、びっくり。
街のあちこちにタバコの吸殻入れがあり、その近くならばタバコを吸っていいという。
ホテルのロビーの中にすら灰皿があった。
観光地にはもちろん、当たり前の公園の中にすら灰皿が用意されていた。
タバコは吸い放題と言ってもいいぐらいだ。(持っていた二コレットが無駄になった。)

 

 

一体これはどういうことか。
多分、街中を禁煙にして街をきれいにするより、
ある程度、決まった場所で吸わせた方が、観光客に好評であり、
街もかえってきれいになるということか。

 

インド街で飲んだコーヒーは、恐ろしく甘かった。
コーヒーをカップからカップに何度も“長~く”移し変えて、さます。

 

 

ヒンドゥー教の寺院が美しい。

 

 

露天の野菜がみずみずしい

 

 

もう一つ、日本で聞いていた話と違う点があった。
「マーライオン」が、意外と立派であったこと。

 

マーライオンがあるのは、シンガポール随一の金融街のある港に面したところ。
このちょっと上流には、近代的なビル群と、
昔の倉庫をレストランに改造した新旧のコントラストが素晴らしい景観を作っている。

 

 

マーライオンは、その近代的な金融街を背景にした河口にあった。
なかなかの迫力である。

 

 

日本を出てくる時、
「マーライオンだけは見に行かない方がいい。がっかりするよ」と言われていた。

 

Angさんにそう言うと、
「そんなことありません。前まではマーライオンが置いてある場所も悪かったし、
だいいち、口から水を吹いていない時が多かった。故障が多くてね。
だから、場所をこちらに持ってきて、
像をきれいにして、水のポンプを新品にした。
いいでしょ、今のマーライオンは。」
と、シンガポールのシンボル・マーライオンを自慢した。

 

 

さて、
次回のコラムはちょっとショッキングなことを書く。
シンガポールでの洗車屋さんの実態を見学した時、
びっくりするような事があったのだ。

 

本当は今日書けばいいのだが、
昨日の朝、起きて、
一日中、見学をしたり、観光をしたり、夜はナイトサファリを見て、
そのまま、深夜1時05分発のシンガポール航空で名古屋に帰ってきた。
中部国際空港到着は朝8時15分。
飛行機の中では、不覚にもほとんど寝れなかった。
こちらの空港についてすぐに着替えて、東海市で地鎮祭。
そして、午後からも来客が何組かあって、今はこれを書いている。
そろそろ寝ていない時間が、40時間を越える。さすがにバテタ。

 

だから、シンガポールの洗車の「びっくり」は、明日のお楽しみです。

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    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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