谷 好通コラム

2009年12月06日(日曜日)

2369.輪が広がりつつ高くなる”波”

今日は朝からずーっと面接をしている。

 

今はこういう時勢なので
一度募集をかけただけで何十人もの応募がある。
それでも、半年くらい前までは派遣切りにあった人たちが中心であったが、
今は、それとは別に、正社員であった人たちの応募が多くなってきた。
人材不足に悩んでいた多くの中小企業にとって、
以前は、人材確保のチャンスという面もあったが、
そんな声もだんだん聞かなくなったのは
こぞって人減らしの一方通行になってきたのか、
不景気がいよいよ恒常的になってきているのだろうか。
私たちの本社がある愛知県は自動車産業の集まっているところであり、
特にそんな傾向が強い。
ほんの一年前の極端な人不足の時代とは、
まったくの別世界になっていることを実感する。

 

ある一つの大きな経済的ショックがあると、
世間のある一部の人が急激に職を失い消費力を喪失する。
すると全体としての消費力が少し収縮し、
製造業、販売業、流通業の仕事量も少し収縮して、
それに従事する人たちの一部と、外部の依存企業の一部にしわ寄せがいって、
一部の人がまた職を失い、もう一段、全体としての消費力が収縮する。
ほんの一部の波が、
もう一回り大きな輪の波を作り、
その波がまた一回り大きな輪の波を起こしていく。
その波が全体に広がった時、
物理の法則のように、波の高さが波の輪の大きさの中に吸収されていけば、
輪が広がれば広がるほど全体としては静かに収まっていくはずだが、
経済の世界ではそういうわけには行かないようだ。

 

波の輪の大きさが大きくなればなるほど、
世間に不安が広がる上に、
可処分所得の減少分だけも生活水準を落とすことを嫌う人々は、
より安くて良いものを求めて生活水準を維持するための選別傾向が強くなり、
選択された一部の店舗への消費者の集中が起きる。
極端に来店が減少する店舗、つまり、選ばれなかった店舗と、
かえってお客様が増える店舗、つまり、選ばれた店舗が出現するのだ。
こういう時期だから同じ業種の中でも格差が広がることになる。
ここで波の高さの差が出来て、
波の大きさが広がれば広がるほど、波の突端では波の高さが増幅していく。

 

一つの経済的ショックの発生から生まれるデフレとは、
全体がじわぁっと低くなっていくのではなく、
大きな波の高さの差を生み出しつつ波の輪が広がっていく現象のような気がする。
だから経済統計に出てくる物価の低下率よりも、
実際は大きく下がる部分と、それほど下がらず、むしろ上昇する部分が
振幅の広がった波のように出現するのではないか。
その平均値が経済指数のようなものに示されるのだろう。

 

高度成長時代、バブルの時代のように
世間の経済全体が上昇している時は、全体が上がるので波の高さも発生しないが、
地震のときのように、
プレートの一部が急激に陥没するとそこで大きな波が発生して、
どこかの陸地に到達する時、水深が浅くなるほど波高が大きくなって、
巨大津波になるような現象に似ているのかもしれない。

 

これからデフレ経済が続くことをテレビなどの報道で言っている。
その中で、消費者に選択されずに大きく沈む多くのビジネスになるか、
消費者に選択されて一部の上昇するビジネスになるのか。
消費者のマインドをどこまでしっかりと、正しく捉え、
その消費者のマインドに
応えられるビジネスを作り出していけるかどうか、そこにかかっているだろう。
その会社が本質的に持っている企業姿勢を問われる時である。

 

求職に来られた方々とお話をしていて、そんなことを考えた。

 

 

本社三階から東の空を見たら赤くなっていた。
夕焼けは西の空のはずだが、
西の空は赤くなっていないのに、なぜ東の空が赤くなっているのか。不思議だ。

 

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    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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