谷 好通コラム

2005年09月19日(月曜日)

1248.空を、飛びたい。

テレビで「鳥人間大会」を見た。
第一回の大会を見たのはもう何年前、何十年前になるだろう。
ずいぶん長く続いているものだ。
人間の空を飛びたいという欲求がこの番組を長く続けさせているのかもしれない。

 

滑空飛行機と人力飛行機では、
私は断然、滑空飛行機が好きだ。

 

人力競技は、
飛行機の出来もさることながら、
やはり飛ぶ力を生む人間が主役で、
体力勝負は、空を飛びたいという憧れとは別のような気がする。

 

それより、
揚力と重力のバランスで空気の中を飛ぶ滑空競技の方が好きだ。

 

滑空飛行機の場合、
前に進む力、つまり推力は落ちる力。
つまり重力が推力となる。
落ちて、進むことによって、
翼の断面の形によって、
下を通る空気より、
上を通る空気の方が距離が長く流れが速くなり、
ベルヌーイの法則によって、翼の上下に空気の密度の差が出来、
上の空気のほうが薄くなる。
つまり上に吸い上げられるのだ。これを揚力という。
それに加えて、翼の上を通った空気は翼の後端で下向きの流れとなり、
その反作用で翼が上に押し上げられる。
その両方が揚力となって、
機体を上に押し上げる。
つまり、重力で落ちながら、揚力で機体を上に押し上げるので、
そのバランスで、
滑空飛行機は“飛ぶ”ことになるのだ。

 

何ともロマンチックではないか。

 

 

動力付きの飛行機は、
推力が、内燃機関あるいはタービンで回されるプロペラであり、
あるいは、多くの場合ターボファンジェットの燃焼ガス噴出の反作用であり、
ファンで圧縮された空気の噴出の反作用。
人力飛行機の場合脚力によって回されたプロペラの推力で前に進む。

 

なんか、こっちの方が味気なく感じるのだ。

 

それに比べて、
滑空の飛行機、グライダーは素敵だ。
重力で落ちながら、空気の流れを翼で揚力に変え、そのバランスで飛ぶ。
自然の力だけで飛ぶなんて、何とも素敵ではないか。

 

空を飛ぶなんて人間の限界を超越した行為をしながら、
自然の法則に逆らうどころか、
自然の力を借りて、自然の法則に従って、自然のままに飛ぶわけだ。

 

まるで自分が鳥になったように。

 

いつのことだったか、忘れてしまったが、
夢の中で、自分が空を飛んでいるのを経験したことがある。
何の夢であったかも忘れてしまったが、
自分が空を自由に飛んでいて、まるで夢のようだった。(夢なのだから当たり前だ。)
それで、
ものすごく感動して、
涙を流しながら目が覚めたことがある。
目覚めてからも、なぜか、しばらく嗚咽するほど泣いた。
遠い昔のことだが、今でも不思議な思い出である。

 

もう一つ、
実際に空を飛んだような気分になったことがある。
広島“西”空港から山陰の出雲空港に飛んだ時、
”ジェットストリーム” という飛行機に乗った。
この飛行機は、横3列、縦5列ぐらいのとっても小さな飛行機で、
なんと、客席と操縦席の壁が無いのだ。
たまたま座った席が[1A]、手を伸ばせば届くところに操縦士たちが座っている。

 

上空に上がってから、
私は、[1B]に座り直した。

 

[1B]は、操縦席と副操縦席(教官)の間になって、
操縦席と、操縦席前のフロントガラスから空の様子が丸見えなのだ。
「うわっ、すっげぇ」
思わずつぶやきながら、
私は、上空から出雲空港へ降りていく様子を、
操縦席から見る風景を、操縦士と一緒に見たのだ。

 

その時、出雲空港へ着陸するダイナミックな様子よりも、
降下する途中、雲に段々に近づく様子。
そして雲の上っ面をなめるようにして、やがて雲の中に飛び込んでいく様子に、
すごく感動したことを憶えている。
宮崎アニメの「暁の豚(?)」の、あの空の戦闘シーンのようだった。

 

まだ、あの飛行機は飛んでいるのだろうか。
飛んでいるようだったら、また、あの飛行機の[1B]に乗ってみようか。

 

人間は、空に対して、何か不思議な憧れを持っている。

 

グライダーにも乗ってみたい。
パラグライダーとか、ハングライダーとか、そういうのではなく、
翼を持ったグライダーがいいな。

 

 

今日は祭日なので、事務所には出荷業務の人はいない。
電話もまったくかかってこない。
朝から北海道から来てくれた訪問客を飛行場に迎えに行き、
事務所にいた何人かの人たちと共に、いっぱいの話をした。
とても有意義な一日であった。

 

それでも、帰りはいつもよりずいぶん早い。
夕日と共に帰宅である。

 

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    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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