谷 好通コラム

2006年10月16日(月曜日)

1494.冷静に怒鳴れる人

私は昔、よく怒鳴っていた。

 

何か気に入らないことがあるとイライラして、
そのイライラをそのまま口から出すと、怒鳴り声になる。
怒鳴るのは自分のためだ。
怒鳴ることで何かを解決して、
皆のためになることをしようなんて思っていない。
怒鳴るのは、ただ単に自分のイライラをそのまま口から出しているだけ。

 

怒鳴られた方は、
もちろん怒鳴っている人と議論になるとは思わないので、
ただ黙っている。

 

怒鳴っている方は、
相手が黙っていると余計にイライラして、もっと大きな声で怒鳴る。
しかし、
感情的に怒鳴っているうちに、
イライラのガスが抜けていって、次第に気持ちが落ち着いてくるので、
声のトーンが徐々に下がってくる。
それで終わりだ。

 

怒鳴った方も、怒鳴られた方も、
それで何かが進展したわけではなく、
怒鳴った人のガスが抜け、イライラが収まってスッとするだけだ。
しかし、
怒鳴った方と怒鳴られた方の二人の間には、
埋めようがない深い溝が出来る。

 

怒鳴り、怒鳴られたあとには理解とか、和解とか、融和などは決してなく、
怒鳴られた者の屈服から生まれた不信が残るだけ。
それを解っていても、
怒鳴るとスッとするので、つい怒鳴る。

 

特に、相手が自分に対して服従する立場、あるいは力関係にあると、
怒鳴っても、反抗が返って来るわけではないので、
つい、怒鳴りやすく、自分に甘えて怒鳴ってしまう。

 

どれだけの失敗をしただろう。
たくさんの失敗を重ねて懲りてくると
怒鳴ることによって得られるであろう「スッとする」予感に打ち勝って、
怒鳴らず、きちんと話をするようになる。

 

私も、今はすっかり怒鳴らなくなったのは、
たくさんの失敗で懲りた量が積もってきたからだろう。
人間的に成長したわけではなく、“懲りた”からなのだろうと思っている。

 

 

しかし、こんな普通のパターンの怒鳴りではなく、
計算づくの怒鳴りもあるようだ。

 

自分のキャラクターを「すぐ怒鳴る人」として作り上げ、
怒鳴ることによって人を操縦する術を身に着けている人がいる。
その人は、決して感情的に怒鳴ることはなく、
いたって冷静に、計算づくで怒鳴る。
あたかも感情に溺れて、怒り狂っているかのように怒鳴る。
顔色一つ変えずに。

 

このような人は非常に緻密で、
恐ろしいくらい頭のいい人であることが多い。
頭がいいから、しっかり計算をしていて
怒鳴り散らしてもある一部の人からの人望を失わないのだ。
ある意味において大物である。

 

私はそんな大物でもなく、
冷薄に感情をコントロールできる頭の良さもなく、
ただ、ただ、つい怒鳴ってしまって、
失敗して、懲りて、いっぱい懲りて、
怒鳴らなくなった小物である。

 

しかし、小物であって良かったとも思う。
冷静かつ計算づくで怒鳴ることが出来る大物は、
きっと疲れるだろうなと思うからだ。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

先日、仙台SUGOで練習中、突然ブローしたエンジンを分解した写真が来た。
それまでにも、分解するまでの作業の詳しい写真も送られている。
COXの吉永さんという技術の方が送ってくれたものだが、
その解説といい、詳しい写真といい、(合計で100枚以上あった。)
なかなか出来るものではない。

 

以下、吉永さんからのコメント。
「早速ですが、当社にてブロ-をしたエンジンを分解しました。
当社の見解は、まず2番のクランク小端部のメタルが何らかの原因で焼き付き
ピストンヘッドがシリンダ-ヘッドに何回も当たり
(ピストンヘッドスキシュフ部がかなり当たりへこみ有り)
ピストンが破壊されコンロッドがふられ、直下のバランスシャフトユニットでコンロッド
ボルト部分がちぎられ2番コンロッドがシリンダ-ブロックを貫通した模様です。
現時点で、なぜメタルが壊れたかは、原因は特定出来ませんが、
2番のクランクジャ-ナル部分にもキズがあり何らかの異物が
原因と思われます。

 

以上、ご報告致しますので宜しくお願い申し上げます。

 

コックス 技術部
吉永 孝司

 

 

※吉永さんのコメントと送られた写真を当てはめて見た。

 

1.まず2番のクランク小端部のメタルが何らかの原因で焼き付き、
クランク小端部でガタツキが出て、

 

 

2. ピストンヘッドがシリンダ-ヘッドに何回も当たり
(ピストンヘッドスキシュフ部がかなり当たりへこみ有り)

 

 

3.ピストンが破壊されコンロッドがふられ

 

 

4.直下のバランスシャフトユニットで

 

 

5.コンロッドボルト部分がちぎられ

 

 

6.2番コンロッドがシリンダ-ブロックを貫通した模様です

 

 

オイルパンには、破壊された部品のかけらが落ちている。

 

 

SUGOでブローした時に消火器を使ったため、
エンジンの分解を始めるまでに、
あたらこちらに入り込んだ消化剤を取り除くのに大変な苦労をかけたようだ。
消化剤は金属を腐食させ、配線にもダメージを与える。
写真はパワステアリングポンプが消化剤でダメージを受けている所。
消化剤によるダメージは広範囲にかつ奥深くまで及んでいた。

 

 

エンジンは全損。
新しいエンジンが用意され、交換されるのを待っている。
新しいエンジンと言っても、リンク品という再生品である。
新品なら90万円以上するベースエンジンが、
リンク品をドイツから送ってもらい40万円あまりで済む事になっている。

 

 

あまりにも突然にエンジンがぶっ壊れてしまい、
それこそ怒鳴りたい気分だが、
ここまで丁寧に解説してもらうと、とても怒鳴る気持ちなどにならない。

 

伝えることの大切さを思い出す。

 

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    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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