谷 好通コラム

2009年08月01日(土曜日)

2271.物販とサービス業の一長一短

今日、テレビを見ていてゾッとした。
「お値段以上 ニトリ」のキャッチフレーズでおなじみのニトリのコマーシャル。
かなり立派でお洒落な「電化システムキッチン」が、
199,000円と宣伝していた。
安い!
テレビの画面での姿しか分からないが、
ぱっと見では50万円以上はしそうなものだ。
それが約20万円で買えるとなれば、
新しいシステムキッチンで台所のグレードアップを願っていた主婦が、
このところの不景気であきらめていたのに、
再びムクムクっと購買意欲が沸き立っている姿が目に浮かぶようだ。

 

しかしそれにしても、これは安い。
家庭の器具とか電化製品にはまったくうとい私でも、安い!と思った。

 

これは恐ろしい事だ。

 

この手の製品を扱っている町の店舗の店主は、
このCMを見て、絶句しただろう。
そのあとの長~いアキラメのため息が聞こえてくる。

 

品質的にどうかは知らないが、
少なくともスペック的にはほぼ同等の製品が、
自分の店舗で売られている値段の半分以下で宣伝されたら、もう打つ手はない。

 

ビックカメラとか、ヤマダ電機とかの超大型量販店が、電化製品やカメラなどを、
「町の電気屋さん」では考えられないような値段で販売して、
町の電気屋さんやカメラ屋さんをことごとく潰したように、
スペックが決まっている商品の販売では、
その値段が圧倒的に安いことは、絶対的な力になり得る。
物販ビジネスの逃げようのない怖いところだ。

 

その昔、街角に当たり前のようにあった
「八百屋さん」「さかな屋さん」「文房具屋さん」「日用雑貨店」「お菓子屋さん」が、
コンビニストアとスーパーの出現でことごとく無くなり、
「薬屋さん」がドラックストアに駆逐された。
「タバコ屋さん」もTASPOカードのおかげで、自販機の売り上げが70%も減ったと聞く。

 

物販の商売は「仕組み」のビジネスであって、
より効率的な「仕組み」で安さ実現しと、便利さを構築したものが勝つ。

 

それに対してサービス業は、
「商品をその店舗で作り上げる」という物販にはない特徴がある。
だから売っている商品には、
その店舗、あるいは系列の店舗によって独特のスペックがあり、
商品そのものに独自性と特長を持たせることが出来る。
だから、安さと便利さだけでは勝負は決まらない。

 

例えば、ラーメン屋ならば、
それぞれの店舗で独特のスープの味を作り出せるし、
麺も幅広い選択が出来る。
トッピングはそれぞれが趣向を凝らし、
そのすべてが組み合わさって、独自性の強いラーメンが出来る。
日本国中に何千種類、何万種類ものラーメンが存在して味を競い、
日本国民はそれぞれ自分の好みのラーメンがあって、その味を堪能している。
ラーメンについては日本人ほど幸せな国民はないといえる。

 

ラーメンは他人が作った物を売る“物販”ではない。
ラーメンを造る職人の感性と腕を、お客様に提供するサービス業だ。
だから、安さと、便利さよりも、
「味」が勝負の分け目になる。
だから、無数のラーメン屋がこの世に存在しているわけで、
巨大な資本をバックにしたチェーン店が圧勝するわけではない。

 

しかし、
ハンバーガーなど規格とマニュアルによって造られる種類の食べ物もある。
多くのファミレス、コーヒーショップ、焼肉屋などもその種類かもしれない。
だから多くの外食産業は、
いまや“物販”に近い存在になってきたかもしれないが、
人の嗜好の違いの多さの分だけ
チェーン店の種類も多く、物販の世界とは格別に多様である。
もちろん一軒の店舗だけでも十分に成り立つ要素が大きく、
何万種類、何十万種類、ひょっとしたら何百万種類の外食店舗がある。

 

ここが製造された製品を売る「物販」との決定的な違いと言える。

 

洗車やコーティングなども、純然たるサービス業である。
お客様の車を舞台にして、
洗車・コーティング技術者たちの感性と技術を駆使し、
あらゆる車のキレイを造り上げる。

 

すべての作業の技術に対してマニュアルが作られ、訓練を通して、
キレイの品質を維持しながら作業されるが、
車の種類、形、汚れ方はそれぞれ違い、
お客様が望まれるキレイのレベルも多種多様だ。
その複雑な要素に対して一定のレベルの品質のキレイを提供するには、
マニュアルと訓練された技術だけでは足りない。

 

作業をする技術者の“感性”と、“本気”が不可欠なのだ。
ここの要素は、仕組みだけではどうしても造り上げられない部分がある。

 

ここが、サービス業が“安さの圧倒的な力”をあまり持たなくていい
最大のメリットなのかもしれない。

 

しかし逆に、ラーメン屋さんのラーメンの味が悪かったら
安くしようと便利にしようと絶対に繁盛しないという宿命もある。

 

我々のビジネスでも「キレイにならない」とお客様にマイナスの評価をされれば、
安くしようと、便利にしようと、どうしようと絶対に繁盛はしない。
ここがサービス業の怖さでもある。

 

先の「ニトリ」の話。
ニトリは中国の圧倒的な製造コストの安さに負っている部分が大きい。
その中国で、労働者たちの給料がものすごく上がってきていると言う話を聞いた。
私が中国に行き始めた約10年前、
洗車場の労働者たちは月給700元(約10,000円) 程度だったのが、
今は月給2,000元(約26,000円)ぐらいにまで上がっているという。
労働者たちの給料が三倍近くにまでなってきている。

 

中国製品の最大のメリットである「安さ」は、
労働者の給料の圧倒的な安さに支えられてだけなので、
今後、このメリットが揺らいでくることは容易に想像出来る。

 

ニトリは安さだけではなくもっと色々な魅力を持った店舗であるが、
安さは、最大の武器である事も事実だ。
その武器が他の店舗と変わらないレベルになってくると、
圧倒的な勝利は決して安泰ではないだろう。
これも物販の怖さの一つであるかもしれない。

 

逆に、私たちのビジネスである洗車・コーティングビジネスの宿命的な敵は、
やはり「雨」である。
今年の7月は、愛知県において、
7月の31日間のうち“25日間”も雨が降ったとテレビで言っていた。
さすがに愛知のどの店もズタズタの実績で、
スタッフが気の毒になって来るくらいだ。

 

物販の一長一短、サービス業の一長一短。それぞれあるが、
いずれも甘いビジネスではなく、一生懸命頑張らないと、イカンということのようだ。

 

雷が鳴る大雨の中、
滋賀県東近江市八日市に
物販の代表の一つであるSS(関西MCオイルさん)と、
サービス業である私たち快洗隊のコラボ店、八日市店がプレオープンした。

 

お互いの長所を活かすことが出来れば成功である。

 

 

グランドオープンは8月6日より

 

 

両要素を統括する宇田店長。
ものすごく存在感のでかい人です。

 

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    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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