谷 好通コラム

2006年08月09日(水曜日)

1488.ヨッチャンと呼ぶ人

この世に私の事を「ヨッチャン」と呼ぶ人が二人いる。
アメリカのトニーと、東京の蓮ちゃんだ。

 

トニーはロスに住んでいて、
私たちの仕事のお手伝いをしてくださっている。
私のことを親愛をこめて「ヨッチャン」と呼んでくれている。
メールの書き出しもいつも「ヨッチャン」
私も最大限の親愛をこめて「トニー」と呼ぶ。

 

 

もう一人、私を「ヨッチャン」と呼ぶ人がいる。
蓮ちゃん(ニックネーム)。
この人はとても不思議な人で、すごい魅力を持った人だ。
我が息子を大切に思ってくれている人であり、
我が息子にとっても彼女はとてもとても大きな大切な存在である。

 

そんな彼女と、私は、十年後の“駆け落ち”を約束している。
あの約束をしたのはかれこれ二年くらい前のことだから、
もう、あと八年後のことだ。

 

もちろんこの約束は秘密でも何でもない。
我が息子はもちろん、私を知っていて蓮ちゃんを知っている人なら誰でも知っている。
ならば、おふざけの冗談か、というそうでもない。
なんか、本当にそういう事があるような不思議な予感があるのだ。

 

私は冗談で、
「俺の引退は、“駆け落ち”と決めているんだ。
だって、例えば病気で働けなくなって仕方なく引退をしたり、
突然死んで、いやおうなく引退になってしまったりするなんて、暗いじゃん。
社長がどっかの若い娘に引っかかって駆け落ちしちゃったので、
しょうがないので、役員や会社のみんなが必死になって会社を盛り立てて行くようになった。
なんて方が、ずっと明るくって、面白くっていいじゃないか。
世間の人も、私をバカ扱いしても、残された会社の人たちのことは応援してくれるに違いない。
引退は“駆け落ち”がいい。そのほうが楽しくって面白い。」
酒を飲んだ時に、
そんなことをよく言っていた。

 

本当ならば、会社を自分の望みどおりに大きくして、
しかるべき後継者に会社の経営を委ねるという、
いわゆる“勇退”という形が一番いいのだろうが、
私の場合、仕事が大好きなので、
いつまでたっても、仕事をやめないような気がする。
みんなに「いい加減に引退してくださいよ。」なんて言われたりしたら、
反発して、余計に仕事にしがみつくかもしれない。
かえって惨めになるだけだ。
そんな私を、気持ちよく引退させるには“駆け落ち”が一番ぴったりなのだ。

 

そんなバカ話を、
我が息子と蓮ちゃんと会社のスタッフ数人、
東京のドイツ居酒屋で飲んでいた時にみんなに話して、ついでに
「誰か、俺と駆け落ちしてくれる人いないかなぁ」と言ったら、
蓮ちゃんが、
「ハイッ、ハイッ、ハイッ、私っ、私と駆け落ちしよう」と、
手を上げて叫んだのである。
私は、もちろん、
「おーっ蓮ちゃん、うれしいねー、よしっ駆け落ちしよう。十年後なっ。
十年経ったら駆け落ちしよう。」
と大歓迎したのであった。

 

あれから、
「俺は、引退は、駆け落ちで・・・・・・」という話をするときに、
「駆け落ちの相手も決まっているんだよ。」と続け、
「俺の息子の彼女。冗談じゃないよ。ほんとだよ。」と話すようになった。

 

この話を聞いた人もずいぶん多いと思うが、
相手は、決まって「あ~、バカバカしい。」というような顔をする。

 

バカバカしい話である。
バカバカしい話ではあるが、
私は、あと八年後に蓮ちゃんと駆け落ちをするという話が、
なぜか楽しみなのである。
たぶん実際の形で駆け落ちをすることはないのだろう。
でも、なぜか楽しみなのである。

 

この歳になって、
というよりも、これまでも色恋沙汰に全くと言っていいほど縁のない私が、
肉体的な欲望を持って駆け落ちをすることなどは100%ありえない。

 

そんなものではなくて、

 

いつか、自分が事業欲とか実現欲などから解放されて、
平らな境地に至ることが出来た時、
蓮ちゃんが、どんな形であったとしても、
身近にいてくれたらいいなぁ。
そんな気持ちがあって、
あと八年後の駆け落ちが楽しみだ、という言葉となっているのだろう。

 

蓮ちゃんは、不思議な人で
いつも人のことばかりを思っていて、自分のことをちっとも考えない人なのです。
いつも、いつも、人のことばかりを想って、
「いつか、みんなでお茶を飲んで、楽しく話が出来たら・・・」とか、
「いつか、みんなでお鍋でも囲んで、あったまって・・・」とか、
みんなとの静かな幸せを想っているのです。

 

「相手の幸せを思う気持ち。」のことを、人を愛する気持ちだと言います。
だから、みんなの幸せを願う気持ちをいっぱい持っている蓮ちゃんは、
みんなを愛しているのです。
きっと、心から愛しているのです。
私たちもいっぱい蓮ちゃんのことを愛しています。

 

そんな蓮ちゃんから手紙が来ました。
「愛する快洗隊の皆さんへ」とありました。

 

近く、一度、我が息子や仲間達を誘って会いに行こうと思っています。
お茶を飲みながら、みんなで楽しく話をしたり、
あるいは蓮ちゃんに腕を振るってもらって、お鍋でも囲んで、暖まったり?
はたまた、
八年後の駆け落ちの打ち合わせに。

 

 

(日記)
明日、中央トレーニングセンターの披露会が行なわれる。
それに備えて、?17ポルシェが運び込まれた。

 

 

中国から四人のスタッフ、アメリカからトニーがやってきて、
新しい会議室で、日本語と中国語と英語がごちゃ混ぜの楽しいお話。

 

※左から、私、大連のコンさん、上海の頼さん、奥さんの陳さん、喩さん、トニー

 

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    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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