谷 好通コラム

2009年02月02日(月曜日)

2126.赤鼻のポチが引退した

赤鼻のポチが引退した
「赤鼻のポチ」とは
「中日本エアーライン(NAL)」が使っていた
「フォッカー50」というオランダ製の飛行機の愛称だ。
昨日、引退したと新聞に載っていた。

 

昔、この赤鼻のポチにはよく乗った。
何十回と乗っただろう。

 

機体が白と赤に塗り分けられ、
特に機首の鼻のような所がポツンと赤く塗られていて、
その表情が赤い鼻の子犬のように見えて、
みんなから「赤鼻のポチ」と呼ばれ、愛された。

 

(今回の写真はほとんど過去のブログから探してきて載せています。)

 

 

「中日本エアーライン(NAL)」とは名古屋鉄道が中心になって作った小さな航空会社で、
名古屋(小牧)⇔富山
名古屋⇔米子
名古屋⇔高松
それぞれを往復2便ずつ
2機のフォッカー50、赤鼻のポチで運行していた。
たまたまであるが、私達が全国を出張し始めた初期、
私は富山にも米子にも高松にもたびたび行ったので、このポチにはよく乗った。
多分、専務もよく乗ったと思う。

 

翼が胴体の上にある高翼だったので視界が良い。

 

 

着陸前に主脚が出る様子が見え、
しかも、タイヤが着地する瞬間に白煙が出る様子まで眼前に見える。

 

 

また、その大きさが
大戦のころの輸送機くらいではないかと想像し、
昔の兵隊さんは、こんな感じの飛行機に乗って
戦地の真ん中にパラシュート降下したのかな、などと思ったりして、
ワクワクしたものだ。

 

 

フォッカー50は、
基本設計が「フレンドシップ」というもう60年以上も前の飛行機で、
動力をレシプロエンジンから高出力のターボプロップエンジンにし、
通信や制御などの電子機器を最新のものに近代化して、
「フォッカー50」として再デビューさせられた機体だ。
基本設計が古いので、いかにもマニュアル感が強く、
「飛行機に乗っている実感」「飛んでいる実感」が味わえる大好きな飛行機であった。

 

中日本エアーラインは、
コミューター便の運行会社として唯一の黒字会社であると、
昔、新聞で読んだ。
記事には「機長からスチュワーデスさんまで、
機内の掃除から何でもみんなでやり、運行費を節減している
さすが名古屋の航空会社」とその倹約ぶりが誉めてあった。

 

カウンターで働いているのはみんなスチュワーデスさん。

 

 

もう一つ、
国内で客室乗務員を、
唯一、正式な役職名として「スチュワーデス」と呼んでいた会社でもある。
ANA,JAL,JASなどはみな「キャビンアテンダント」なんて呼んでいるが、
やっぱり「スチュワーデスさん」が可愛くていいではないか。
便数が少ないので、ちょくちょく乗る私たちはスチュワーデスさんの名前を憶えて、
私は福島さんのファンであったし、
専務はたしか竹原さんとかいう人が好きだと言っていた。
古き良きのんびりした時代であった。

 

もう十年以上も前、
「写真を撮らせてください。」とお願いしたら、
ニコッと笑顔を見せてくれたスチュワーデスさんの、確か「原さん」か?

 

 

その後、私たちの活動の舞台が
福岡、広島、札幌、東京、大阪など都市部に偏ってきて、
赤鼻のポチに乗る機会が少なくなってきたころ、
機体もいつの間にか4機に増え、
名古屋⇔福島⇔函館
名古屋⇔米子⇔福岡とか、
名古屋⇔松山(1時期は4往復もあった)
名古屋⇔徳島
ずいぶんあちらこちらの飛行場に出現するようになり、
どこかの空港でポチを見つけ「ありゃ、ポチがいるわ。」と歓声を上げた。
ANAやJALが路線を持っていない隙間を狙ってのゲリラ戦術のような路線である。

 

機体数も増え、路線も増えているようだったので
ずいぶん元気に活躍しているのかと思っていたら、
何年か前、突然、ANA全日空の塗装になったポチを見た。
ANAの水色の塗装なので、もう赤鼻のポチではない。
ANAのグループに入った「エアーセントラル」という会社のフォッカー50だ。

 

何があったのかは知らないが、
中日本エアーラインが完全な独立系の航空会社として続けるのは無理であったようだ。
白、水色と青の塗装になってしまったポチは、
とても小さくなったように見え、
中部空港をトコトコとタキシングしている姿は、
大きく見えた幼稚園年長組のガキ大将が、小学校に入って、
似合わない制服を着せられ、
大きな小学校の子供たちの間をチョコチョコ歩いているみたいに
とても小さく見え、情けないような感じでとても悲しく思えた記憶がある。

 

 

ポチは赤鼻である時が立派で良かった。

 

 

そんな感傷に浸りながら、
その記事の隣に
「JALが新しいRJ機、エンブラエム300を就航させる。」とあった。
ブラジル製の最新鋭RJ(リージョナルジェット)であるエンブラエル300は、
JALの中部⇔福岡便に投入されるらしい。

 

 

何年か前まではB767(約230人乗り)であったこの福岡便は乗客が減って、
JALはB737-400(約150人乗り)を就航させていたが、
またいっそう減ったのか、定員70名のエンブラエル300を何便かに飛ばすようだ。
ANAはすでに、737-500(約130人乗り)に混じって、
乗客の少ない時間の便にボンバルディアDHC8-Q400(70人乗り)を飛ばしている。

 

このボンバルディアDHC800-Q400は、
フォッカー50と同じくターボプロップエンジンのプロペラ機だが、
まったく新しい機体と強力なエンジンで、ジェット機に遜色ないスピードを誇っている。
時速600kmは出ているのかもしれない。しかも意外と静かなのだ。

 

 

昔、フォッカー50が赤鼻のポチであった時、
高度わずか5,000mぐらいを、
高周波を立てながらものんびりと時速400kmぐらいで、
日本国中の隙間路線を飛びまわっていたあのころが懐かしい。

 

 

また我が青春の一つが終わってしまったような気がする。

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    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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