谷 好通コラム

2008年04月14日(月曜日)

番外編. 六年前に書いた話

たぶん六年前に書いた話であると思うが、
リピートするお客様を作る事の大切さを書いた話があったので、
あえて載せることにした、

 

 

1.東京ディズニーランドに見る驚異的なリピートの秘密

 

 

東京ディズニーランド(略してTDL)がオープンして約20年、
来場者は約3億人だそうだ。
日本国中の人が一人残らず行ったとしても、
一人3回ずつ行ったことになり、そういう私も3回も行った。
これは驚異的なことである。

 

このTDLは、リピート客が非常に多く、
その人たちは何回も、何回もTDLに行って、それでも飽きないという。
出来るものならば毎日でも来たい、とすら言うのにはびっくりしてしまう。

 

TDLの大成功以降、
日本国中にアミューズメントパーク、テーマパークが出来たが、
どの施設もTDLのような成功には至っていない。
それどころか倒産に追い込まれているところすら続出している。
何年か前の「宮崎シーガイヤ」の倒産劇は衝撃的であったし、
つい最近では、比較的来場者が多かったはずの「ハウステンボス」とか
「レノマパーク」までが倒産し、
このような施設は、ことごとく苦しい経営内容であるという
一体いくつの生き残れる施設があるのだろうか。

 

その逆にTDLは、今では東京ディズニーシーまでを作り上げて
ますます来場者を増やしているという。

 

この差は一体どこにあるのだろうか、
現象的にははっきりしている。「リピート客の数と、その回数」
これに尽きる。

 

一度来場したゲスト(TDL風に言えば)が
「また来たい」と思うかどうか、そして実際にまた来て
「もっと来たい」と思うかどうか、そして何度でも本当に来るかどうか。

 

それに成功しているのが、東京ディズニーランドであって
消え去っていく他の施設は、その部分で負けている。
簡単に言えば、そう言い切ってしまっても過言ではないと思う。

 

商売、とりわけ小売業にとって
リピート客を実現できるかどうかが、成功の生命線であろう

 

繁盛店はリピート客が多い
これは小売業にとって疑いようのない真実である
その意味で、TDLの成功には学ぶ点が多い

 

ちっぽけなラーメン屋さんとかの食べ物屋さんをはじめ
規模がとても小さなあらゆる小売業でも同じことが言える

 

リピート客が出来る要素とは一体何だろうか
「立地」
これも大切な要素だ。
TDLは、その立地が圧倒的な人口を持つ東京だからこそ成功したとも言える
いくら心底楽しい施設であっても
そこに行くまで大変な時間と費用がかかるのでは
数多くのリピート客を作り出すことには大きな障害になる

 

しかし、とはいうものの
TDLの来場客が東京近辺の人に大きく偏っているかといえば、そうでもない
SENSYA.COMの掲示板のたびたび登場してくれている
「ピット☆リン」「よし☆リン」さんご夫妻は山口県宇部の方で
2人とも熱狂的なTDLファンを自称し
TDLに遊びに行くことを、最も楽しみなことの一つにしているそうだ
そんな人が日本国中に膨大な数いるという
TDLを支えている大きな勢力になっている。

 

それを考えると、TDLの成功は「立地」にも恵まれてはいるが
決してそれだけではないことは明白だ

 

なぜ、人はTDLに行くのか
そこに「楽しい世界」があるから
これに尽きるであろう
楽しい世界とは、「商品」であるアミューズメント「夢の世界」と
キャストが作り出す「もてなしの世界」

 

では「夢の世界」とは何か
一つ一つのアミューズメント施設が作り出すのが「夢の世界」
TDLではそれが
どれも、実によく出来ている
どれひとつとっても、決して手抜きがしてない
アミューズメントとして、品質が圧倒的に高い!
実に細かいところまでよく考えられていて、客の心理をしっかりつかんでいる

 

アミューズメントを構成している材料も
質感のあるものが厳選されており、決して安っぽくない
ましてや、壊れているところが放置されているなどいい加減なことがない
これは大切なことだ
アミューズメント施設は
仮想の世界であり、人々はその仮想の世界の中で夢を見る
だから、いかにも偽物っぽい安手の材料で作られていたり
壊れていて、ボロが出ているところがあれば
文字通り、夢が壊れてしまうことになる
ぶち壊しになってしまうのだ

