谷 好通コラム

2010年11月13日(土曜日)

2655.見据えるところを変える、目線を変える

今日と明日、仙台SUGOで今年最後のレースだ。
今まで何回かは二位になったことはあったが、
まだ一度もレースで優勝をしたことがない。
だから、今度こそ「死ぬ気でがんばって」何とか優勝しようと思って仙台に来た。

 

今日土曜日は練習日。
ゴルフGTIカップとしてコース専有枠の練習が30分の一本。
一般として練習できる走行枠が5本くらいあったので、
今日は、ぜひ30分を三本は練習しようと思って張り切ってやってきた。
体力を考えていつもは前日二本の練習が多かったが、
今回はそんなことは言ってられない。
「死ぬ気でがんばるのだ」
(キーパー選手権全国1位のオレンジ石油店長の言葉に影響されている)

 

まず、午前中に一本。
三ヶ月のブランクがあったので、最初は走行感覚を取り戻すためにゆっくりと。
何周目からとりあえず全力で走って、
1本目は、1分46秒4がベストラップであった。
去年の私のベストラップに近い。
まずまず順調だ。
コーナーで後輪が気持ちよく流れてくれて思ったように走れた。
旋回スピードもまあまあ早く、まだ余裕がある。
タイヤも前回の富士スピードウェーのレース本番で使ったタイヤなので、
新品タイヤを使えば確実にもっとタイムは上がるはずだ、

 

この分なら、
予選トップのタイムであろう1分44秒台も可能性は十分だ、
そう思い、二本目は前輪だけ新品タイヤにして、
(レースカーであるゴルフGTIはF.F.なので前輪がよく減る)
予選アタックの練習をすることにした。

 

予選は、まだタイヤが減っていない2周目、3周目が勝負だ。
(1周目はタイヤがまだ温まっていない)

 

二本目の走行にコースに入ったところで、
前にライバルの倉持選手の車が走っている。
彼はただいまシリーズランキング3位で、2位の私とほとんどポイント差がなく、
私と必ず厳しい争いになるはずだ。
ちょうどいいと思って、1周目から彼を追うことにした。
半周ほど走ってタイヤが温まってきた頃、
彼のペースが上がっていき、それでも楽についていくことは出来た。

 

最終コーナー。
ここを如何に高速で抜けられるかでストレートでのスピードが決まる。
大きなコーナーなので、コーナリング中はアクセル全開だ。
ギヤも4速なので140~150km/hは出ているだろう。
じわっとだが倉持選手の車に近づいていく。
「おっ、いいじゃん」なんて思ったとたん、
後輪がGに耐え切れずスッと外側に滑った。
まだタイヤが温まりきっていなかったのかもしれない。

 

それでも何とかコントロールできそうな感じ。
車はコースに対して外側に45゜位にまで斜めになりながら、
それでもカウンターを当てながら、アクセルを入れると、
今度はスパッと反対のイン側に車が振れた。
「あっ、やっちゃったかな」と思った。

 

コーナーでのスピンは外側に飛び出しても、
エスケープゾーンがあるので大したことになることはほとんどなく、
逆にインに巻くと、内側のカードレールに激突して車が壊れることが多い。
私もこのSUGOのSPコーナーでイン巻きをやり、車の右半分を壊したことがある。

 

しかし今回はコントロールできて、
コーナー内側のガードレールに車の右後ろの角が軽く接触しただけでコースに戻れた。
だからそのまま走り続けられたくらいだ。

 

しかし、かなり“びびった”。

 

このことで私の中の何かが狂ってしまったようだ。

 

一度ピットインして壊れた右リアランプをテープで応急修理して、
すぐコースに戻り、この悪い感触を吹っ切ろうと思ったが、
何周走っても、タイムが出ない。
1分48秒台から50秒台。
1本目の時より、2秒から4秒も遅くなってしまっているのだ。

 

悪いイメージを払拭しようとかなり攻撃的にコーナーを攻めるのだが、
まったく旋回スピードが上がらない。
コーナーをよっこらしょと回っている感じで、
コーナーからの脱出スピードがまったく遅い。
自分でもどうなってしまったのか訳が解らない。

 

