谷 好通コラム

2009年12月12日(土曜日)

2374.ラフマニノフのピアノ協奏曲2番

ラフマニノフは
少なくとも私は初めて聞いた。

 

辻井伸行のピアノと、
ベルリン・ドイツ交響楽団。
DVDでレコーディングセッションのシーンを一部、演奏と共に映像を見た。

 

人間は、自分が人に見られることをまったく意識しないと、こうも美しく輝くのか。
自意識というのは自分の意識という意味ではなく、
人から見られている自分を意識するということ。
自分が人からどう見られるかを意識すること。
それが全くなくなると、こうも感動的に、人はあどけなくも美しいのか。

 

人間のたましいは、
そのままならば透き通っていると確信できる。
人のたましいは、素のままならば、あくまでも柔らかくほのかなのか。
人のたましいを信じる気になる。

 

ラフマニノフの旋律はたましいの歌だ。
初めて聞いたのに、心の中に容易に入ってくる。
音の一つ一つが新鮮であり、ストレートに心を揺さぶってくる。
初めてのラフマニノフは感動的であった。

 

 

盲目の少年である辻井伸行は、
自分の姿を見たことがない。
だから、人から自分がどう見えるのか、
自分がどういう表情をして、どういう動きをすると、人がどう思うのか、を知らない。

 

だから、自分が弾くピアノから出てくる音と、オーケストラが奏でる音、
その音だけを体のすべてで感じ、体全体で躍動して、
音楽の神秘的な感動を、ひとかけらの自意識もなく、研ぎ澄まされて表現する。

 

心の底から感動した。
人から、計算とか、人からの感情とか、自意識とか、
そんなものを取り去ると、こんなにも素晴らしい存在になるのか。

 

視覚があるがゆえに、
人を見ることが出来るがゆえに、
人から見られる自分を意識するがゆえに、
どうも人は、もともと透明であったはずのたましいが、
余計な汚れにまみれ、犯されてしまうものらしい。

 

初めてのラフマニノフと、
透き通ったたましいの辻井伸行のピアノは、
完璧なベルリン・ドイツ交響楽団と共に、
私に深い感動を与えてくれた。

 

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