谷 好通コラム

2006年10月26日(木曜日)

1499.積み上げるべき物

新幹線で名古屋から新横浜に向かっている。
湘南で一つ大切な仕事があるのだ。

 

朝から今日は青空が広がっていて、
富士山が久しぶりにくっきり見えるかもしれないとワクワクしている。
新幹線から見る富士山で、
その姿がかろうじてでも見える確率が50%ぐらい。
半分は雲とガスばかりで全く見えないことが半分以上であるような気がする。
山全体が見えることはむしろ少なく、
写真でよく見るようなくっきりと浮かび上がった富士山を見ることは稀であって、
たぶん10%もない。
こんな素晴らしい天気の時は、
私はすでにカメラを目の前の網の中に入れて、
スタンバイOK!の状態である。

 

今日はきっといいことがあるに違いない。

 

アイ・タック技研?は六月が決算である。
ほぼ確定の試算書は七月末には出るが、
税務署に提出する正式な決算書が出るのは難しいことがたくさんあって、
九月末にまでずれ込む。
というより税務署への税務申告の提出期限が決算後三ヵ月なので、
何とか九月末までには出さなくてはならないのだ。
経理関係者も、顧問税理士の先生も期限直前になるとかなり必死である。

 

その正式な決算書が出ると、
信用調査機関が、データの更新を理由に訪問してくる。
日本の代表的な調査機関といえば
「帝国データバンク」と「東京商工リサーチ」の二社である。
両方とも毎年来られるので、もう顔見知りになっている。

 

そんな信用調査の人が必ず驚くのは、
この会社が約21年の創業以来、未回収金(不良債権・焦げ付きとも言う)が、
ほぼゼロであるということだ。
21年前にガソリンスタンドとして独立したその月に、
全経営者から引き継いだ近所のちっぽけな本屋さんが潰れて、
3万円余焦げ付いたあとは20年以上全く焦げ付きが発生したことが無かった。
それが、今年の後半、
東北の小さな用品屋さんが倒産して、20年ぶりに7万8千円ばかりが焦げ付いた。
そのあとすぐに、愛知にある一軒のスタンドがやはり倒産して、
2万円余焦げ付いた。

 

20年ぶりに焦げ付きが発生して、
それが2件続いたのは、金額が少ないとはいえ、
そろそろ、債権管理にも力を入れるべきなのかもしれない。

 

とはいえ、それにしても
20年間も焦げ付きがほぼゼロであったこと自体が異常なことだ。
奇跡に近い。
債権回収に対して特に力を入れてきたわけでもない。

 

なぜそうであったのかは、自分でもよく解らないが、
「キーパーを使っている会社で、焦げ付きになるような会社は一軒もない。
キーパーとはそういうものだ。」などと、
能天気なことを言って勝手に納得をしていた。

 

会社としては焦げ付きは20年間ほぼゼロであったが、
個人としては、
残念ながらそうではなかった。
あるガレージにエンジン代として20万円、
ある人にどうしてもと言われて貸したお金が30万円、
また、ある独立した若者に出資した100万円。
合計150万円も焦げ付いている。私の人を見る目は大したこと無いようだ。

 

※ここから名古屋に帰って来てから書く。

 

買ったものに対して、あるいは借金に対してお金を払うのは
経済の原点であって、
これ以上の前提は無い。
当たり前の中でも一番当たり前の話だ。

 

私の会社も、約21年間、
支払いについては、給料の支払いを含めて一日たりとも遅らせたことは無い。
大昔、大きな設備投資をして月末の支払いに詰まった時、
自分の給料を取らなかったことはもちろん、
自分の生命保険まで担保にしてお金を借り、支払いだけは絶対に遅らせなかった。
そんな事も当たり前のことである。
商売をこの社会でやりたかったら、
支払いだけは絶対に遅らせてはいけない。
それが最低限の信用であり、ある時には最高の信用につながる。

 

払うべきお金を払わなかったり、
借りたお金を返さなかったりすれば、その人の信用は一発で地に落ちる。
逆に
支払いを一日も遅れずに支払い続け、
借りたお金を一日の期限も遅れず返し続け、完済した時、
その事自体は当然の事とはいえ、その人の信用は着実に積み上がる。
目先の損得で、支払いを怠る者には、
絶対に得られないものであり、
一度失った信用は、二度と回復するものではない。

 

