谷 好通コラム

2010年11月19日(金曜日)

2659.あのがさつな小幡君が幸せを見つけたようだ

 

長崎に来ると必ずお会いする人がいる。
洗車機メーカーであるダイフクプラスモア長崎営業所の森所長。
昔から私たちのスタッフも森所長にはずいぶん叱られて、育っている。
ありがたい存在なのだ。

 

その森所長とのたくさんのお話の中で「小幡君」の話が出た。
小幡君は森所長に、
一番たくさん叱られて、一番かわいがられた人間である。
愛知で育って、愛知で働き、17年前、私たちの会社に入社した彼は、
たしか私より一つ上であったので、今は59歳のはずだ。

 

27年前に創業の㈱タニから、
アイ・タック技研㈱が分離して設立されたのが約17年前。
小幡君は一番初期のアイ・タック技研㈱の活動を私たちと共にしたのだ。
と言っても私と弟・清隆と小幡君のたった三人で始めた会社であったが。

 

それからしばらくしてアイ・タック技研㈱が全国展開を始め、
小幡君は九州福岡の担当になって、
仕事が拡大するにつれて忙しくなり福岡に住むことになり、
その頃から彼は森所長に可愛がられ、かつ、よく叱られていた。

 

福岡には元妻と子供を連れて行ったが、
彼は強烈な恐妻家で端から見ていても気の毒なくらいであり、
派手な元妻に比べて彼はいつも極端にお金を持っていず、
ずっと同じ服を着て、みじめであった。

 

しかも、ある不幸な事故を境に、彼は泥沼に落ち、
九州から離して、大阪に勤務させたり、名古屋に戻し、
一度は救い上げたが、なぜかまた、自ら落ちていった。
そして何年か前、
この会社を辞め、大好きな九州に戻っていった。

 

彼を言葉で表現するならば、
「がさつ」「下品」「無教養」「無礼」と続き「ウソつき」「だらしがない」に尽きる。
しかし、
もう一つの表現では、
「働き者」「素直」「純真」「人間好き」「ポジティブ」と続き
「相手の気持ちの痛みが分かる」
「人の悪口を言わない」「弱音をはかない」「ばれるウソしか言えない」となる。
あえて、彼を一言で表現するなら、
「がさつな純真」とでも言おうか。

 

彼をバカにする人も多かった
彼の言動はあまりにもがさつであり、バカにされても当然なのです。
しかし、なぜか、彼のファンも同じくらい多かった。

 

 

そんな彼が九州に戻ってから
色々ないきさつがあったのち、
たぶん森所長にお世話いただいたのであろう、
長崎のとても良い会社に就職させてもらって、真面目に(がさつに)働き、
何年か後、
元妻との子供がすべて就職したので、
やっと元妻が離婚してくれて自由の身になった。
何十年ぶりに働いたお金が自分の自由になるようになったのだ。

 

そのまた何年か後、
今度はずいぶん年下の女性と結婚したらしい。

 

ここまでは誰かかしらから聞いた話だ。

 

がさつな彼のことなので、
新しい奥さんとかっこいい夫婦をやっているわけではないだろうが、
森所長からこんなことを聞いた。

 

「小幡君は相変わらず(がさつ)なんだけど、
新しい奥さんと気が合うみたいで、彼女をどこへでも連れて行くし
奥さんも小幡君のことが大好きみたいで、どこへ行くにも一緒について来るんだよ。
それも嬉しそうに。
一緒にアパートに住んで、あれで良かったみたいだよ。」

 

私は胸が詰まった。

 

彼は、やっと彼なりの平和を見つけたのだ。
彼のがさつで失敗続きの人生。
働いても、いくら稼いでも、自分はいつもまったくお金の無い人生。
それが、やっと平和を得て、小さな幸せを見つけたようなのだ。

 

嬉しい。心底嬉しい。

 

私は森所長に心の底から感謝した。

 

おばっちゃん。
よかったなぁ。

 

 

10年前の「伝説の小幡」

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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