谷 好通コラム

2012年01月30日(月曜日)

2964.敵は五百人か、五千人か、二万人か

戦国時代。
我が陣営の兵は五千人。
精鋭ではないが、いずれも並以上の力は持っている。
なかなかの力を持った五千人の兵隊たち。
絶対に負けられない戦(いくさ)を迎えている。

 

敵は「丘の向こう」にいて見えず、兵が何人いるかもわからない。

 

敵がどれくらいなのか分からなければ戦(いくさ)は出来ないので、
偵察兵を丘に向かわせた。

 

丘のてっぺんに偵察の兵がたどり着いた時、
丘の向こうから土煙が上がった。

 

敵が一斉に攻めてきたのかもしれない。
丘のこちら側に陣取る我々にもその土煙は見えた。

 

我が陣営の将兵が、
丘のてっぺんにいる偵察兵に、手旗で『敵は何人いるのか?』と聞いた。

 

そのころ偵察兵は完全にビビッていた。
目の前に敵の大群が猛然と土煙を上げながら自分の方に押し寄せてくる。
うろたえビビッて、土煙もひどくて、敵が何人いるのかサッパリ分からない。

 

偵察兵は『たくさんだ。』と、手旗で、味方に伝えた。

 

将兵は「たくさん? それじゃサッパリ分からん」とつぶやき、
手旗で、『何人なんだ? はっきり言わないと、殺すぞ!』と信号を送る。

 

偵察兵は「殺すって? かんべんしてくれよ」とつぶやき、
適当に『五百人だっ』と手旗で送った。

 

五百人とは、偵察兵の“たくさん”の思いつきの数であって、
数えたわけでもなんでもない。
とにかく数を言わないと殺されるかもしれないので、適当に思いついた数であった

 

それを見た大将は、
「なんだ、たった五百人か。こっちは五千人。全軍を動かすまでもない。」
「おい、千五百人の兵を前進させて、三倍の兵でこっぱみじんに打ち破ってこい。」
側近の将兵を先頭に、
千五百人の兵隊を丘に向けて突撃させた。

 

しかし、敵は五千人いたのだ!

 

五千人の敵に向かった千五百人の我が軍は、
三倍以上の数の差には勝てず、まもなく負けた。よってたかって殺され全滅だ。

 

敵はほとんど無傷。
敵兵は四千八百人が残り、
丘のこちら側に残っている三千五百人の我が陣営に突撃してきた。

 

四千八百人 対 三千五百人の戦いで、
我が陣営は、健闘するも、やがて、押され始め、敗退した。

 

これが五千人 対 五千人の戦いだったら数の上で互角の戦いであり、
我が軍にも十分に勝ち目はあったはずだった。

 

しかし偵察兵がビビッて“分からないのに”、殺されるのが怖くて、
適当に『五百人だ』と答えてしまったばかりに、
我が軍は一部の千五百人の兵隊に分割して、
五千人の敵にぶつけてしまったのだ。
その結果、
敵にほとんど傷を与えないまま千五百人の兵を全滅させてしまった。
残った三千五百人の兵で、
四千八百人の敵と戦わざるを得なくなった我が軍は、
健闘するのが精一杯で、当然、負けた。

 

 

偵察兵が、あの敵の数が“分からない”状況の中で、
本当に『分からない』と答えていたら、
我が軍は数が分からない敵に、
軍を分割する事はなかっただろう。
分からないのだから、全軍を突撃させて、
五千人対五千人の対等の戦いを繰り広げ、いくつかの幸運があれば勝てたかも知れない。

 

“分からない”のに、ビビッて適当に答えてしまったばかりに、
大将の判断を誤らせて、千五百人を無駄死にさせてしまった。
その結果、三千五百人に減らしてしまった兵隊で五千人の敵と戦い、負けた。

 

 

逆に、
あの時、
偵察兵が「二万人だっ!」と適当に答えていたら、
大将は「二万人の敵にはとてもかなわない。逃げろっ!」と撤退してしまっただろう。
そして、
この先の戦いに必要な「陣地」を我が軍は戦わずして失い、
同じく戦わずして無傷で「陣地」を得た敵を、
この先の戦いを有利に進めさせ、
最後には勝たせることになってしまっただろう。

 

 

“たとえ”が、血なまぐさくて恐縮だが、
思いついた“たとえ”が、たまたま戦国時代の戦(いくさ)だったので、
そのまま書いてしまった。

 

 

「分からないこと」を、
「分からない」と答えると
叱られるのが嫌だったり、恥をかくのが嫌だったりで
「分からない」と答えず、
「適当なこと」を、
あたかも「分かっているように答えてしまう」と、
その情報によって行動した者は、必ず、負ける。あるいは失敗する。

 

身内からの間違った情報は、
それが身内から出たからこそ正否が問われることもなく、見破れない。

 

身中の敵とは、まさに、
身内が、自分の“叱られる”とか“恥をかく”とかの自分勝手な都合で、
適当な情報を流すことにあるのではないだろうか。
これを身内に発信されると、戦いは必ず負ける。

 

現代のビジネスの世界でも必ず負ける。
これは間違いなく負ける。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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