谷 好通コラム

2008年04月09日(水曜日)

1886.お客様に変心する瞬間芸

三日ほど前から夜眠れなくなっていた。
一晩で二三時間しか眠ることができず参っていた。
布団に入っても色々なことが頭の中を巡って目が冴え、眠れない。
それでも深夜2時過ぎるとウツラウツラしてくるが、
部屋のどこかで「ゴトッ」という音がしたような気がして、パッと目が醒める。
そんな繰り返しで午前3~4時ぐらいまで起きていて、
やっと寝ても、朝6時くらいには目が覚め起きてしまうのだ。
ブログも結局書けなかった。
「参ったな~。俺って、“うつ”の素質でもあるのかな。」なんて思っていたところ、
昨夜は一転してぐっすりと寝ることができた。
何かがふっ切れたようだ。

 

実は、昨日は夕方から熊本へ飛行機で飛ぶはずだったのだが、
飛行機に搭乗する直前、
熊本のアイビー石油馬場社長に「今から行きますから。」と電話をしたら、
「えっ、今からって今日ですか? 明日じゃありませんでしたっけ。」とおっしゃる。
約束を一日、私が勘違いしていたのだ。
あわてて馬場社長にお詫びした上で、
搭乗カウンターのスタッフに「キャンセル」を申し出たが、
幸運にも、その便の出発時刻が大幅に遅れていたため、
キャンセル料ゼロで済んでしまった。(ラッキー)

 

しかし、約束を丸一日間違えるとは、
自分が情けなくて、ちょっと落ち込んでしまったので、
会社に戻ってから、みんなで酒を飲みに出た。
ヤケ酒のようなものだ。
私は、酒を飲めば、十中八九、明るく楽しくなる単純な酒好き男である。

 

約束は一日違えだが、
馬場さんと話をするのは、結果的にちょっと後の時期にした方が良かったようだし、
私にしても、その日、ホテルで泊まらなくて済んだわけで、
それに、明日(つまり今日)の予定も昼間は空いてしまい、
夕方に予定している福岡の用件にために新幹線で行くついでに、
改装が終わった「北神戸店」に行けることになったのだ。
かえって1日分儲けたような気がして、
それはそれで嬉しくなり、睡眠不足が積もっていたこともあり、それに酒も手伝い、
昨晩はよく眠れたのであろう。
心のどこかで何かがふっ切れたような気がした。

 

今、たくさんのことを考えている。

 

ビジネス、とりわけ小売というビジネスにおいて、
一般消費者は「主人公」である。
商品をどうするのか、
どのように販売するのか、
どんな店舗を造るのか、どんな風に運営するのか、
そのすべてについて、
ただ「消費者たるお客様がどう思い、感じるか」の一点に集中して考え、
その上に、
店舗経営として利益を出せるようにすべてを組み立てていくことが
いわゆる「商売」であり、「ビジネス」そのものであるということ。

 

「お客様がどう思い、感じるか」の一点に集中して考えることが
小売・サービス業の「成功するビジネス」の鉄則だ。

 

それを忘れて、
売る側の論理で商品を企画し造っても、
立派な店舗を造って、バッチリ接客を訓練して、
「これなら、絶対に売れるはずだ」と思っても、
それが、売る側の論理で造られた商品であり、店舗であり、接客であるならば、
お客様は、一時的には「来て」「買う」かもしれないが、
継続しては「買わない」「来ない」という選択で、
売る側の目論見とは違った結論を出してくるはずだ。

 

私はお客様を「神様」だとは思わない。
私たちと同じ人間である。
人間だからこそ「自分で感じ」「自分で選び」「自分の意思で決定する」
だから、あらゆるビジネスの成功に対しての選択権、決定権は、
100%お客様にあることは事実なのだ。
そういう意味でお客様は「神様」ではなく「主人公」であるということ。

 

私たちが売る側の論理で、何をどう考え、どう作っても、
一般消費者であるお客様が「どう思い、感じるか」だけで、
「買うか、買わないか」「来るか、来ないか」を決め、
そのビジネスが成り立つのかどうか決まってしまうのは厳然たる事実なのである。

 

特に私たちのように、
あらかじめ製造された商品が用意されていないビジネスでは、
つまり、洗車、コーティングという商品を店舗内で生産し販売するビジネスだからこそ
「一般消費者であるお客様がどう思い、感じるか」だけの一点に集中し、
その結論を基にして、
ビジネスとして成立させる組み立てをしなければならないのだ。

 

よく「お客様の立場に立って考えなければならない。」と言うが、
「お客さんならどうするかな~」と、ボーっと考えるレベルではなく、
もっともっと厳密に「お客様がどう思い、感じるか」の一点に精神を集中して、
とにかくそのことだけを考え、
私達がお客様になりきって考えるくらいでなければ、
何も解らないのだ。
そこに売る側の論理を差し挟んではいけない。
売る側の期待をも差し挟んでもいけない。

