谷 好通コラム

2009年11月17日(火曜日)

2354.会社は誰のものか

※私のブログに、真剣な投稿をいただきましたが、
内容が重かったので考えているうちに返信が遅れました。
そこにあったいくつかの質問に対して、
私なりの返事を、投稿がなくなったので返信する場所がなく、あえてここに書きます。

 

 

「会社は誰のものか」

 

法律的に言えば、「会社の所有権は株主にある。」
そして「指揮権は、株主に信任された代表取締役、社長」にある。
しかも多くの企業、特に中小企業においては、
創業者あるいはその親族が株式の過半数を所有していて、
会社の指揮権である代表取締役・社長も兼任している。
いわゆるオーナー会社と呼ばれる会社だ。
アイ・タック技研㈱もオーナー会社である。
会社の所有者は株主であり多くの場合は指揮権を持つ社長を兼任している。
だから会社は社長のものか?
実際はそうではない。

 

一つの見方がある。
お客様はその会社、製品、サービスが「自分のため」になるかどうかだけで、
その会社の製品、サービスを買うかどうかを決定する。
その決定で会社が繁栄するのか衰亡するのかが決まるので、
会社の主人公は、お客様であって、
実はお客様がその会社の存亡のすべてを握り決定権を持っていると言え、
「会社の主人公は“自分のため”を考えるお客様」。
かつ、その「会社存亡の最終決定権者もお客様」である。
これも厳然たる事実である。

 

だとするならば、
そのお客様が買おうと思うような製品を誰が造るのか。
お客様が受けたいと思うようなサービスを誰が実行するのか。
お客様が入りたいと思うような店舗を誰が作り、運営するのか。
それは経営者、社員、アルバイトまで含めての会社の構成員全員であろう。
これも揺るがしがたい事実である。
(家内事業は別だが、社員を一人でも持てばそれは会社)
会社の構成員であるスタッフ全員が
お客様が「自分のため」に「欲しいもの」「欲しいサービス」と思うものを
いかに考え、いかに造り、いかに提供するのかを実現できれば、
お客様がそれを買う判断基準である「お客様」の「自分のため」に合致した事になる。
だから「会社の主体は経営者、従業員すべてを含んだ構成員」である。

 

会社が作り出す製品、サービスの成功は、
「お客様が自分のために」買うという行為で決定するのだから
提供者である会社は、
「お客様のために」を考えるしか方法はない。

 

「会社の行動目的は”お客様のために”」以外には方法がない。

 

スタッフが「お客様のため」を思って製品やサービスを提供するには、
スタッフ全員が「会社の目的は、お客様のため」を考える必要がある。
「お客様は会社の主役であり存亡の決定権者」であるから。

 

社長とは、
つまり会社の代表取締役ならびに役員たち経営者とは、
その会社の目的を実行するための従業員の行動の指揮者・リーダーであり、
時代の流れ、変化を読み取って、
会社としての行動の指針を作り出すクリエーターであると私は思う。
「経営者とは会社のリーダーでありクリエーター」。

 

経営者である社長の報酬とは、
社長としての仕事、つまりリーダーとクリエーターとしての仕事の質と量、
そして会社の仕事への貢献度によって決まる。

 

しかし、
「社長とは最終責任者であり事業に失敗したら丸裸になる。
その危険を負って仕事をしているのだから、社長の報酬が高いのは当然。」
と、こんな話をよく聞くが、これは根本的に間違っている。
事業が失敗した時、法人としての会社責任は、
「資本金」の価値が無くなることあって、それ以上ではない。
会社という法人は、資本金の範囲内の「有限責任」という意味を持っている。
法人としての責任範囲は、
株主が出資した資本金がゼロになるという形で責任を取ることになる。
だから、負債が資本金を越すことを債務超過と言って、
会社が有限責任の範囲内で責任を取れない状態であって、会社の信用は一挙になくなる。

 

しかし多くの場合、中小企業の社長は、
会社が銀行などから借入をする際に個人保証をしている。
(私もしている)
だから事業が失敗すると、結果として社長が無一文になるのは事実だ。
しかしそれは、
言い方を変えれば株主であり社長である“個人”が、
保証人と言う形で
会社にお金を貸していることであって、
それを理由に“保証料(通常1%)”以上の金額を報酬に上乗せする理由にはならない。

 

株主としての報酬は“配当金”で賄われる。
役員報酬とは関係ない。
だから「社長」の最終責任の取り方とは“辞任”でしかない。

 

