谷 好通コラム

2007年06月28日(木曜日)

1664.真っ黒なドラム缶

今日は福岡に行ってきた。

 

福岡は雨がちっとも降らず、
特に北九州あたりでは渇水がひどく、“洗車”が禁止されてしまったのだそうだ。
四国でもそんな所があるらしい。

 

そこでふと思った。
「洗車」は、“必要なものではない”から、
水が不足すれば真っ先に禁止されるのは仕方がない。
「飲料水」は生きるのに“必要”であるし、
「風呂」や「洗濯」は生活に“必要”である。
「洗車」は、我慢すればいい。

 

車にとって「燃料」は“必要”であって、
これの販売を禁止にでもすればパニックになるが、
「洗車」は、しばらくならば汚い車に乗って我慢が出来る。

 

「洗車」とは“必要”な要素ではなく、ある意味で“贅沢”な欲求を満たす要素なのだ。
そう言うと、洗車を商売にしているものとして
自己否定をしているように聞こえるかもしれないが、
そうではない。

 

我々の扱っている“洗車”が、
必要欠かさざるべきものではなく、少し“贅沢”な要求によるものであるとすれば、
ひどい渇水の時ぐらい、禁止されるのは仕方がないとしよう。
しかし、
洗車がちょっと贅沢な“欲求商品”であるならば、
贅沢とか、欲求とかには「もっともっと」という上に限りがなく
その意味では、天井知らずの大きな可能性を見出す事が出来るのではないだろうか。

 

たとえばカバン。
カバンは物を入れて持ち運ぶ道具であるが、
同時にオシャレの一つでもある。
だから、道具としては一つ1,000円とか2,000円のカバンで十分なのに、
何十万円ものバカみたいに高いブランドカバンが飛ぶように売れるのは、
“オシャレ”が自分の欲求を満たすものであるからだろう。

 

たとえば自動車。
自動車は人や物を乗せて場所を移動する道具であるが、
同時に、趣味のものであり、オシャレであり、ステータスである。
いずれも、自分の欲求を満たすものであり、
だから、公道が時速100kmしか出せないのに、
300馬力と400馬力もあって、
時速250kmとか300kmも出るようなフェラーリとかポルシェなんて車が、
一千万万円、二千万円以上もの値段で売れている。

 

たとえば、食べ物。
生きていくためにカロリーとその他の栄養分を取るだけならば
多分一日300円とか500円もあれば、何とか食っていけるだろう。
しかし食べる事とは生きるためだけではなく、
“美味しく食べたい”という欲求を満たすことでもあるので、
美味いと評判のラーメン屋に行列が出来たり、
トロとか、霜降り肉とか、フォアグラとか、バカ高いワインとか、
生きる為とは全く縁のない贅沢なものが食べられていたりする。

 

たとえば、着るもの、ファッション。
自らの身を寒さから守るためだけならば、
文化大革命の頃に中国で皆が着ていた人民服みたいなものを着ていれば、
十分にその役目は果たせるはずだ。
なのに、みんな流行を追って次から次へとファッションを追い求め、
何十着もの服を買い、
自らの「かわいく見せたい」「カッコよく見せたい。」「金持ちに見られたい。」
そんな生存とは関係のない欲求を満たせようとする。

 

たとえば、洗車だって
自分の愛した車をキレイにしていたいという欲求に、
洗うだけではなく、水垢を取ったり、ピカピカに磨いたり、ビカビカにしたり、
自分の車に対する愛情の欲求を満たそうとする人もいる。
それがある時には、何万もするようなコーティングであっても、欲しいと思ったら買う。
洗車は、欲求商品なのだ。
渇水になれば、真っ先に禁止されてしまうかもしれないが、
キレイにしていたいという欲求を満たすために、
洗うだけではなく、磨いたり、コーティングをしたり、掃除をしたりと
もっとキレイをお客様が私達に求めてくれる。

 

 

 

ところで、
新しいレーシングスーツを買うために体の寸法を測った。
太って、今のレーシングスーツが着られなくなったら買うのではない。
レースの安全規定が変わり、
今までの防炎のものではレースに出られなくなるので仕方なく買うのだ。

 

会社の会議室で総務の女性にワクワクで計ってもらった。

 

まず、
「バスト、116cm!」
胸囲は男のバロメーターみたいなもの、116cmってすごいじゃない。

 

「ウェスト、116cm!」
あんまり大きな声で言って欲しくない。
最近ますます腹が出てきてかと思ったら、116cmはショックである。

 

次にヒップ。
「ケツまで116cmだったら、すごいね。」と言うと、
総務の女性は
「いやー、お尻はもうちょっと細いですよ。」
と言いながら、計り、
「ヒップ、116cm!」と、
大笑いしながら呼び上げる。

 

「あちゃ、俺ってドラム缶か? 上から下まで116cm?」

 

偶然、近くにいた池本常務が、腹を抱えて笑い転げている。
一番まずい人に聞かれてしまった・・・
総務の女性だけだったら、
拝みこんで黙っていてもらうのに、
池本さんに聞かれてしまったのは、声はでかいし、
社内放送でアナウンスしてしまったようなものだ。

 

 

それからしばらく、
社員の人が、私を見るとクスクスと笑う。
あ~~、世の中真っ暗である。
これから、みんなは私を見るたびに「あっ、ドラム缶が歩いている。」と思うのだろう。

 

私は、本気でダイエットをしたいと思い始めた。

 

「腹減ったなんか食べたい。」「腹いっぱい食べたい。」「もっと食べたい」と、
食いたいだけ食べてしまった結果がこれだ。

 

私は食欲にいたって弱い。
食べたい!という欲求のおもむくままに食べてドラム缶になった私は、
さしづめ、欲求商品である“洗車”の権化のような男なのである。

 

 

3日間の沖縄で、
顔だけ真っ黒になった
(痛い日焼けがいやで泳ぐ時もシャツを着ていた)
ドラム缶のような谷好通と、
同じ人類とは思えぬほど白くてちっちゃい孫・京祐

 

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    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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