 

赤字のテーマパークなどで
経費節減のためか、メンテナンスが十分でなく
施設が壊れたままになっていて
せっかくの夢の世界を台無しにしている場合がある
あるいは、材料をケチって安っぽくチャチな物にしてしまっている場合がある
少しの経費節減のために、客の夢を壊してしまったのでは
一番肝心な
夢を見に来たゲストの目的が、ぶち壊しになるわけだから
リピートなどある訳がない

 

それから何と言っても
「もてなしの世界」=「極上の接客」
客をゲストという表現をするなら
ゲストを迎えるのは「キャスト」
このキャストがまた実にかっこいい
TDLファンには、この“キャストになるのが夢”だという人が多いそうだ

 

驚くべきことは
彼らも“夢の世界の一部分”になっていることのだ
「キャラクターのぬいぐるみに入る花形キャスト」から
「売店の販売員」「ウェイター・ウェイトレス」
「タバコの吸殻、ゴミを集めるキャスト」「トイレの清掃キャスト」
そのすべて
一人一人のキャスト、そのすべての人が
TDLという“夢の世界”の一部分であり
すべてのキャストが
一人残らず、エンターテイナーであるということ
夢の世界を支える「極上のもてなし」

 

これは全くすごいことだ
とても簡単に真似出来る事ではない
そのスキルは、他を圧倒している

 

ガソリンスタンドの世界でもそんな例を見たことがある
有名な熊本・アイビー石油さんの店でのスタッフ
彼らの動き、会話が本当にかっこいいのだ
お客様が、彼らの接客を
楽しんでいることが端から見ていてもよく分かる
高い値段にもかかわらず(周囲より20円高)この店に来店するお客様は
実は、彼らに会いに来ているのかもしれない

 

それを支える教育とは、単純なシステムではない
「な~んだ」と言われるかもしれないが
「心」だと思う
ひとつの目的に対して、全員の心をひとつにすることが
もっとも大切なことで
そのためには、経営者の高い志、理想が核となって
その理想に対する実現意欲がどれぐらい強いかどうか
それに尽きると言っても過言ではない
教育は技術ではなく
そこに理想があるかどうか
また、その理想に対して、その会社、店舗にどれぐらいの意欲があるか
それが、スタッフの意欲に直結するものであるし
本物の教育であり、本物の接客の唯一の原動力でもある

 

「立地」「夢の世界=最上級の商品」「もてなし=極上の接客」

 

そして、リピートをつかみ続けるには、その「質の維持」

 

素晴らしい極上の商品、接客が
いつ行っても変わらずそこにあるということは、絶対必要なことだ
行く度にその質が変わっていては
悪い時に当ったところでリピートは終わってしまう

 

いつも最高でなければならないのだ
質の維持は大変難しい
しかし、それが欠けたときに、今までやってきたことが霧散してしまうとき

 

お客様をつかむことは大変である
そして、つかみ続ける事はもっと大変である
しかし、それを“失うのは実に簡単だ”
一回手抜きをすれば、それでおしまい
たった一回だけ手抜きをすれば、そこでリピートは終わる
そこが難しいところである

 

最後に
リピート客が何度も何度でも来てくれる要素
「新鮮であること」

 

前記のリピートを呼ぶ要素が、いくら素晴らしくても
何度行っても全く同じては、リピートに限度が出てくる

 

商品、接客の質の維持は絶対に必要ではあるが
何度行っても、全く同じ事しかない、というのでは
さすがに飽きてくる
新鮮であることも必要だ
TDLでは、その時その時でいろいろなイベントを催している
「今度はクリスマスの時に来たい」とか
「今度はサマーフェスティバルをやっているときに来たい」とか
いろいろなイベントによって新鮮さを出している

 

また、いくつかある劇場では出し物を常に新しくしているという

 

その上、ディズニーシーまで作ってしまい
ディズニーランドを経験した人に、その新しい素晴らしさを期待させる
今のTDLにスキはなさそうだ
TDLの一人勝ちはまだまだ続きそうである

 

「立地」「夢の世界=最上級の商品」「もてなし=極上の接客」
「質の維持」「新鮮さ」

 

 

あらゆる商売、とりわけ小売店舗にとって
一度来店し利用してくれたお客様に、いかに「また来たい」と思っていただけるか
つまり、リピート客になってもらえるかが
繁盛店と、暇な店との決定的な分かれ目である

