谷 好通コラム

2010年12月04日(土曜日)

2670.勇気のカタマリのパイロット

札幌千歳空港内のホテルに泊まって、
朝、そのまま千歳⇒青森の飛行機に乗った。
(今は、その青森での仕事を終え、大阪伊丹空港へ飛んでいるところ)

 

千歳から青森の飛行機に乗ったのは、
JALのボンバルディアCR-J-200、
ジェット機ではあるが50人乗り程度の小さな機体だ。
朝の部屋で見たテレビにニュースによると、
北海道沖に台風並みの強い低気圧があり、全国的に荒れた天気になるといっていた。
窓を見るとガラスに雨が吹き付けていて、
外の風の音が不気味に聞こえてくる。
いやな予感である。

 

 

泊まった部屋が448号室。
4.4.4×2.
死、死、死×2、不気味だ。
なんて、そんなことは別に気にしない。
千歳⇒青森は、
ダイヤ上では45分になっているが、
空港での地上の移動も入っているので、
飛び上がってから降りるまでの実質の飛行時間はたった30分である。
短い時間の飛行なので、上空5,000mまでにしか上がらないが、
それでも10分近く上昇して、5分間水平飛行し、15分間かけて降下着陸する。

 

飛行機の危険な時間は、飛んでから最初の10分間と最後の15分間で、
このわずか25分の間に起きた航空事故が、
すべての航空事故全体の80%以上を占めているのだそうだ。

 

それに小型機は強風に比較的弱い。

 

飛行機に乗る前に「条件付運行」を告げるアナウンスが何度も入った。
「この飛行機は青森空港が天候不順のため着陸できない場合は、
千歳空港に引き返すか、秋田空港に着陸することがあります。
それをご承知置きの上、お乗りいただきますようお願いします。」
青森に着陸できず、
千歳空港・秋田空港のいずれかに降りるかもしれないということを
前もって通告し、条件を付けた運行であるということだ。

 

こういうことは今までも何度もあった。
年に三四度はある。
台風とか雪のシーズンになると、必ずこういうことが起きるが、
実際に引き返して目的地以外の空港で降ろされたことはまだ一度もない。

 

 

ただ、昔、名古屋から沖縄に飛んだ時、
沖縄上空まで来て一度着陸を試みてから天候が悪くて降りられず、
一度、鹿児島空港まで戻って着陸し
そのまま機内に2時間ほど缶詰になった挙句、
もう一度沖縄まで飛んで行き、
上空で「天候調査」という名の旋回待機をしてから、
やっと着陸したという経験はある。

 

もう一度も昔、
フォッカー50の「小牧⇒富山」のNAL便があったころ、
吹雪の富山空港に一度着陸を試みて、
視界不良で着陸寸前でを断念し、
フルスロットルで急上昇で上空に昇って
上空で「天候調査」のグルグル旋回を30分ほどしてから、
もう一度着陸態勢になって、今度はやっと着陸をしたという経験がある。

 

たしかこの二回だけである。
もっと有ったような気もするが、この二回しか思い出せない。
平常な着陸ではなかったがそれでも結局目的地には着いている。
私はたぶん飛行機にはもう千回以上も乗っているはずなので、
確率から考えると、私はかなりラッキーだったのだろう。

 

 

しかし今日は、妙な予感がしたので、
「そんな無理するなら素直に欠航すればいいのに」とかぶつぶつ言いながら、
小さなジェット機ボンバルディアCR-J-200に乗った。

 

千歳空港はかなりの強風で、
雨は強くはないが横殴りであった。

 

飛行機に乗って、こんなに心臓がドキドキしたのは初めてかもしれない。

 

小型ジェットCR-J-200は軽量を利して鋭い加速で離陸した。
車輪が滑走路から離れた瞬間から、
強い風にあおられて翼を大きく左右に振る。
スリル満点の離陸である。
上昇中も小刻みに揺れ続けると同時に時には大きく揺れて、
5,000m上空に上がってからもまったく同じように揺れ続ける。

 

機長から機内放送が入る。
あくまでも平静な声と口調で、

 

「本日はJAL・・をご利用いただきまして・・・・・・
あいにく大気がひどく不安定ですので、揺れが続いています。
青森上空に行きますともっと大気の状態が悪くなり、
この前に青森に着陸予定であった飛行機が、引き返したとの情報が入っています。
当機も青森空港に向けて着陸を試み、
危険と判断しましたら、着陸を断念して
千歳空港に引き返すか秋田空港に向かうかを検討します。」

 

こんなセリフを、揺れが大きく続いている小型ジェット機の中で聞くと、
たいした迫力なのです。
ドキドキします。
心の中で、つぶやいた。
「そうだ、ちょっとでも危険だと思ったら着陸はやめよう。勇気なんて別にいらんぞ」

 

飛行機に乗ることに関してはかなりのベテランであるつもりの私が、
こんなにビビッているのに、
隣のオッサンは、どんな揺れてもずっと寝ている。
口をだらしなく開けて寝続けている。
大物なのか、ボケなのか。腹が立ってくる。

 

着陸はダイナミックであった。
前後左右に機体をあおりながら降りていくのは、
迫力とか、ダイナミックとか、スリリングとか、そんなものではなく、
ただ、ドキドキドキドキで、
いつフルスロットルにして急上昇するか、ハラハラするうちに
滑走路が見えて、かなり、かなり強引に着陸した。

 

タッチダウンした瞬間、
客室乗務員さんが「ふーっ」と大きなため息をついたのが見えた。
彼女も怖かったのだろうと思った。

 

勇気なんかいらんと言ったのに、
パイロットは勇気のカタマリの人であったようだ。

 

 

こんな中を降りていったのだ。

 

 

ちなみにこの日、青森空港で落ち合った開発の増田課長は、
東京から飛行機でやっていたのだが、
同じように激しく飛行機が揺れたと言っていた。
しかし「ほとんどずっと寝ていたので、あまり分かりませんでした。」とも言う。

 

増田課長は自ら称するように「大器晩成」の大物なのか、
あるいはあのオッサンのように・・・なのか。
・・・・
・・・
たぶん大物なのだろう。たぶん。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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