ここで一度整理する。
法人としての「会社」とは、
1「会社の繁栄・衰亡の“最終決定権者”はお客様」
2「会社の“主人公”は“自分のため”を考えるお客様」
3「会社の“主体”は経営者、従業員すべてを含んだ全構成員」
4「会社の全構成員の行動目的が”お客様のために”にあれば繁栄する。」
5「社長とは株主の信任で任命され、
会社の全構成員が“お客様のために”を実現するための“リーダーでありクリエーター”」
6「会社の“所有権”は株主にある。」
「株主の報酬は配当金。事業失敗の責任は株式の価値がゼロになること」
7「社長の報酬は仕事の結果としての事業の実績。責任の取り方は辞任」
「借入金の個人保証の対価は“保証料”」

 

会社は繁栄するためにあり、繁栄する方向で行動する。
会社が繁栄するかどうかは、
お客様が“自分のために”その会社の製品を買うか、サービスを受けるか、で決まる。
だから、社長をはじめとする会社の構成員は“お客様のため”を考え行動すれば良い。
それをお客様に受け入れていただければ、その会社は繁栄する。
「株主」は会社が繁栄して利益が上がればより高い「配当」が得られるので、
株主が望むものと、“お客様のため”の行動と利益は一致する。
社長、従業員など構成員も、会社に利益が出る事によって報酬が上がり利益は一致する。

 

銀行などの金融機関、取引先なども、会社が繁栄して利益が上がる事で、
より利益を得ることが出来るので、
会社の構成員が“お客様のため”に行動することと利益が一致する。

 

ところが社長・経営者が株主である場合、
つまりオーナー会社の場合、
社長である自分を任命する人が株主でもある自分であり、
構成員の行動の決定権があり、自分を評価し報酬を決めるも自分であり、一緒なので、
会社が自分のためにあると思って、
会社と構成員を社長である“自分のために”行動させればいいと言う錯覚に陥ることがある。

 

また社長の仕事の評価と報酬は最終的に株主の信任によって決定されるものだ。
社長と株主とは別の役割であり、別人格のはずなのだが、
多くの会社の場合、社長と株主がイコールなので、
社長は自分の報酬を自分の思いのままにする場合が多い。

 

多くのオーナー会社においては、
残念ながら、会社は自分のものであり、自分のためにあると考える場合が多い。
株主が自分ならば、会社は自分に所有権はある。
しかし、“自分のためにある”と考えるのは間違っていると思う。

 

会社が“お客様のために”行動されていて、
それがお客様に受け入れていただければ、
繁栄の決定権を持っているお客様は、その会社を繁栄させてくれるだろう。
会社の従業員も、“お客様のために”の行動ならば、それが会社の繁栄につながるのだから、
従業員の“自分のため”にもなるので、一生懸命働き、やりがいもある。

 

しかしその会社がオーナー社長(同族会社ならばその親族も)のためにあって、
社長のためにみんなが働くとしたら、
それは“お客様のために”の行動と必ずしも一致はしないので、
“自分のため”だけを考えるお客様が望むものと食い違った場合、
お客様はその会社を繁栄させるとは限らない。
すると従業員としては“自分のため”にはならないので、働く意欲も減退する。

 

以前快洗隊の店長会議で、私は店長たちに問うた。
「みんな、俺、谷好通のために働いている店長はいるかい。」
もちろん、誰も手を上げなかった。
聞いた時はザワザワっとしたが、誰も手を上げなかった。当然である。
私のこの会社の精神は健康であると、ほっとした。

 

会社は株主の所有物である。
法律的にはそうだ。
しかし「会社は誰のためにあるのか」は、
まず、第一にお客様のためにあり、
“お客様のために”行動する社員のためにあり、
それをリードし創造する経営者のためにあり、
会社を側面から支えてくれる取引先、銀行などの関係者のためにある。

 

所有者である株主は、
“お客様のために”を実現する事によって得られた利益から出る配当で
収入を得る権利を持ち、
利益が出なければ損を出す宿命を持っている。
もう一つ、加えれば、
株主はその会社の株式を売却して利益を得る権利と、損をする宿命も持っている。
しかしそれ以上のものではない。

 

会社は誰のものか。
一言で言うならば、結局、お客様のものであろう。
少なくとも会社の社長のものではない。
私も含めてそれは認めるべきだと思う。

 

社長の親族が社員にいたとしても、
そのことによってその社員が守られる事もないし、
また、そのことによってその社員が別途に果たすべきことは何もない。

 

世襲で後継を決める事もしない。
後継は、会社の全構成員の“お客様のため”の行動をリードし、
新たなる時代に新しい事業展開を創造できるクリエーターになって欲しい。
お客様のために。
会社の行動を実際に実現する社員、アルバイトさんたちのために。
一緒に行動するたくさんの仲間たち、施行店さんたちのために、株主のために、
それを支えてくれる多くの関係者の皆さんのために。

 

本気でそう思っている。

 

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    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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