谷 好通コラム

2006年08月15日(火曜日)

1452.「メイヨーチャン」

中国上海の頼さんの話。

 

「中国で商売をしていると、いつも“メイヨーチャン”に悩まされます。
キーパーの販売活動で、
キーパーのデモを見てすごく気に入って、
すぐ商品が欲しいという人がいても、
私は、お金をもらってからしか絶対に商品は出さないようにしています。
でも、
相手の店が立派で、社長も信用できそうな人物に思えて、
先に商品を出すことがたまにあるんですが、
いざ支払いの期日が来ても、ちっとも払ってこないんです。
だから電話をして「早く支払いをして下さい。」と言うと、
必ず『メイヨーチャン』って言うんです。
“メイヨーチャン”とは“金がない”という意味です。
『メンヨーチャンだから仕方ないだろう。』って、平気で言うんですよ。
全然申し訳ないなんて思っていないんですよね。
同じ中国人として恥ずかしいですよ。
中国での商売は“メイヨーチャン”との闘いみたいなものです。」

 

「メイヨーチャン(金がない)」は、
日本では、支払い約束を守れない恥ずかしいことであり、
「申し訳ありません。」の意味。
中国では、
「金がないんだから、しょうがないでしょうが~。」という
金を払わない正当な意味らしい。

 

 

次に「サープートゥ」

 

中国には「差不多(サープートゥ)」という言葉があって、
差は多くない、大して違いはないという意味でよく使われる。
何かの製品の設計図を渡して中国の業者に作ってもらうと、
全体としてはその通りに出来ているのだが、
細部において違う部分が多くあるようなサンプルを造ってくる。
「なぜこのネジが上についているのか、図面では横についているでしょ。」
と言うと、
相手から「サープートゥ、(大して違わないでしょ)」と来るわけだ。

 

「サープートゥ(大して違わない)」は、
日本では、
「似て非なるものであり、これではダメだ。」という意味であるが、
中国では、
「大して違わないから、別にいいでしょう。」という意味となる。

 

中国で何か製品を造ろうする日本人は、
この「サープートゥ」との闘いとなるのである。

 

 

「モウマンタイ」は、「問題ない。」
「メイクワイシー」は、「大丈夫。」という意味。

 

これは中国も日本もほとんど同じ意味で使われる。
しかし、中国で使われる場合、
「モウマンタイ」「メイクワイシー」の後に、
「何とかなるよ。」の意味がくっついていることには注意しなければならない。

 

 

中国は実に大陸的なのである。

 

こんな例は、私達からすると、
だらしないとか、いい加減だとか、無責任だとか、そんな風に写るが、
大陸的なだけなのである。
或いは、言葉の意味のちょっとしたニュアンスの違いだけなのである。

 

「メイヨーチャン」「サープートゥ」とは商習慣の違いであり、
価値観の違いなのであろう。
良いとか悪いとかの問題ではなく、「違い」なのだろう。
決して民族として劣っているというわけでもない。
もちろん、そのような商習慣、価値観が国際的なビジネスの中で通用するわけもなく、
中国の人もその事は良く知っており、お互いに戒めあい、改めようと努力している。

 

「モウマンタイ」「メイクワイシー」は、
日本語の「問題ない」「大丈夫」とは、ちょっと違ったニュアンスを持った言葉であり、
英語の「ノープログレム」とも、
まったく同じ意味ではないのだろう。
言葉の持つ微妙な意味の違いを理解できないと、
言葉の行き違いが出来て、埋めようのない誤解を招くことがある。

 

文化の違い、価値観の違い、そして言葉の違いは、
お互いがお互いに理解しようとしないと、国際的なビジネスは成り立たないのだ。

 

 

アメリカ・ロスのトニーとの話でびっくりしたことがあった。

 

「私達は塗装を磨く時、
コンパウンドという磨き剤とポリッシャーという機械を使う。
コンパウンドには、まず、粗目コンパウンドというものがあって、
ある程度大きな直径で硬い粒子で出来ている。
この粗目コンパウンドをポリッシャーという機械を使って塗装を磨き、
傷を消したり劣化した塗装を削り取る
この作業で塗装を削ったあとにはバフ目という細かい傷の模様がつく。
そのバフ目を細目という小さな直径の粒子のコンパウンドとポリッシャーで消し、
最後の仕上げに、もっと小さな直径の超微粒子コンパウンドで磨くと、
素晴らしいツヤが出る。」

