谷 好通コラム

2009年02月27日(金曜日)

2148.オリバー カーンに恋した?

昨日の福山でのセミナーで、
私自身に、妙な心境があった。
話の途中で出来上がったばかりオリバー カーンのCM映像を上映するのだが
オリバー カーンの姿を見ると妙に切ないのだ。
そのあと休憩中には、
彼の現役時代に活躍している姿を写したDVDを上映した。
その姿を見るともっと切なく思えてくる。
まるで、オリバー カーンに恋をしてしまったように切ないのだ。
まさか、本当に恋をしたわけでもないだろうが、
妙に切ない思いが胸に込み上げてくる。

 

私はこのCMを作る前からオリバー カーンの名前と姿は知っていた。
ドイツの代表サッカーチームのゴールキーパーで非常に有名であることも知っていた。
だから、キーパーコーティングのCMに出てもらったのだが、
私は熱狂的なサッカーファンではなかったので、
それ以上のことは知らなかった。
しかし、ドイツミュンヘンのスタジオで約6時間かけて撮影したあと
直筆のサイン入りの本「ナンバーワン(日本語訳)」をもらって
日本に帰って来てからじっくりと読んだ。
いつものような早読みではなく、一字一句を食い入るように読んだ。
とても感動して、私はオリバー カーンのことが大好きになった。

 

激しくフィールドを動き回る選手と違って
ゲーム中ずっとゴールの前に立ち続け、ボールに集中し続け、
常に状況を判断しながら、
いつ来るか分からない自ゴールへの一瞬のシュートに神業のごとく反応する。
一瞬の反応に、100%の力を出す筋肉は想像を絶する訓練の成果だろう。
一瞬である。その一瞬のために長い時間を集中し続けることは、
凄まじいばかりの意志の力が必要だ。

 

世界中に何万人といるのであろうゴールキーパーの頂点に立つのは、
天賦の才能だけでは成し得ぬことで、
激しい訓練を支える強大なモチベーションがあってからのこと。

 

「絶対に負けない。」とあった。
「絶対に勝つのだ。」ではない。
「俺は絶対に負けない。」である。

 

モチベーションの源泉は
勝って、巨万の富を得たい。でもなく、
勝って、名声を得たい。でもなく、優越感を味わいたい。でなく、
勝って、勝利の美酒を味わいたい。でもなく、喜びを分かち合いたい。でもない。
「絶対に負けない。」なのだ。

 

勝負なのだから、その字のごとく勝つ時もあれば負ける時もある。

 

私が高校生の時、柔道部にいた。
たくさんの試合をしたが、
今もリアルに憶えているのは負けた時のことである。
負けた時の相手がかけた技、相手の顔、その光景まではっきり憶えている。
その時の悔しさと惨めさまではっきり憶えている。
反対に勝った時の試合のことはまったく憶えていない。

 

レースでもそうだ。
自分のミスで車を壊したことや、スピンしたことはその一つ一つまではっきり憶えている。
頭の中にスローモーションの映像がたくさん蓄積されている。
逆に、まれにではあるが、
思い通りのレースが出来て、
自分にとって満足できたレースの光景は、ほとんど憶えていない。

 

今までの人生を思い出してみると、
色々な経験の中で、
私のターニングポイントは
いつも
悔しい思いをした時だったような気がする。
そのたびに、奥歯がギリギリと音を立てるほど悔しく「絶対に負けない。」とつぶやいた。

 

私のモチベーションは「勝ちたい」ではなく、「絶対に負けない。」
ひょっとしたら男はみんなそうなのではないか。

 

ゴールキーパーというポジションは、
いくら頑張って失点をゼロにしても、それだけで勝てるわけではない。
勝つためには、味方が1点でも得点をしなければならない。
しかし、ゼロに抑えていれば、負けることはない。
勝てないかもしれないが、負けることも絶対にない。
だから、ゴールキーパーのモチベーションは
「勝つぞ!」ではなく、
「絶対に負けない!」なのだろう。

 

そう気が着いた時、
私の人生もそうだったことに気が着いた。

 

アグレッシブに
「絶対に負けない。」のだ。
私はこの言葉を口にすると、涙が出てくる。

 

 

オリバーカーンの車。
ナンバーを隠すべきかとも思ったが、
そのナンバーが
「MUNICH(ミュンヘン)のM、Oliver(オリバー)のO、Kahn(カーン)のK」であり、
自らの名前のナンバーであったので、そのまま載せた。
アウディS8。450馬力の怪物である。

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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