谷 好通コラム

2006年12月13日(水曜日)

1531.どこへ行く中国は

只今、一泊一日の上海出張からの帰りの飛行機の中。
たった一日であったが、たくさんのことがあった。

 

アイ・タック技研は中国で何種類かの商品を造ってもらっている。
すべて製造工場と直接契約だ。

 

中国で製品を製造するメリットは何はともあれ“安い”ことである。
だから、中間にいくつもの業者を入れてしまったのでは意味がその無くなるから、
工場との直接の契約となる。
多くの人は、
中国で直接取引を始めるのは大変だろうと想像されるかもしれないが
そうでもない。。

 

中国には仕事が欲しい業者や工場が山のようにあるし、
それらの人と直接話をするのは、
中国語をビジネスレベルで話せる通訳さんがいればそれでOKである。

 

また、プロの斡旋者などを頼む必要は全くない。
うっかり、斡旋業者などを使うと、
その後の取引きまでに必ずリベートを挟んでくる。

 

信頼できる現地の人、
あるいは、日本からの銀行さんの連絡事務所駐在員の人などに
「こんな物を中国で造りたいと思っているんだけど、
どこか、いい工場はありませんかね。」と、聞けば、
たちまち数箇所の工場の情報を集めてくれる。
ここまでは簡単だ。

 

この中から「真面目」な工場を探すわけだ。
大きな工場がいいとは限らない。
立派な設備を持っていても、
ただ持っているだけで、すごくいい加減な工場もあって、
情けない経験もしている。
設備が旧態化していても中国は人件費が極端に安いので、
新しい設備を持った工場ならば機械がオートメーションでやってしまうことを
人間の数でこなしてしまう小さい工場でも“あり”なのである。

 

工場の設備だけで工場を決めることは出来ない。
やはり、その工場の社長や責任者が
「真面目」であるかどうかが一番であると思っている。

 

そこを見極めるのが一番肝心である。
しかし、「真面目な」中国人も必ずいるので、
そんなに難しいものでない。
こちらが誠意を持ってあたり、
その誠意に対してキチンと応える気があるのかどうか、
妥協をしない形で見極めれば良い。

 

「口先」は誰でもいいことを言うが、
口先だけの自己宣伝とかは、
きっぱりと自分の判断から排除しなければならない。
判断の材料は、たとえばサンプルの提出などで、
約束をした期限をキチンと守るかどうか、
期限を過ぎそうになったら前もって遅れることを言ってくるかどうか、
要求した仕様を実現しようとしているかどうか、
当たり前の事を当たり前のように出来るかどうかであらかたの判断をする。

 

そういうことさえ出来れば、
いざ生産にかかっても、まず大丈夫なようだ。
後はとにかく、
出荷“前”のこちらからの検品に徹するのみ。
いくら良品が続いても、
検品の手は決して緩めてはならない。
常に良品を作る事に対する緊張感を与え続けなければならない。
これは絶対条件だ。
私たちもいくら面倒でも、出荷前検品だけは厳密にする。
それが品質を維持する最も効果的で絶対に必要なことだ。

 

と言っても、出荷のたびに
いちいち日本から中国まで行って検品するわけには行かない。
だから、中国のいずれかに拠点を持ち、随時の検品体制を持つ必要がある。
また、そのコストを吸収できるだけの販売量=生産量を確保する力も要る。

 

中国で製品を作らせて輸入するのは難しくはないが、
大変ではあるのだ。

 

 

上海は今、バブル真っ最中なので、
ちょっとうまく世渡りをして、
それなりの金持ちになってしまった人がゴロゴロしている。

 

中国人は金持ちになると、
まず、高級車を買う。
そして、高級腕時計とか服装とか家、
特に客間とか工場の見た目を立派にしたがる。
立派な格好をし、金持ちであることを外に出して、
人によっては“えばり散らす”。
儲かったお金は、個人のためにまず使い、
個人の投機的な投資に回す。
中国バブルの源だ。

 

儲かったお金を、事業のために
工場の設備を更新して工場としての能力を上げたりするのは、
その必要に迫られなければ、なかなかやらない。
ましてや働いている人たちの労働環境の改善などは、
最後の最後にしかやらない。
あるいは、結局やらないかのどちらかである。

 

快洗Taoるの陶さん、上海事務所の頼さんなどのように、
金持ちぶらないし、新しい設備を造ったり技術を学ぶ事に熱心な人は、
むしろ特別なのである。

 

中国の製造業が世界を席巻しているのは、“安さ”である。
それがほとんどと言ってもいい。

 

その“安さ”は、
極端な人件費の安さ、
つまり労働者の“給料の安さ”に、ほぼすべてを依存している。

 

生産現場の労働者の給料は日本の十分の一以下であり、
その安さが製品の製造コストの安さのすべてを支えている。
その安さが、
中国製品の世界のマーケットの中での競争力。
そう言っても決して言い過ぎではないよう思える。

 

しかし、その競争力から得られる巨大な利益は、
経営者とか、色々な意味を含めて役人とかに集中して分配されていて、
それが、彼らの高級車とか贅沢に消費されていて
生産設備、機械などの近代化、技術の開発などにはほとんど投資されていないように見える。

 

13億人という世界の人口の四分の一もの圧倒的な人間のほとんどが給料の安い労働者であり、
それが支えている競争力とは、
考えてみればもっとも脆弱な競争力であると思える。

 

給料の安い国は他にもいくらでもあるし、
これからたくさんの国が人件費の安さを武器に、
もっともっと国際マーケットに出てくるだろう。

 

米国との貿易の不均等から“元”が徐々に高くなって、
相対的な競争力が低下してくる中で、
簡単なものしか作れず、人数が必要な古い生産設備しかない多くの工場。
そして何よりも、
「人々の中に安定していい製品を作る文化、本物を造る文化に乏しい。」のは、
いちいち出荷前に“検品”をしなければならないという“余計なコスト”につながり、
下手をすると、これは致命傷になる。

 

圧倒的に安いから売れているだけであって、
他に付加価値もないどころか、
製品品質が安定せず、いちいち現地で検品をしなければならないという余分なコストがあり、
何よりも信頼関係の欠如というハンディを背負ったまま、
人件費が徐々に上がっていてコストが上がり、
元の切り上げで、相対的な競争力が下がっていく現状の中で、
これから中国はいったいどこへ行くのであろう。

 

高級車が目だって増えてきた上海の街を見て、
レストランで金持ちがえばり散らす光景を見て、
少し暗澹となる。

 

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    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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