 

膨大な販売促進費をかけて、集客しても
集まってきたお客様にとって
※商品に魅力がないか
※接客が悪く、気分が悪いか
※あまりにも不便なところであると
結局「また来たい」とは思わず、それっきりになる
繰り返し同じように販売促進をかけても、その人は2度と来ない。1-1=0

 

1-1=0が、いくらたくさん来ても、何も積み重なっていかず
集客でその日12人の来店があっても
翌週あるいは翌月には
0+0+0+0+0+0+0+0+0+0+0+0=0
誰も来ない
だからまた集客をかけても
その販促効果だけの12人が来るだけ
販促をかけて集客をすればするほど、1-1=0の人が増えるだけで
その地域における販促効果も、みるみる減っていく
無駄な販促費がそのまま赤字に上乗せされるだけ

 

逆に
※商品にすごく魅力があり
※いい接客で、気分が良くって
※それがあまりにも不便でもないところにあれば
お客様は「また来たい」と思い、きっと“また来る”
つまりリピートする
1=1
そんな人がだんだん増えていけば
1+1+1+1+1+1+1+1+1+1+1+1=12
翌週あるいは翌月その12人がまた来て
そして、それに新たに12人が集客されれば
12人+12人=24人
その翌週あるいは翌月には
24人+12人=36人がやってくる

 

しかも、「また来たい」というその魅力を他人に喋ってくれるぐらい
その人に「また来たい」と思ってもらえれば
12人×2=24人となり
翌月あるいは翌週には
24人+12人=36人であり
そのまた翌月あるいは翌週には
36人×2+12人=84人となる

 

「もう来ない」と思わせてしまう店は、永久に繁盛することはないが
「また来たい」と思わせた店
それどころか「また行きたい」と他の人にも喋ってもらえれば
その店は、あっという間に大繁盛店になってしまう

 

その差は、決定的なものである
物が売れるかどうか、来店が多いかどうか
それは実に、いかにリピート客を作り出せるかどうか
その一点にかかってくる

 

一度来てくれたお客様をリピートさせるには
「上質の商品」「もてなし=上質の接客」「立地」
そして、リピートをつかみ続けるには
その「質の維持」「新鮮さ」
TDLの例では、そのどの要素をとっても
前話のごとく
繁盛するべくして繁盛していると言える

 

TDLのリピート率はなんと97%
何という凄まじいまでの数字

 

ここまで読んでいただいて
「安い」という要素には、全く触れていないことにお気づきであろうか
意外かもしれないが
リピート客を得るためには「安い」という要素は、実は大きいものでないのだ

 

TDLの入場券は決して安くない
アトラクションの利用も決して安くない
園内での食事も、キャラクター商品などの土産も決して安くない
絶対金額としては決して安くない

 

しかし
価格というものは「相対的」なもので、絶対的なものではないということ
つまり
買うものの価値に対して、その価格が「高いか・安いか」
どう感じるのか、それで決まるのだ
だから、TDLは高いといえば高いし
その楽しさを覚えてしまった人にとっては、十分に払う価値ある値段
ということになる

 

値段は、「?商品の持つ価値」と、「?接客=気分がいいかどうか」で決まるので
「他より安い」必要はない
「価値に対して不当に高い価格」では当然通用しないが
価値に見合った価格であれば十分に通用するものだ

 

ただし、同業者と全く同じ商品を扱う商売である場合、話は違う
全く同じものならば「安い」方がいいに決まっている
たとえばガソリン、軽油、灯油などもそうであろう
「?商品の持つ価値」においては、通常全く同じなのだから「安い」方がいい
しかし、しかし
価格は「?接客=気分がいいかどうか」という要素も大きい
だから、前話に出てきた“熊本・アイビー石油さん”
圧倒的に質の高い接客を持って、周辺価格よりはるかに高い単価でも
お客様たちから圧倒的な信頼を得て
堂々たる実績を築き上げている例もある

 

「上質の商品」「もてなし=上質の接客」「立地」
そして、リピートをつかみ続けるには
その「質の維持」「新鮮さ」

 

それがどの商売にも言えるのではないか
そして、確実にリピート客を獲得している店が
デフレであろうと、何であろうと
勝ち残っていく
そんな風に思うのです。

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    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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