事業そのものが大きな信用を得るには、
その事業が世の中のためになっていて、
事業が世の人から支持されていることが前提となっている。
支持される事業を絶え間なく続けて、初めて世の中からの信用が得られる。
事業は世の中を裏切ってはいけない。
目先の損得で、たった一度でも世の中を裏切れば、
長い長い時間をかけて、たくさんの人の大変な努力によって積み上げた信用が、
たった一度の裏切りで、一挙に崩壊する。
事業者として支払いだけは一度でも遅らせてはいけないことと同じことである。

 

私たちがみんなで21年間かけて積み上げてきた信用は、
自分たちが気の着かぬほどに大きくなっていている。
ありがたいことだ。
ひょっとしたら、愚直に信用を積み上げてきたことと
21年間焦げ付きがほぼゼロであったことと何か関係があるのかもしれない。
そんな気がする。

 

 

あれ? それまで雲ひとつ無い青空だったのに、
なんと、富士山のところだけ雲が何重にもかかっていて、
全く姿が見えないではないか。
ガッカリである。
と・・・こんなこともある。
頑張らなくっちゃ。

 

 

仕事の後、秦野のCOXに寄って、KeePreゴルフを受け取った。
名古屋まで一人で乗って帰る。
レースカーはナンバー付きであってもサスペンションが固く、
非常に乗り心地が悪いものなのだが、このゴルフは何故か心地良い固さで、
快適なドライブとなった。

 

東名高速・由比ガ浜のSAから。

 

 

日本の高速道路は追い越し車線に
90km/hのスピードリミッターを着けた大型トラックが遠慮なく出てきて、
二車線揃ってみんな押し合いへし合いでダラダラ走っている。

 

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2006年10月26日(木曜日)

1498.膨大な報告の効果

約1ヶ月前、SUGOサーキットで練習中、
何の前触れもなく不意にエンジンブローした我がKeePreゴルフの修理が
無事に終わり、明日、神奈川にある工場COXに取りに行く。

 

11月5日のゴルフGTIカップシリーズの最終戦「筑波戦」に何とか間に合ったわけだ。

 

明日、湘南での午後からの仕事の後、
COXに車を取りに行って、そのまま東名高速を走って一度名古屋まで持って帰り、
明後日の午前中の大切な仕事の後、
今度は筑波までその車で走って行き、
その翌日、つまり明々後日、10月28日には筑波で練習もする。
筑波は私にとって初めてのコースであり、
おっさんレーサーとしては絶対に練習が必要なのだ。

 

二日がかりの神奈川⇒名古屋⇒筑波は、
たぶん、全部で700km以上はあるが、
新しいエンジンの“慣らし”をする必要があるので、そんな面倒な事をすることになる。

 

7月30日の「もてぎ戦」以来、
途中のSUGOでの痛恨のエンジブローを挟んで3ヶ月以上、
溜りきったストレスを一挙に発散すべく、
シリーズ最終の「筑波戦」に全力を尽くして戦う。
満を持してのレースに、我が心が子供のように躍っている。
仕事以外何も趣味の無い私だが、
自らの本能を猛獣の心にして戦うレースが心底好きで、
戦いを前にして、心が躍っている。

 

 

それにしても、SUGOでのあの突然のエンジンブローは不可思議なことだった。
コンロッドがシリンダーブロックを破って飛び出すまでに壊れたエンジンは、
全損となって、ベースエンジンをそっくり交換するまで重症であった。
DSGという最新の自動ギヤシフト装置を持っているこの車では
絶対にオーバーレブ(回しすぎ)はないし、
パワーダウンなどの前兆もなかった。
本当に納得のいかない突然のエンジンブローであった。
だから、
いまだにクレーム対象のトラブルではないかと思っているが、
あとは、ディーラーさんに対して
メーカー保証の対象になるのではないかとちょっと粘ってみるしかない。

 

しかし、不思議にも
修理をしてくれたCOXに対して文句を言う気には全くなっていない。

 

“COX”とは、
フォルクスワーゲンとポルシェのレースに関わる仕事をする会社で、
トヨタのTRD、日産のNISMOに匹敵する存在なのだろう。
私はよく知らないのだが、たぶんそんな存在だろうと思う。
ゴルフGTIカップレースと、ポルシェカップレースの主催者でもある。

 

そのCOXのメカニックの責任者であろうか、吉永さんという人が、
私のゴルフの修理を担当してくれた。
彼が実際に手を下したのかは分からないが、
修理の過程を、膨大な写真と共に、じつに事細かに報告をしてくれて、
その度に、自分の車が今どうなっているのか、
どんな風になっていたのがどのように処理されているのか、
克明に理解できて、
最初は半信半疑であった気持ちが
今では、「COXで修理をやってもらって良かった。」と本気で思っているのだ。

