谷 好通コラム

2009年05月26日(火曜日)

2215.薄いベールの中に富士山

人生が数十年に過ぎない時間しか与えられていないのは、
何かの意志なのだろうか。
若い時は、自分の人生が有限である事を全く意識せず、
自分の中に無限の可能性が存在しているかのように錯覚しているが、
自分に与えられている有限の時間の終盤にかかってくると
実はそれが錯覚であったと初めて自覚する。

 

「我、考えるゆえに我あり」のごとく、
人が人である所以を思考と考え、人生とするならば、
思春期を迎えた頃から本当の人生が始まり、
脳細胞は時間の過程によって確実に死んでいくので
深い思考ができるのはせいぜい80歳までとすると、
本格的な人生はせいぜい65年。
私はすでにそれを40年以上費やしてしまった。
肉体が上手く80歳まで生きたとして残る20年余り、
下手して六十歳代後半で肉体が滅びるならば残りわずか10年足らず、
これをいかに使うか。あるいは過ごすか。
自らが決めた自らの使命を追い求めて燃え尽きるのか。
今までの人生で積み上げてきたものを糧として、
見聞を深め、自らの思考を広く羽ばたかせて、人生の味を楽しむか。

 

楽しむことは魅力的である。
世界中には自分の想像をはるかに越えたことがいっぱいあるに違いない。
それらの中には自分の人生観すら変えてしまうものもあるかもしれない。
そう思うだけで胸がときめく。

 

では、二者一択なのか。
とことん自分がやるべきとした仕事に燃え尽きるか、楽しむか、どちらか二者一択なのか。

 

はたと考え、思いつくことがあった。

 

最近、私は会議の時、内職をするようにしている。
そうしないと会議の場で自分一人が喋ってしまって、
みんなが発言できないようになってしまうからだ。
会社のトップ、特に創業経営者がはまり込みやすい罠で、
自分の考えを理解してもらおうと力説すると、
かえって、みんながその範疇から抜け出せなくなって、
議論の場がその意味を失ってしまうことになる。

 

だから、私は内職をして、自分の半分の思考をそちらに逸らし、
みんなの意見を半分の思考で聞くことにした。
それで幾分かは、自分だけが喋りみんなが沈黙をする最悪の状況からは逃れている。
こんな方法がいいのか悪いのかは分からないが、多分悪い方法なのだろう。
もっと根本的な解決方法があるに違いないが、
しかし、今のところ、そんな方法しか思いつかないからそうしている。

 

これを仕事全般に当てはめて、
自分のすべての時間を仕事に集中させるのではなく、
ある一定の比較的長い時間を、
世間のあちらこちらに出かけて見聞を拡げたり、
まとまった時間本を読んだり、
やりたいと思ったことをやって、仕事の事をある程度忘れた時間にし、
一定の思考の範囲の中に閉じこもりがちになる仕事の時間から自分を解放する。
その期間、みんなはそれぞれの思考を活かして仕事をせねばならないので、
主体的な仕事の仕方になってくれれば、それは最高だ。
私の視野も広がっていい仕事が出来れば、一石二鳥である。

 

そう思って、私のスケジュールソフト「サイボウズ」の8月までの予定に
「一週間の仕事以外の時間」をはめ込んでみた。
しかし、それを眺めていても、ちっとも楽しくならない。

 

それはたぶん、足がまだ思うように動かないからだろう。
数日前の昼を境に痛みがぴたりと止まって「おっ、直った!」と思う瞬間があったが、
色々と仕事の都合で動き回っている内に、足がまた動かなくなった。
膝が痛いし力が全く入らない。
「もう元に戻らないのではないか」と不安がよぎったりする。
体が不便だと、色々と楽しい事を考えても、
それを実行する難儀さを思い、楽しさを帳消しにするようだ。
今日の朝、東京駅と名古屋駅での数百メートルを、
普段の三分の一ほどのゆっくりしたスピードで歩き、その遅さが情けなかった。

 

まず、体重を落とすことが肝心なので、
一日のカロリーを2,000kcalにコントロールするも、
92kgからちっとも落ちない。
私のデブは実にしぶとい。

 

今、サイボウズに積極的な予定を書き込むことがおっくうになって、
数日先の予定までしか入れられなくなっているのは情けないかぎりで、
この時点に至って、へこたれているようでは、私は実にイカンのだ。
本当に実にイカンのだ。

 

名古屋への新幹線の中、富士山が見えた。
しかし薄いベールの中にあるようにボーっとしているのは、私の今の心境のようだ。

 

元気を取り戻すために、早くレースで走りたい。
無茶かもしれないが、
レースで思いっきり走ると
何もかもがスッキリするような気がするのは、錯覚なのだろうか。

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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