谷 好通コラム

2011年04月12日(火曜日)

2762.人間はひとのためなら強くなれる

今、札幌・千歳行きの飛行機に乗っている。
札幌店はいよいよ春を迎えて、ここから何ヶ月か一番忙しい時期がやってくる。
雪がまだ残っているうちは洗車をしてもすぐに汚れてしまうので
春になって雪が解け、道路が乾いてくる頃になると
札幌店には、コーティング、洗車、鈑金塗装といっぱいの来店がある。
その激励の意味もあって札幌に飛んでいる。

 

昨日のニュースで、
福島県の飯舘村と川俣町の一部が「計画避難」の地域に入ったことを知った。

 

二週間前に川俣町に行った時は、
川俣町の町長さんは「風評被害で困っている。」と言い、
「放射能を除去する機械を借りたことが知れると、
いかにもこの町に放射能があるように思われてしまうかもしれないが、
万が一の、念には念を入れて設置するだけだから。」と
力を入れていらっしゃった。
飯舘村の菅野村長は、
IAEAが日本政府に対して飯舘村を避難させるべきと発表した時に、
携帯電話で、
「全然関係ありませんっ。」ときっぱりとおっしゃっていた。

 

この両方の地域は地盤が良いらしく、
M9の地震があっても家屋の倒壊などの被害はほとんど無く、
一見して、平和で素晴らしいところであった。

 

風評被害で物資が入ってこないことを除いたら、
いたって平和で静かな町であった。
だから、目に見えない放射能が町を汚染しつつあると言われても、
全くその実感はないだろうから、
この平野で静かな生活を、一時的であれ捨てて、
他の地へ避難することは、まったくもって悔しいことであろう。
避難するとなったら、
飯舘村名産の飯舘牛はどうなるのだろう。
すでに村そのものが汚染の風評になっているので、
肉として販売することも出来ないかもしれないし、どこかへ連れて行くには大変だ。
原発から20km圏内の町や村は緊急の避難であったので、
牛たち家畜はそのままにして出てきており、すでに飢餓状態であるらしい。
あるいは町に出てさまよっている牛や犬がいるとも聞いた。
また、丹精込めて造った田畑はどうなるのだろうか。
いったん避難したら元に戻れるのだろうか。
また帰って来れるのだろうか。
助け合って生きてきた村や町の人達がばらばらになるのは本当につらいだろう。

 

平和で素晴らしい田舎であった所が、
ゴーストタウンのようになってしまうのは想像するだけで苦しい。
飯舘村のみなさんや川俣町のみなさんの心中は察するに余りあるものがある。

 

 

両町村に設置した純水生成機ROは、
いずれは引き上げなければならないのかもしれないが、
設置した弊社仙台営業所の澤田君から、
昨日の深夜、1時過ぎ、こんなメールが入った。

 

「お疲れ様です。
飯舘村・川俣町の一部(おそらく山木屋地区)へ、計画的避難指示が
出される様ですが、ROの回収についてはどの様な対応が望ましいでしょうか?

 

私の考えと致しましては、一度に全数の回収が叶う事が理想ですが、
避難されるまではROを使用されると思いますので、
RO設置施設の避難の状況に合わせての回収を行いたいと考えております。
避難指示地域内での作業につきましては、一時的な出入りですので
全く抵抗はありません。
指示による行動と言う形ではなく、自分の意志で上記の対応を
考えておりますが、宜しいでしょうか?」

 

不覚にも涙が出てしまった。

 

「人間は他人(ひと)のためになら強くなれる。」
何かで読んだことのあるこの言葉、
本当にそうだと思った。

 

自分の好きなように、自分勝手に、
自分のためだけを考える者は、
人には厳しくなれても、自分に厳しくはなれない。
自分には甘いのに人に厳しい者は、いくらでも残酷になれる。
自分には甘いので、実は弱い。
自分のためには強くなれない。
人間は自分のためには強くなれないが、残酷にはなれる。

 

しかし、
人間はひとのためになら強くなれるし、やさしくもなれる。

 

そういうものだなと思った。
そのほうが絶対に幸せだと思う。
私もそんな生き方が出来たら、本当に幸せだろうなと思う。

 

 

そろそろ着陸態勢に入った。
あと数分でPCをしまわなくてはならない。

 

中部空港を飛び立ってしばらく、
うっすらともやがかかった富士山が見えた。
私の目にははっきりと見えた。

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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