谷 好通コラム

2008年05月17日(土曜日)

1917.天は二物を与えるのか

昨日は不覚にも酔っ払ったあげくに予定を変更し、
福岡に泊まってしまった。

 

今、アイビー石油の馬場社長と
共同で一つのプロジェクトを立ち上げている。
その打ち合わせの帰り、飛行機の時間まで1時間半くらいあったので、
ちょっとだけ食事をと「もつ鍋屋」に行った。
生ビールを一杯と博多名物もつ鍋をちょっとだけのつもりであったのだが、
最高に美味いもつ鍋を食べ終わるころ
「このあとの雑炊が美味いんですよ。雑炊を食べたさにもつ鍋を食べるようなものです。」
と、馬場さんが言う。
美味しいものにとことん弱い私と、
「えっ、こんなに美味いもつ鍋が、そのあとの雑炊のためにあるようなもの?」
多分同様であろう設計士の京條さん、
「もつ鍋の雑炊って、そんなに美味いの?」
そんな話をされたら、もう“いちころ”である。

 

早速、事務所に電話をして、
飛行機の便の変更を頼んで、ホテルの手配も頼む。
金曜日の夜なので中々ホテルが取れないが、
それでもちょっと無理をして取ってもらって、宿泊体勢を即座に作る。
「もつ鍋の雑炊 食べたい体勢」である。

 

そこまでして食べた雑炊は確かに美味かった。
もう、満腹である。

 

てんこ盛りのキャベツにニラ、ニンニンク。
そして脂肪を取ってないモツ(牛の小腸)
カツオと昆布の出しで食べる。
脂の美味さが絶品だが、ほとんどクドクない。
店の人に聞くと、
「(モツの)洗いがポイントで、ちょっとこだわって洗っているんですよ。」
ということらしい。
(雑炊の写真は、あまりの美味さに撮り損ねてしまった)

 

 

もつ鍋と雑炊で満腹にはなったが、
午後5時から飲み始めているので、まだ午後7時半である。

 

「どこかライブハウスに行って、JAZZ聴きましょう。」
福岡は音楽の盛んな町である。
JAZZのいいライブハウスが絶対あるはずだ。
早速インターネットで探す。
店の女の子にも聞いて、「ビルボードライブ福岡」に行くことにした。
「本田雅人と矢野沙織」の二本のサックス。ピアノ、ベース、ドラムス。
本田雅人は聞いたことがある。ヒュージョン系のサックス。
解説によると、国立音大を主席で卒業したとか
原信夫とシャープ&フラッツでメインのサックスを受け持っていたとか、
フュージョンのトップグループT-SQUAREで華々しい活躍をしていたとか、
いわゆる日本のトップミュージシャンの一人。

 

彼のサックスは華麗である。
聞いていて、軽やかな音の流れが心地よくワクワクしてくる。
「うまい!」
ところが、同じフレーズを吹いていても、
矢野沙織のサックスは一つ一つの音が冴えていて、
同じ軽やかさでも、コロコロコロという感じではなく、
短いトゲがピッピッピッピピと刺さってくるような、
痛さに似た快感を持った音なのだ。
本田のサックスが「うまい!」なら、矢野のサックスはソウルフルであって「しびれる!」
音楽はあくまでも人それぞれの好き好きなのだが、
楽しい本田に対して、危険な矢野って感じか。
私は矢野のサックスにすっかり参ってしまった。
いずれにしても、この時のバンドは、非常にレベルの高い人たちで、
太い弦を長く使いながら唄うベースは新鮮であったし、
歯切れ良く乾いたリズムを叩き上げるドラムもパワフルで良かった。
ピアノもいい。

 

私はジャズが大好きだが、
どんなミュージシャンがいて、
どんな演奏で、どんな評価を得ているのか全く知らない。
ちょうど、私がレースは大好きで、自分が走るのも大好きなのに、
世界のレーサーにしても、日本のレーサーにしても、誰もほとんど知らないのに似ている。

 

だから、超有名であるはずの矢野沙織の名前も知らなかった。
彼女は、間違いなく天才である。
練習だけでは得られない天性を持っている。
それも世界的レベルの才能なのだろう。
あの魂に刺さってくるような音は、天才ならではの音であるような気がする。

 

しかも、美しいのだ。
ただ美しいのではなく、魔性の美しさとでもいうか、
魂が引き込まれそうな美しさを持っている。
天性を感じさせる濃厚かつ冴えた音と、同じイメージを持つ美しさ。
このライブでは、
下の写真とは、全く違う衣装とヘアースタイルで
同じ人とは思えないビジュアルであったが、同じ匂いを感じさせられるイメージである。

 

「天は二物を与えず」という言葉があるが、
彼女の場合は、明らかに「天は二物を与えてしまった。」ようである。

 

 

[矢野沙織のプロフィール](ホームページより)
1986年東京出身、9歳のときブラスバンドでアルト・サックスを始める。チャーリー・パーカーに衝撃を受けジャズに傾倒、14歳でビリー・ホリデイの自叙伝に感銘し、自らジャズクラブに出演交渉を行ってライブ活動をスタート。ジャズの名門SAVOYレーベル日本人アーティスト第2弾として2003年9月、16歳でセンセーショナルなデビューを飾る。
モダン・ジャズの起源である“ビ・バップ”に真摯に取り組み、日本にとどまらずニューヨークでもライブを重ねる一方、テレビ朝日系「報道ステーション」テーマ曲に起用され、世に新世代ジャズの到来を知らしめた。
マイルス・デイビスとの活動で知られるジミー・コブが、3rdアルバム「SAKURA STAMP」発売記念ブルーノート・ツアーで共演した際には、「日本のキャノンボール・アダレイ」と絶賛。
ニューヨーク2日間公演でも本場オーディエンスを圧倒し、初のライブ盤として発売。5thアルバム「Groovin’ High」では、2度のグラミー・ウイナーに輝いたアレンジの神様スライド・ハンプトンや、
ジェームズ・ムーディなど巨匠ディジー・ガレスピーのオールスターズと共演を果たす。以降、ムーディ氏との親交は厚く、カリフォルニアの自宅に招かれての2週間にわたる個人レッスンを受けている。
2007年春、花王“ASIENCE”の新たなアジアンビューティとしてCMに登場。同CMで使用されたオリジナル曲「I&I」収録、20歳にして初のベストアルバムはベストセラーを記録、ジャズの枠を超えて広く注目を集めた。
早くも通算7枚目となるアルバム「Little Tiny」を11月21日にリリース、現代最高のオルガニスト、ドクター・ロニ―・スミス・トリオを率いて、一歩も引けを取らないグルーヴを聴かせている。

 

もつ鍋の雑炊に惹かれて福岡に一泊してしまったが、
とんでもないラッキーが福岡にあったわけである。
人間、どこで思いも寄らぬラッキーにぶつかるか解らないのだ。
普通は80分~90分のライブのステージ。
9時半スタートで、終わったのが11時半近く。
12時直前にホテルに入った時には、強すぎる刺激で頭がしびれてクタクタであった。

 

東京から来たこのスーパーミュージシャンたち。
まったくもって東京は凄まじいところのようだ。レベルの桁が違う。

 

 

馬場社長。さんざん散財をさせたあげくに、
2時間以上もジャズに付き合わせてしまい申し訳ありませんでした。
ご馳走様でした。

 

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    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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