 

ただ、ただ、「お客様がどう思い、感じるか」だけの一点に全神経を集中して、
すべてのことを感じ、考えなければ、“何も分からない”のだ。
そして、そこから出てきたものに、
売る側の論理を考え合わせ、
それがビジネスとして可能かどうか、
あるいは、どのようにすればビジネスとして成立するかを組み立てていくべきなのだ。
これは原理原則であって、単なるテクニックなどではない。
「お客様がどう思い、感じるか」だけを、集中して、正確に感じ取って、
そこから、ビジネスのすべての組み立てが始まるのだ。

 

私は一つの特技を持っている。
一瞬だけだが、自分の心を、お客様の心に変えることが出来る。
変身ではなく、変心の術というか、
本来「変心」とは「心変わり」という意味だが、
「変身」に引っ掛けて、お客様の心に瞬間的に変わるという意味で「変心」。
もちろんオカルトなどではない。
たとえば、
店舗でスタッフがお客様と話をしている時、一瞬、自分が「ムカッ」と来る時がある。
そんな時、お客様が平静な表情をしていても、
ムカッとした感情を感じる時があるのだ。
なぜムカッとしたか、後でゆっくりと考えなければ分からないのだが、
お客様がムカッとした時、自分も同じようにムカッと来る時があるということ。

 

あるいは、
お客様が洗車メニューブックを見ながら、
お連れの人と何かをボソボソ話していると、
話の内容はほとんど聞こえないのに、その表情とか雰囲気から察するのか、
この人が本当は何が欲しかったのかが、一瞬、解る時があるのだ。
その人のイメージしている商品が店にはないものであって、
しかも私も知らないものであっても、
「こんなものが欲しかったのか」とイメージとして感じることがある。

 

あるいは、
お客様がイライラしているのが、何も言わなくても解る時がある。
しかもそれが店に原因がある時などは、
私自身も、一緒にイライラして、イライラの元が解るのだ。

 

あるいは、
実際にお客様がいなくても、
その車を見て、そこにお客様の不満を感じる時がある。

 

しかし、こういうことは一瞬であって、
しかも不意に来るので、決して自分でコントロールは出来ないし、
お客様がどう感じるのかを何かについて一生懸命考え込んだりする時には、
かえって分からなくなって、悩んでしまうこともしょっちゅうである。
お客様の心情になりきって、
お客様が、私たちの商品とかサービスをどう感じるのかが、
いつも、自分のコントロールの元に感じることが出来るようになれれば、
間違いなく、ビジネスのすべてがうまく行くはずなのだが、
決してそうはいかないのが現実だ。
「お客様への変心術」は頼りない凡人である私の「瞬間芸」なのである。

 

しかし、不意に一瞬の感覚でお客様の感じたことが解った時は、
それに従って商品を作ったり、店を改善したりすると
ほとんどの場合が、非常にうまく行くところを見ると、
この感覚が、成功のための重要な要素なのだろう。

 

いつも忘れてはいけないのは、
私達売る側の論理は、
お客様の持っている感性とはまったく関係のないところにあり、
すべての決定権を持っているお客様がビジネスの主人公であって、
その主人公を忘れて、何の成功もあり得ないという事実である。

 

 

 

北神戸店の山本店長(なおろー)と浮田君。
お客様の心を感じることができるかな?

 

 

改装なった快洗隊・北神戸店

 

 

お昼ごはんを大阪営業所の山戸所長と食べに行った。
店のすぐ近くの「回転寿司」である。

 

 

その店の名前が「すしろー」
「なおろー」の快洗隊の近くに出来た「すしろー」
もちろん、何の関係もない。

 

 

北神戸店に新神戸駅から有馬温泉経由の電車で行く。
山岳電車のようだ。

 

 

時間はさかのぼって、昨日の夜。
私のヤケ酒に付き合ってくれた池本・畠中両常務。
肺炎で苦しんだ畠中君は、
池本さんに肺炎を移して直ったらしく
池本さんは「タバコを吸うと横隔膜が痛い」と嘆いていた。
肺炎って感染するんだっけ?
それに、横隔膜が痛いと言いながらニコチン20mg以上のショートピースを吸うか?

 

 

いまだ、たまに見ることがあるSSさんでの「洗車だけでも大歓迎」は、
売る側からの感覚では間違いなく正解なのだが、
買う側から見ると「だけ」と「でも」に、
いかにも違和感を覚えるのは、売る側の論理と、買う側の感覚のミゾなのであろう。
それが埋めがたいミゾでなければいいのだが。

 

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    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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