谷 好通コラム

2010年08月09日(月曜日)

2574.キーパー 知識(1)WAXとポリマーコーティング

ちょっと基礎知識
[伝統ある車の手入れ方法は塗装劣化の方向性を持っていた]

 

多くの人は自分で車を手洗いし、市販のワックスを塗っていた。
ワックスは車の手入れとして古くから多くの人に愛用されてきたもので、
車の塗装の艶出しには簡単で非常に便利なものだ。
しかしどんなにワックスがけを繰り返しても、
車はだんだん古くなって、艶がなくなり色がボケて来る。
それは、ワックスが色々な油成分の「混合体」であり「半流動性」を持っていて、
時間が経てば流れてしまうし、ウィンドガラスの油膜の元にもなっていた。
もっと問題は、
ワックスを塗ったあと、
ディーゼルが排出するススのような油分を持った汚れが着くと、
その汚れが油成分のワックス皮膜に浸透して、ワックス皮膜全体を汚してしまう。
実は、これがよく言う「水垢」であり、
「水垢」とは汚れたワックスのことを言っているのである。
「水垢」は白い車特有の汚れに思われているが、
「黒い車でも赤い車でも」同じように「水垢」が着き、
白い車のようには目立ちはしないが、発色を妨げ、色を鈍くしている。

 

水垢はワックス皮膜全体の汚れなので、洗っただけでは簡単に落ちず、
汚れたワックス全体をゴシゴシと擦り取る作業は「水垢取り」という大変な仕事だ。
大変だけならまだいいのだが、
汚れた膜全体を擦り取るわけなので、
塗装そのものも直接強く擦ることになって、
塗装の表面が傷ついてだんだん凸凹になっていく。
つまり徐々に艶がなくなってくる。
それでも、その上にワックスを上塗りしているわけなので、
ワックスの艶が出てしまい、
塗装そのものは凸凹になって艶がなくなってきていることに気がつく人はいない。

 

伝統的なお車の手入れ方法は、
手入れをすればするほど徐々に塗装の劣化が進む宿命を持っているわけだ。
残念なことだが事実である。

 

基礎知識
[ポリマーコーティング]

 

ポリマーは「高分子重合体」と言い、
炭素、酸素、水素などが連続的に結合した数万、数十万レベルの
大きな分子量をもつ安定した構造のもの。
混合物ではなく、分子同士が結合しているものなので常温での流動性もなく、
油成分を持った汚れが乗っても、浸透しない。
だから結果として、ワックスがけのような塗装面劣化の方向性は持っていない。

 

ポリマーはワックスに比べれば長い寿命を持っている。
しかし有機物であり、日光の紫外線(UV)によって分子的結合を切断される。
自動車の塗装もポリマーであり、
コーティングとしてあとから塗ったポリマーは、塗装よりも強くはなく、
塗装よりもUVによって早く傷む。

 

だから、ポリマーコーティングそのものには年単位の耐久性などは無く、
数ヶ月単位での入れ替えが必要である。

 

「磨き」の世界では、
磨いたあとこのポリマーコーティングを塗って、
艶と長寿命を売り物にしたものだったが、
コーティングは副次的であり主役はあくまでも磨きだった。
しかし磨きがあまりもの重労働なので、
高い値段をいただかなくては採算が合わず、
コーティング自体に数年もの長い寿命があるような言い方をしてしまったわけだ。

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2010年08月09日(月曜日)

2573.キーパー エピソード(2)普通の人は、車を離れて見る

ガソリンスタンドが始まるまでは、
その店に来るお客様は、
雑誌広告などを見て、わざわざ来てくれた少数の「マニアックな人」だけだった。
しかし、ガソリンスタンドを始めてからは、
ガソリンを入れに「普通の人」がいっぱい来て、
そんな普通の人にも、私たちは特殊な技術とコーティングを熱心に説明して、
ずいぶんたくさんの人に買っていただいた。
そこでびっくりしたのは、
普通の人は、マニアックな人とはまったく違う反応をしたことだ。

 

何時間もの手間をかけて仕上げた「鏡面研磨とコーティング」は、
それこそ新車以上に表面が平らであり鏡のようなツヤになっている。
だから、仕上がったお車を引き渡す時、
マニアックな人は、
その表面に、顔を30cmくらいにまで近づけて、目を見開き、
斜めに見たり、上から見たり、横から見たり、
惚れ惚れと鏡面になった我が車を、文字通り舐めるように見て、
「おーっ、スッゲー、傷ひとつないじゃん、ビカビカじゃん・・・」と、
感動してくれるのが普通だった。

 

しかし、「普通の人」は、
鏡面状態に仕上がったお車を引き渡す時、
「仕上がり具合はいかがですか、・・」と、誇らしげにお見せすると、
1mくらい離れたところから、
「オー、きれいになったね。自分の車じゃないみたいだ。」
と喜んでくれるのだが、マニアックな人のように舐めるようには見ない。

 

「この鏡のようになった塗装の表面をご確認ください。」と誘うのだが、
マニアックな人のように顔を塗装に近づけようとはしない。
むしろ、もっと離れていって、車全体を見ようとする。
2m以上離れて、車全体を見て「なるほど鏡みたいな艶だね。いいねー。」と言う。

 

それこそ涙ぐましい努力で磨き上げた鏡面の塗装は、
顔を思いっきり近づけて、いろいろな角度で見て、初めてその真価が分かる。
なのに、普通の人は顔を近づけるどころか、むしろ離れて車全体を見ようとする。

 

最初は「素人」にはわからないだろうな。などと思ったが、
考えてみればお客様とはまさしく素人であって、プロではない。
だからお客様なのだ。
プロ、あるいは玄人はだしのマニアックな人にしか分からないような商品を、
自慢げに作っている自分たちは、自己満足の世界にはまり込んでいるのではないか。
ほんの一部の人達にしか分かっていただけない商品を、
ほんの一部の人に販売していくことが私たちの望んでいたことか。

 

車に乗っているほぼすべての人は「素人」「普通の人」。
その多くの人達に喜んでいただき、分かっていただける物でなければ、
私たちも、お客様も楽しくない。
だから事業も広がらないし、続かないと思った。
一部のマニアックな人達だけに理解いただいて満足しているのは、
それは趣味の世界のことであり、一般のビジネスではないと思った。

 

きれいになった車を離れて見る人、
つまり普通の人達のために、
いままでの技術と、知識を活かして、私たちは何が出来るか、

 

それがキーパーのテーマとなった。

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