 

塗装の研磨の基本的な過程を、このような表現で行なう。

 

ここでは、「コンパウンド」という言葉は、
粒子で出来た「磨き剤」全般を言い、
“粗目のコンパウンド”、“超微粒子のコンパウンド”など言う使い方をしている。

 

また「ポリッシュ」という言葉は、「磨く」という“行為”を差す言葉として使っており、
たとえば、磨く機械全般を「ポリッシャー」と言う使い方をしている。

 

ところが英語としての意味はどうも違うようなのだ。
「コンパウンド」とは塗装を削る物、つまり粗目の研磨剤を差し、
「ポリッシュ」とは塗装のツヤを出す物、
つまり超微粒子の研磨剤などを含む“艶出し剤”のことを指しているようなのだ。

 

つまり、「超微粒子の“コンパウンド”を使って“ポリッシュ”する」などという使い方は、
根本的に間違っているというのだ。

 

コンパウンドは言葉の意味自体が“粗目”を差していて、
「超微粒子のコンパウンド」などという言い方は、
「サラサラと砂のような岩石」とか、
「微細な巨岩」或いは「強大な砂粒」というような矛盾した言葉となるらしい。

 

「コンパウンド」も「ポリッシュ」ももともと英語なので、
それをカタカナの日本語で使う時、
本来の意味とはまったく違う使い方をするようになった例のようなのだ。

 

それを知らずに、アメリカの業者さんに自社製品を説明した時に、
とんでもない誤解を生んでしまっていたのだ。
その誤解に気が付いたのは、
トニーがお盆の間の研修に来てもらった時に、
アクアポリッシュが粗目から超微粒子に変化していく様子を説明し、
そのあと色々な話し合いをしている時だ。
ずい分長い時間と遠回りをして、両者の間に生まれた誤解がやっと理解出来た。

 

言語とは実に難しいものであり、
まったく同じ言葉であっても、
違う文化の中で使われていくうちに、
微妙に違う意味の言葉になっていくもののようだ。
国際的なビジネスを進めていく上での大きな教訓を得た。

 

 

昨日、中国のスタッフ達と夜のご飯を食べている時に、(トニーはその日帰っている。)
私は、酔っ払って
上海事務所の若い女性スタッフ“兪さん”に、
「今までの君のボス・酒部君と、現在の君たちのボス・畠中君と、どっちが好きか?」
と、聞いてみた。
その質問を頼さんが通訳して、
兪さんは、困ったように小さな声で答えた。
「酒部さん・・」
そこに居た畠中君はショックであっただろう。
その場に酒部君はいないのだから、
お世辞にでも「畠中さん・」と答えてくれればいいのに、
はっきりと「酒部さん・・・」と言われてしまったのだから。
でもそこは畠中君、笑って済ませた。

 

翌日の朝、つまり今日の朝、
ちょっと時間があったので、そのことが話題になった。

 

私が
「きのう、兪さんが、畠中君の前で酒部君の方が好きだと言ったのには笑ったね。」
と、頼さんに話したら、
「えっ?どっちが好きかって聞いたの?
僕は、“畠中さんと酒部さんとどちらが“スケベ”か?“って言われたと思って、
兪さんにそう聞いたよ。」

 

頼さんの聞き違いであった。

 

頼さんは兪さんに
「酒部さんと畠中さん、どっちが“スケベ”だと思うか」と聞き、
兪さんは困ったように「酒部さん・・・」と答えたのである。

 

言葉とは、実に難しいものなのである。
ちょっと意味が違うか?

 

 

「どっちが好きか?」を、「どっちがスケベか?」と間違えた頼さんと、
「日本に来て何が一番良かった?」と聞いたら、
即座に「トニーと会えたこと」と答えた大連からのコンさん。

 

 

「どっちが好きか?」で、振られたと思ったら、そうではなくてホッとした畠中君。

 

 

兪さんに、スケベだと指摘された酒部君。

 

 

正直な兪さん。

 

 

今回のお盆の間の研修中、三日間ずっと、“快洗ホテル”に泊まりこんで付き合い、
皆さんのお世話をした経営企画の河合さん。
ご苦労様でした。

 

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