 

途中で修理の様子を見に行ってくれた石川朗選手も、
「あれはすごいですよ。
あそこまでやっているとは思わなかったですね。丁寧な仕事で、
これはCOXで修理したのは正解だったと思いますよ。」と言っていた。

 

彼の言葉からしても
実際に丁寧でいい仕事をしていてくれたことは間違いない。

 

では、「キチンといい仕事をしているのだから、それでいいだろう。」と、
あんなに細かい報告をしてくる必要があったのであろうか。
たとえば、会社でこんなことがある。
「ちゃんと仕事をしているのだから、
いちいち“報告”なんか、何故しなきゃいけないんだ。
やるべき事を、ちゃんとやっていればいいんだろ。
いちいち報告をさせるなんて、上司は自分を信用していないのか。」

 

腕に自信のある気難しい職人気質の人が言いそうな言葉であるが、
これは間違っている。

 

「報告」は信用できないから求めるのではない。
「報告」を求めるということは、信用するとか、しないとか
そんな低レベルの話ではないのだ。

 

「報告」によって、その人の、その仕事をより知ることになり、
理解することによって正しく評価し、
その仕事に正しく協力が出来る事、それが報告の目的なのである。
乱暴な言い方をすれば、
「報告すらしない者を信用せよという方が信用できない。」とも言える。

 

「報告」「連絡」「相談」によって、
つまり情報を相手に与え、また相手から情報を受け取ることによって、
自分を理解してもらい、相手を理解することによって、
より深く、お互いがお互いを信じ合うことが出来るようになるものだ。

 

情報は与えれば与えるほど理解を得られる。
報告はすればするだけ、理解され、協力を得られ、いい仕事が出来る。

 

たとえば、
病院の医者で、
「ごちゃごちゃ聞きたがらずとも、黙って医者の言うとおりにしてればいいのだ。」と、
患者の病気について何の説明もせずに、
ただ「出された薬を飲んで、言われたようにしていろ。」
と言うような医者に、患者は安心して治療を受けることが出来るだろうか。
不安になるに決まっている。
たとえ、医者にとってつまらない風邪引きの患者にでも
詳しく病気のことを説明してくれる医者が患者から頼りにされ、信用される。

 

情報は相手に与えれば与えるほど信用されるもの。
これは、仕事の上での同僚の関係でも、上下の関係でも言えることであり、
顧客との関係でも、会社と社会の関係でも言える大切な原則だ。

 

COXの修理は、
8,600円/時間・人と決して安くはない。
我が「?25KeePreゴルフ」の修理代は、
十勝を共にしたキーパーインテグラを売った代金とさほど変わらなかった。
そう、インテグラを売ってしまったのだ。(涙)

 

それでも、明日は気持ちよくKeePreゴルフを取りに行けそうである。

 

思わずギャーっと声が出てしまった修理代の見積もりと同時に、
以下の吉永さんからのコメントがなかなか泣かせるのである。
「お世話様でございます。
当初のお見積もりの9月26日時点では、車輌火災の事は不明でした。
誠に、申し訳ございませんが、追加部品及び追加作業が増えましたので
金額も変化してしまいました。
今回の作業内容で、納期もありまして、火災の追加作業を含みまして、
作業時間は2名で正味、各96時間を要しておりますが、
当初見積もりの基本ベ―スの作業時間(5h+15h=20h +追加の31h)合計51hで
明記をさせて頂いております。
消化剤の被害は当初思っていたより、隅々の部品に広がっており、
車輌の今後の腐食防止の為、徹底的に作業を致しました。

 

今回、谷 様からお車の修理依頼された事で、VWディ-ラ-以上をモット-に、
お車に愛情を持って作業をさせて頂きました。
大変でしたが、あらためまして、良い仕事をさせて頂きました事を、谷 様に感謝を致します。
値段が変わってしまいまして、心が痛みますが、
何卒、ご了承をお願い申し上げます。
以上、宜しくお願い申し上げます。 吉永」

 

私は甘いのかもしれないが、
インテグラを売った金で、喜んで、ギャーッという修理代金を払おうと思っている。

 

残念ながら吉永さんは明日から岡山のレースに行ってしまうそうなので会えないが、
今度の筑波のレースで会えるのが楽しみだ。
会ったら心を込めてお礼を言おうと思っている。

 

COXの吉永さんからの100枚を越す膨大な写真たち。

 

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    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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