谷 好通コラム

2008年08月27日(水曜日)

2003.「士農工商」現代版か

現在、快洗隊の人時生産性は約4,000円である。
労働集約型のこのビジネスはこれぐらいの効率がないと成り立たない。
と同時に、ESを実現することが難しい。

 

この効率を生み出すために商品品質を重視した付加価値の高い仕事を
効率よく進める必要がある。
そのために
・スタッフの「技術レベル」を上げること。
・作業効率UPのための「設備・器機」を充実させること。
・働きやすく、商品の品質を維持しやすい「作業環境」を作り出すこと。
(たとえば日陰であり、コーティングブースなど)
・お客様の無駄な待ち時間を作らず、作業をスムーズに進めるための「予約制」
・また、お客様に要らぬストレスを与えないための「ゲストルーム」。
・高付加価値商品をお客様によく理解いただくための「メニュー」「パンフ」などのツール。
・お客様に気持ちよく商品を買っていただくための「接客マニュアル」。
・スタッフが気持ち良く働けるための「店舗マニュアル・ルール」。

 

書き上げていくとキリがないが、
人時生産性は、お客様の満足CSと働くスタッフの満足ESが、
両立して成り立たないと絶対に上がっていかない。

 

ところが今日の快洗隊GL(グループリーダー)朝ミーティングで
問題になったことがある。
北海道札幌店の人時生産性がどうしても上がらないのだ。
みんな決してサボっているわけではなく、忙しく働き、
技術レベルもトップレベルで、
板金の藤井さんの腕は一流であり、
GL店長の西岡さんは研磨作業などのみんなの師匠である。
設備もまったく文句ない。
他の快洗隊より一回り広く光源など設備も万全なブースが4つもある。
もちろんメニュー、パンフなども整い、
接客マニュアルも、店舗マニュアルも他の快洗隊と同じで、
同レベルで実行されている。
待合室も文句なし。

 

では、なぜ生産性が上がらないのか。
一言でいえば、下請け仕事が多いからであろう。

 

札幌店は元々
「エムズカーケアパフォーマンス」という
コーティングと板金のショップが前身であり、
カーディーラーや中古車屋さんなどから
コーティングや板金の仕事をもらって作業する下請け仕事が多くあり、
お客様からの直接の仕事は全体の半分以下であった。
世の中の「磨き屋さん」「コーティング屋さん」の多くが
同じような形態で営業をしているのが実態であり、
特に板金屋さんは100%下請け仕事に依存している工場すらある。

 

だから、カーディーラーや中古車屋さんの景気や、
その意向に大きく左右され、仕事が不安定なだけでなく、
その単価は想像以上に低い。

 

エムズの西岡さんはそのような形でのビジネスに限界を感じ、
できるだけ下請け仕事から脱却し、
直接、顔が見えるお客様から仕事(直需)を増やして行かねば先がないと考えて、
アイ・タック技研と経営統合し、快洗隊・札幌店として再スタートした訳である。

 

しかし、店舗をオープンさせてすぐに直需のお客様が増えるわけではない。
他の快洗隊の新規オープンと同じように
せいぜい月に200万円程度の売上げが上がるぐらいで、
ここからリピートのお客様を積み上げて、繁盛店を作り上げていくのだ。
だから今の現状では職人さんを入れて六人の所帯を食わせていくことは出来ない。
当然、従来からの下請け仕事も継続することになっている。
その単価が、想像以上に低いのだ。
通常のお客様から5万円いただくような仕事が、
下請けだとわずか2万円とか1万5千円とかの卸し単価になってしまう。

 

それはコーティングでも、
板金でも同じようなもので
レバレートで考えると1時間3,000円程度ではないだろうか。
とても生産性で4,000円/人時など上がるわけがない。
頑張ってその6割程度しか上がってこない。
つらいところだ。

 