そのまま、二本目の走行が終わって、
ピットで、私は憂鬱であった。
昼飯を食べながらも、憂鬱であった。
せっかく死ぬ気でがんばろうと思ってきたのに、
頭の中の何かが狂って、遅いモードで入ってしまっているようだ。
そこからどうやって抜け出せばいいのか、さっぱり解らない。

 

 

昼飯を食べながら、畠中君がこんなことを言った。
「シートの位置を思い切って変えたらどうですか。
私も昔、それで解消出来たことがあります。」

 

なるほどなと思った。
頭の中の走行感覚がおかしくなったら、自分の位置を変えて、
見え方と、操作の感じを変えて走ってみるのはいい手だ。

 

それで、シートの位置を1クリック前に出して、
ハンドルを少し上に上げて、
予備のめがねに掛け代えた。

 

そして、コースに出る前のピットレーンで、
「遠くだ。遠くを見る。遠くを見ろ。遠く、遠く。遠くを見るんだ。」と、
大きな声で叫びながらコースインし、
コースに入って走り始めてからも同じように「遠くを見ろ。」と、
自分に対して叫び続けた。

 

コーナーに入る時、旋回している時、抜ける時、
すぐ近くを見ていると、
コーナーを、進入から旋回、脱出の一連として見られなくなり、
縮こまったコーナリングになる。
だから、コーナーに進入する時点でコーナーの中のクリッピングポイントを見て、
クリップにつく頃には、コーナー脱出の方向を見ながら走る。
コーナーを脱出する時は、コーナーの先で車が膨らんでいくべきポイントを見て、
そこへ向かって走っていくのが、正しいコーナリングなのだ。
コーナーの一つ一つのポイントでその先の方、つまり遠くの方を見なくてはならない。

 

「遠くを見ろっ」と、ヘルメットの中で叫びながらコースを走る。
すると、何周目かから1分46秒台が出た。
効果てき面である。

 

そのまま何周も1分46秒台でコンスタントに走り、
三本目を終えた。

 

二本目の一周目、
最終コーナーで小さなミスをしてすっかりびびった悪いイメージは、
どうやら吹っ切れたようだ。

 

今日の練習日、
一本目から順にタイムを上げていって、
明日の予選の練習までしようと思った目論見ははずれたが、
とりあえず狂った感覚で悪いイメージを明日まで引きずることだけは解決できた。

 

 

自分の視点を、
いつも遠くに置いておかなくてはならないのは、
事業でもまったく同じだ。
明日の事、来週の事、来月の事だけをいつも考えていては、
事業のあるべき方向はまったく見えない。

 

高い目標を掲げなければ、高い成果も得られないことにも似ている。
これも全国1位のオレンジ石油の若い店長が、
私の「ほかの店舗と何が違うんですか?」の質問に、
「モチベーションが違います。見据えているところが違うんですよ。」と答えていた。
これは、過剰な自信の言葉ではない。
ほかの店の人もみんなそれぞれ
持っている力は大きく変わるものではないが、
何をすべきか、何が出来るのか、何をしたいのか、
自分自身として見据えているところを高く持つ。
そこがはっきりて違うという意味である。

 

何をしっかり見ていくかで、
何が出来るのかが変わる。

 

明日のことも考えなければならない。
来週の事、来月のことも考えなければならない。
しかし、遠く先のことも良く考え、
それをいつも思考の中心においておかなければ、
ただ単にその時を営業しているだけで、
変わっていく時代の流れも感じず、先にどうなるかわからない会社になる。

 

そんなことも考えた一日でした。

 

 

練習の合間に、みんなでリラックスのひととき。

 

 

仙台はもう紅葉の真っ盛りでした。

 

 

畠中君が乗る№25ゴルフⅥのギヤが調子よくない。
COXさんも夜まで修復に付き合ってくれたが、
不安要素が大きく残ったままで、明日の予選と本番になる。

 

 

そうは言っても、とりあえず恒例の優勝”前”祝いで名物「あんこう鍋」
畠中君のお姉さんと小林君が入籍して晴れて夫婦になった。
そのお祝いでもある。
左が弟の畠中修。右がお兄ちゃんになった小林君。

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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