谷 好通コラム

2010年07月26日(月曜日)

2562.「大」は「小」を兼ねないどころか

一昨日の朝、パソコンがうまく起動しなくなって、
この二日の間、何も読めず、何も書けなくなった。
おまけに夏風邪を引いたようで、体が熱っぽく
昨日は一日中ずっとテレビをボォーと見ていただけで
まったく情けない時間を過ごし、
このブログも二日間のお休みとなった。

 

おまけに一昨日の夜は、アイビー石油の馬場さんと飲んだのだが、
博多の駅前からタクシーに乗り、降りた時にトランクの中から
私の一切合財が入っているバッグを出し忘れてしまった。
カメラとか背広とか携帯とかを忘れたことはこれまでも度々あったが、
バッグそのものを忘れてしまったのは初めてで、本当に困った。
しかし馬場さんがあちらこちらに一生懸命電話をしていただいて、
最終的に戻ってきたのは、本当に良かった。
私の忘れ物癖の重症ぶりは我ながら本当にいやになる。

 

以下は一昨日の朝、このブログのために書いた原稿で、
名古屋⇔福岡の飛行機の中で書きました。
ここに改めて載せます。


2010.07.24

 

今、中部空港で福岡行きの飛行機を待っている。
夏休みに入り、土曜日でもあるので
空港はごった返しているかと思ったがガラガラである。

 

行楽で土曜日の昼から出かける人はいないと言うことかもしれないが、
ちょっと拍子抜けだ。

 

 

中部空港はあらゆる場所が広すぎる。
こういう大きな公共設備を造る時は、
「ゆとり」を持った設計で、
将来の需要“増”に備えるのが常識なのかもしれないが、
しかし、最初は小さく造っておいて
需要が大きく増えた場合には、設備を増やし、大きくすればいいではないかと思う。
最初から大きく広く造り過ぎてしまった建物は、
維持費用が余分にかかるだけで
思ったより需要がなかった場合でも、小さく修正することはほとんど出来ない。

 

特に今の世の中、需要が想定以上に増えるなんて事はまずない。

 

中部空港が完全に需要を見誤った設備だと思うのは、
超大型ジェット機の発着が多くなることを前提に作られていることだ。

 

中部空港の「ボーディングブリッジ」もその一つだ。
ボーディングブリッジ、つまり、搭乗口から飛行機をつなぐ可動式の橋が、
B-747、あるいは総二階建ての超大型機が多くなるを前提としているように、
飛行機の入り口がものすごく高い位置にある飛行機に対応できるブリッジになっている。
しかし、中部空港に定期便として発着する機体は、
地面にタラップを直接下ろすことも出来るB-737がほとんどで、
乗降扉はずいぶん低い位置であり、
高い位置に取り付けられたブリッジは、B-737につないだ時、
低い入り口までかなりの勾配で傾いていて、
歩くのも大変だが、特に車椅子を押す場合は急坂が大変だろう。

 

また、中部空港は飛行機が着陸し、
所定のブリッジに着いてから。ブリッジが機体に装着されるまですごく時間がかかる。
私の経験では、日本で一番遅いのではないか。
ブリッジの構造が大型かつフレキシブルなので、
コントロールが難しいのかもしれない。
ブリッジ装着の時間が余分にかかる分、効率も低いはずだ。

 

航空需要は日本においてはすでに成熟しきっていると言ってもいい。
それに長期的に少子化減少が続き、人口は減少し続ける。
需要は、質としての付加価値は増大するとしても、量が増えることはない。
これは大前提だ。
量の増大に対応した一方的な大量輸送時代は終わり、
小型機にして便数を増やし、乗客の利便性を上げる方向にある。
ちとえ今後、航空需要が増大したとしても、
地方都市にある中部空港で超大型機の発着が増えることは今後もあり得ない。

 

中部空港で言えば、
無駄に広すぎると思える設備面積は、
これからも人で埋まることはないので
乗客に無駄に長い距離を歩かせ続けるだろうし、
超大型機に対応できる背の高いボーディングブリッジは、
ずっと、背の低い飛行機に取り付けられて急坂を造り続けるだろう。

 

 

中部空港の坂のきついボーディングブリッジ。

 

 

大きすぎる設備は乗客に疲労を与えるだけで、
簡単に縮小する事は出来ない。
無駄に大きすぎることや、
不要に機能が高いことは、
単に無駄なだけでなく、利用者に無用な不便を与え、
過大な費用を発生する元凶であるのではないか。

 

これは飛行機自体の歴史の中でも言える。

 

航空大量輸送時代の幕開けとなった世界一の超大型ジェット機B-747は、
乗客500人以上の能力を持ち、高い運行効率を実現し、
同時に大量の乗客を乗せて飛ばなければ採算が合わない宿命も持っている。
乗客が少なければ、発生してしまう赤字も大きいわけだ。

 

需要の読みが重要になってくる。
超大型機は満席になれば黒字も大きい。
しかし世界景気や、9.11同時テロ、SARSなどのような一時的な乗客減の要素があって、
乗客が減れば、
超大型機ほど空席が多くなって、赤字も大きくなる。
黒字と赤字の幅が大きく、ギャンブル的な面が大きくなるわけだ。

 

約40年前、B-747が開発された時、
ローンチカスタマー(開発決定発注者)として
大量のB-747を導入したパンアメリカン航空(当時の世界最大の航空会社)が、
需要の見通しの甘さから、その運行コストの増大に耐え切れず倒産したことは、
象徴的な出来事であった。

 

日本航空も大型機志向が強く、
需要が伸びない時代に、
小型機への転換が早かったライバルのANAにコスト面で負け、
まさかの倒産をした。

 

逆に、アメリカのサウスウェスト航空は、
乗客120~140人程度の小型機B-737だけで約500機を揃え、
徹底的な運行コストのダウンと、
便数をこまめに増やしたことによって、
世界有数の利益を上げる航空会社に成長した。

 

日本国中にまだ増え続ける空港と、ほとんど車の通らない高速道路は、
明らかに恣意的に大きすぎる需要予測によって造られてきた。
それを造る業者と、関わる政治家のさせる技か。

 

大きすぎる過剰な設備は、その設備自体の採算性を極端に落とすだけでなく、
維持費という末代までの負担を作り出すおろかな選択ではないだろうか。

 

私たちが店舗を作り出していく時も、
希望的観測で過剰な設備を造る愚行を決して行わないよう自らを戒めなければならない。
小さく造って大きく育てる。
「大」は決して「小」を兼ねないどころか、
取り返しのつかない愚行になりかねないのである。

 

中部から福岡空港へ飛ぶB-737から、
本州と四国を結ぶ3本ものルートを成す巨大橋たちが見える。

 

 

「鳴門大橋」から淡路島へ

 

 

「瀬戸大橋」

 

 

ほぼ通り過ぎてから撮ったので、
ほとんど写っていないが「しまなみ海道」

 

 

福岡のKeePer LABO青葉台店から博多駅方面に向かう途中。
明日の晴れ、多分、猛暑を約束する夕空。

 

 

次の日の朝、福岡空港での坂のないボーディングブリッジ。

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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