谷 好通コラム

2005年11月19日(土曜日)

1288.目的と手段の交錯

研修の最初に必ずお話しすること。

 

「洗車とは、字のごとく読めば『車を洗うこと』。
でも、お客様にとっては
『洗車をやってもらう“目的”は、車を“キレイ”にしてもらうこと。』
『車を洗うという行為はその“手段”』にしか過ぎない。

 

お客様の「目的」が「車をキレイ」にしてもらうことならば、
その手段は、洗うことだけとは限らない。
洗う事によって得られた車のキレイだけでは満たされないのであれば、
水垢を取ったり、コーティングなどをして艶を出すことも欲しいだろう。
あるいは、車内もキレイにしたいと思えば、室内清掃もしたいだろう。

 

“目的”は『車がキレイになること』
“手段”としては『車を洗う』『磨く』『掃除する』などがある。

 

洗車をビジネスと考えた場合、
車を洗うという手段だけではお客様の欲求を満たすことは出来ず、
磨く手段も、コーティングをする手段も、掃除する手段も用いて、
お客様の目的である「車がキレイになる」を満たさなければならない。

 

だから、洗車とはイコール車を洗うことではなく、
洗車収益をビジネスとして考えた場合、
お客様の欲求するあらゆる手段を用意することも必要であるし、
その手段を、お客様の要望に応じて、
いかなる時も即座に用いることが出来る体制が必要となってくる。

 

洗うという手段だけを用意していたのでは、
洗うというキレイさのレベルで満足するキレイさの付加価値に対する欲求が比較的低い人だけを対象としたビジネスとなり、
低い付加価値をもとめる人だけを相手にしていたのでは、
ビジネスとしてのその商品単価は低い物になり、
ビジネスとして、あまり利益性の高いものとはなりがたい。

 

洗車をビジネスとして考えた場合、
単純に『洗車収益の向上=車を洗う台数を増やすこと』とはならないのだ。

 

お客様が洗車を買う目的は、車がキレイになること。
その手段として、車を洗う行為があり、
磨き、掃除する行為も、お客様の目的を実現するために必要であり、
あるべき手段なのである。
だから、洗車収益を上げたいと願うならば、
お客様の目的『車がキレイになる』の付加価値を如何に上げ、
魅力ある商品としての品揃えを豊富にし、
お客様に満足していただき、
その満足による報酬を如何にいただけるかを考えるべきなのだ。」

 

車を洗うという手段は、
車をキレイにするという目的のために存在しているのに、
いつの間にか、洗う作業自体が目的になってしまうと、
洗うという行為でお金をいただくようになって、
結果としての車のキレイさがいい加減になる。

 

つまり、
洗車という作業はするが、
車をキレイにするという目的を忘れているので、
結果的に車はキレイにならない。

 

それでは、お客様の目的と、作業の結果が食い違う事になるので、
その洗車は、お客様から支持されない。
つまり、
「なんだ、ここの洗車、ちっともキレイにならないじゃん。ダメだなこりゃ。」
ということ。

 

 

こういうことは、
洗車をいい加減に考えているかどうかという精神論的なことでない。

 

たとえば、

 

洗車とかコーティングについてのきちんとした作業マニュアルがあり、
スタッフの人はそのマニュアルを守って作業をしていたとしても、
それでもあり得ることで、
マニュアルにある動作の通りに作業をしているつもりでも、
その動作がどういう目的で行われるのかという意味を忘れてしまうと、
似たような動作であっても、
その目的を果たさない動作に変形してしまう。
すると同じような動作をしても、その目的とは違った結果を出すこともあるのだ。

 

そのマニュアルにある動作とは手段であり、
動作の目的をおざなりにすると、同じような手段を用いても、
目的とは違った結果を出すこともあるということだ。

 

作業マニュアルが崩れる時とは、
それを実行するスタッフの怠慢が原因にあることよりも、
実行する者、それを管理する者、その両方が
マニュアルの一つ一つが持っている目的を忘れる時であることが多い。

 

 

また、たとえば、
チラシなどの販売促進のためのツールを作る時、
単に「商品をより多く売ることが目的」とすると、間違った物を作ってしまうことが多い。

 

「売る」ためには、「売れる」ことが必要であり、
「売れる」ためには、「買っていただける」ことが必要である。
「買っていただく」ためには、お客様が「買いたくなる」ことが必要である。
お客様が「買いたくなる」ためには、
お客様に欲しいと思っていただくような魅力を感じていただくことが必要である。

 

販売促進の目的とは、
「お客様に、当店の商品を欲しいと思っていただくこと、
すなわち、商品に魅力を感じていただき、購買動機を与えること。」
ここにある。

 

その魅力とは、まず第一に商品そのものであり、
商品に魅力があり、その魅力をどう表現するかが、
販売促進の最も大切な手段なのだ。

 

商品の値引きとか、セット割引とかは、そのまた手段の一つであり、
商品自体に魅力がなければ、値引きという末節の手段を講じても、何をしても意味がない。
まず、商品の魅力である。
商品に魅力があってこその価格であり、
値引きを実行するにしても、魅力ある商品だからこその効果が出るのだ。

 

販売促進とは、お客様に対し、商品の魅力を伝えることがすべての前提となる。
商品の魅力を表現することが、すべての販売促進企画の前提となる。
その前提なくしての販売促進などまったく成り立たない。

 

目的は、お客様がその商品を欲しくなっていただくこと。
つまり、商品の魅力を表現すること。

 

例えば、ガソリンのように付加価値と魅力が固定しているものならば、
例えば、電化製品とかのように、その付加価値が知られている物ならば、
値引きは、大きな魅力の一つになるが、
洗車とかコーティングのように、
その店で作り上げられるサービス商品は、
その店の商品の魅力は固定していず、あるいは知られていない。
だから、まず商品そのものの魅力を表現しなければならないのだ。
商品そのものの魅力の表現なしでの値引きなどは、
その商品の付加価値が解らないので、まったく魅力としての意味はない。

 

目的と手段を混同すると、
ただの値引きが、販売促進だと勘違いする事になる。
手段が目的と交錯してくると、
どうしてもこういう勘違いが起きてくる。

 

何が目的であって、何が手段であるのか、
いつもそれを認識していないと、
手段と目的が交錯し、
手段が先行して、目的がなくなってしまうことがある。
戒めなければならない。

 

 

今日は、
明日決勝レースが行なわれるスーパー耐久“もてぎ戦”に来ている。
予選が行なわれ、
4台という少ないST5というクラスではあるが、
トップから3位の我が?17KeePreインテグラまで、コンマ秒以下の接戦となっている。
しかし、車の調子も上々で、トラブルもなく、静かな一日であった。

 

もてぎに向かう新幹線の中から、
富士山はやっぱり雲の中であった。
それでも、裾野が見えただけラッキーである。

 

 

“もてぎ”に到着したのは午後2時過ぎ、
このサーキットはもう冬になったように寒かった。
ピットウォールでは、寒がりの平木さんが銀行強盗のような格好をしていた。

 

 

相変わらずの?17、東名スポーツの手で今回こその万全の体制である。

 

 

マネージャーが作る前日から煮込んだ“おでん”は、
我がチームの名物である。
おでん、これが本当にうまいのだ。

 

 

私たちはピットを6時くらいに引き上げたが、
メカニックの人たちはまだまだ明日の準備に余念がない。

 

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    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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