谷 好通コラム

2008年12月15日(月曜日)

2088.朝令暮改と服従の関係

“朝令暮改”というのは、
「朝みんなに言った事を
その日の夜にはもう変えてしまい、
指示、指令がコロコロ変わって
一体どの指令を聞いて動けばいいのか分からない。困ったものだ。」
というような悪い意味で使われる。

 

指示、指令に従って動く人達にとっては、
コロコロ変わる上司の言葉に、
自らの行動として何を指針にしていけばいいのか分からず、
混乱し右往左往する迷惑な話だろう。

 

しかし、
私は朝に言ったことを夜になったら
「やっぱりあれは違うな。こうだよ。」と言うこともある。
朝しゃべった事が、一日間色々な行動をして、見て、聞いて、読んで、
認識と考えが変わり「あれは違ったな。・・」となるのだ。
新しい経験を積めば、それまでのことを否定して、
新しい考えを持つこともあるのは当然だ。
新しいことを学んだのに、いささかも変化できないのは学んだ事にならない。
そういう意味では、いつも同じ事を言い続けることは不可能ということになる。
だから、私は朝令暮改そのものが悪いとは思っていない。

 

しかし、いろいろなことに対する見方が変わり、
それに対する行動をみんなで変えるのは、そう簡単ではない。

 

経営者として、常に自分自身の考え方や見方を更新して
新鮮であり続けることは絶対に必要であるが、
それを具体的に実現するための新しい行動を起こすのは、大変な作業の上になる。
新しい行動の“意味”を、
その行動に関わる人すべてに理解してもらわなくてはならないのだ。
いわゆる「コンセンサスを得る」手続きが重要なのである。

 

理解するには議論が必要であって
新しい考え方や見方を説明しても、
それぞれの人が、それぞれの見解と考え方、違う価値観を持っているので、
一方的な説明だけで理解してもらえるものではない。
あるいは、新しい考え方による新しい行動が、必ずしも正しいとは限らないから、
みんながその行動をそのまま受け入れることの方がかえって不自然なのだ。
みんなの価値観と見方によって、
それぞれの意見をぶつけ、議論をし、
みんなが納得して、自らの意思として行動しようと思えるような結論を出す必要がある。
みんなが納得した上での行動は力強く、結果が出るのも速い。

 

しかし、新しい考え方による新たな行動に対する議論の中で、
一番てこずるのが「服従」だ。
自分の意見を述べるまでもなく
つまり抵抗することなく、議論するまでもなく、
上のポジションにある者の言うことに無条件で服従してしまうことだ。
組織として上に立つ者としては
自分の言うことを無条件で受け入れてくれる部下は素直でいい。
ということになるが、
実は、服従する者は
その行動の“意味”が理解できなくてもその行動をしてしまうので、
行動の根拠となる“意味”が変わって、
要求される行動も変化しなければならない時、
なぜ行動が変わらなければならないのか、その理由が解らない。
だから、そんなことが度重なると
「言うことがコロコロ変わって、仕事が出来ない。」となることがある。

 

問題は、その組織が新しい認識の上の行動を取ろうとする時に
議論が出来る組織であるかどうかということなのだろう。

 

「朝令暮改」そのものは決して悪いことだとは思わない。
変化し続ける新しい状況の中で、
変化に対応できる柔軟な組織であることは必要だ。
しかしそれを可能とするには、
活発な議論が出来る組織を作らなくてはならないことが一番重要なのだろう。

 

「服従」は議論が出来ない組織だから起こる悪しき現象であって、
議論が出来る組織を作ることが出来るかどうかは、
トップの姿勢に拠るところが多い。
たとえば、トップが自分の支配欲を満たすための組織では活発な議論は出ない。
たとえば、トップが自分の個人的欲望のための組織でも活発な議論は出来ない。
組織が、組織を構成する人達をも含む社会のためにあり、
みんなのそれぞれの為にあることが必要なのだろう。

 

議論とは話すことばかりではなく、聞くことがあって初めて成り立つものだから、
上のものが一方的に演説をするばかりでは議論にならない。
お互いに話し聞くことで議論が成り立つ。
また、話すことよりも聞くことの方が100倍難しいと言う。
しかし聞くことの方が100倍効果的であるとも言う。
聞く能力とは、聞き出す能力に長けていることでもあるという。

 

組織を活性化することは、トップ自らが聞く能力を高めることに他ならないとも言う。
それでも、聞くことは話すことよりも100倍難しいのだから
やはりそうそう簡単には出来ない。
だから、多分、それが出来るようになったら会社として秀でることも可能なのだろう。

 

その能力がどれくらい自分にあるかどうか
たぶん、それが自分のトップとして限界のバロメーターであるとも思う。
そんな事を思うこともある。

 

今日は一日中何組もの会議で終わり、
明日は、また朝の新幹線で東京である。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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