それでも、直需がないわけではなく
たまたま口コミで訪れたお客様に、普段のうっぷんを晴らすように
飛び切りの仕上げに腕を振るい自分の技術を誇るが、
お客様としての絶対数が少ないので・。

 

 

個人営業で下請け仕事を主として仕事をやっている人たちは、
結局、身を粉にして仕事数を稼ぐしかないのだろうか。
個人営業の「磨き屋さん」、「コーティング屋さん」には、
たぶん休む時間などないだろう。
朝早くから深夜までしっかりと長い時間
汗水たらして低い単価の仕事をしているのかもしれない。
だから残業なんて概念はなく、
・・・
ある意味では大昔の工業のようなものだろうか。

 

江戸時代の昔、「士農工商」という身分制度があって、
支配者であり権力者であった「武士」が一番上の位で、
二番目が、人間の生命の営みに直接関わる「食べ物」を作り出す「農民・漁民」。
三番目が、道具などの物を作り出す「加治屋」など工業を営む人たち。
最下位に、それらを流通させ「利ざや」で稼ぐ「商売人」があった。
しかし、実態は直接生産に関わる「農業・工業」の人たちよりも、
「商業」の人達が圧倒的に豊かであり、力も強かった。
時には生活に困った「武士」が「商」から金を借りたりして、
表向きの身分制度とはまったく逆の構造になっていた。
小学校、あるいは中学校の社会科で習ったことだ。

 

実際の作業をする者(工)と、
その仕事を取ってきて下請けに出す側(商)と
お互いに役割分担があるが、それが、工1:2商の割合で配分されたのでは、
その製品(商品)が、高い品質であろうとしても無理がある。
せめて工2:1商だろう。
実際、板金の仕事などは工2:1商であったのだったが、
板金が今、かなり減っている(飲酒運転が減ったため?)ので、
仕事の取り合い状態で、下請けの単価がかなり下がっていると聞いたことがある。
コーティングもカーディーラーの内製化が進む中で、
やはり下請け仕事の取り合いがあって、単価が低くなっていると聞く。
工2:1商が、工1:2商に近い状況になりつつあるそうだ。

 

札幌店のスタッフに聞くと、
仕事が直需であろうと、下請けであろうと
やらねばならないことは同じで、また決して手を抜くことはない。
職人のプライドとして、それが下請け仕事であろうといい仕事をすると断言する。
その上で、半分以上が(商)に持っていかれては、
いい仕事をしているだけに、かわいそうだ。
人時生産性を上げて、
キチンとした組織の人間として採算を考えていくならば、
ここは何とか、「直需」の仕事で手一杯にしていくしかない。
その意味で快洗隊が、突破口になるならば、札幌店の存在意義が倍増するというものだ。

 

昨日、最終の飛行機で福岡から帰って来て、
今日は午前中に札幌まで飛んだ。
ならば昨日の内に福岡⇒札幌の飛行機に乗れば良かったようなものだが、
今日は、快洗隊のGL朝ミーティングがあり、
おまけにグリットの日向君が朝7時から原稿を持ってくるというので、
一晩だけの滞在時間だが中部空港に帰ってきたのだ。
それに、やっぱり寝るにはホテルより家がいい。

 

 

 

中部空港で見つけた「ドリームリフター」
ボーイング747の貨物型を改造して機内の体積を約三倍にした機体。
最新鋭のボーイング787「ドリームスター?」の機体の一部分を
787の最終組み立て工場のあるシアトルまで運ぶために作られた。
名古屋近辺の工場で787の翼の一部、胴体の一部を作っており、
中部空港はボーイング747「ドリームリフター」が日本で唯一発着する空港なのだ。

 

 

10,000m上空はいつもきれいに晴れ上がっている。
地上でもこんなきれいな空が続くといいのに。

 

 

現代版逆転「士農工商」からの脱出を図る快洗隊・札幌店。
日本国中の快洗隊の中でもっとも恵まれた設備を持っている。
これで生産性が上がらないのでは嘘である。

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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