谷 好通コラム

2012年02月12日(日曜日)

2973.競争の中で競ったものこそが強くなる

競うことなく守られていると、人間は弱くなるものだ。
人間とは競うことで強くなるのだと思う。

 

生物の世界では、
そこに棲む生物にとって
生存競争が厳しい環境であればあるほど進化が促進されるそうだ。

 

製造の産業の世界でも、
需要が大きい業界には、たくさんの優秀な参入者が集まり、
競争が激しくなるので、機能の進化が激しく、コストダウンも急で、
その進化についていけなければ、
すぐに新たなニーズに対応できず、
負けるのも早い。
薄型テレビしかり、デジタルカメラしかり、携帯電話しかり、
その進化ぶりはすさまじいものがある。

 

激しい進化を求められる乗用車製造の世界でもしかりだ。

 

 

しかし共産主義下での経済は、
富はあくまでも平等に配分され、
実績を上げても勲章という名誉を与えられるだけなので、
誰も競わず、その経済はまったく発展しなかった。
たとえば、
ソビエト時代の東ドイツの乗用車の代表は「トラバント」という小型自動車で
2サイクルエンジンと、
ボール紙に樹脂をしみこませたチャチなボディを持つおもちゃのような車であったが、
何十年間も改良もモデルチェンジもなく独占的に造り続けられた。

 

 

西ドイツの自動車メーカーは
激しい競争の中で目覚しい発展を遂げ世界でもっとも強くなったが、
独占的に与えられた無競争の中で守られて
何十年間もまったく進化せずとも東側社会の中に存在し続けられたトラバントは、
冷戦が終わると共に競争の中に投げ出され、あっという間に無くなった。
独占的に守られた競争なき鎖国マーケットでは、
製造者も進化する必要がないので全く進化せず、製品はどんどん陳腐化する

 

しかし、同じ共産国家の中でも、
軍事の面では、東側は西側との生死をかけた競争の中で、
すさまじいばかり発展を遂げ、
西側の軍備に引けを取らない性能を持っている。
たとえば、
旧東側の時代に開発されはじめたソ連の戦闘機SU-27からSU-34のシリーズは、
同時代のアメリカのF14トムキャット.F15イーグル. F16ファルコン、
フランスのミラージュF1・2000などと同じ
第4世代と呼ばれる戦闘機であるが、
SU-27は「プガチョフ コブラ」など西側の戦闘機では真似できない荒業が出来、
その強大な格闘性と、長大な航続距離ではアメリカ機を圧倒している。
しかし電子機器や早期警戒機との共同体制ではアメリカに大きく遅れを取っているが、
少なくとも格闘戦になったら、
Su-27~34は西側最強のF15に勝つ確率が低くないと言われている。

 

 

東側の軍備は数ばかりで性能としては劣っているというのが一般的な認識だが、
それはソ連が経済的に厳しくなってきたからのことで、
軍事戦略として単体としての性能よりも数が物を言う種類の分野のことで、
昔の戦車や戦闘機など単体としての性能において勝っている分野もあるのだ。

 

ソ連時代から軍事の分野では他国との深刻な競争がいつもあり、
国内でも「戦闘機部門」では
「ミコヤン」と、「スホーイ」「ヤコブレフ」がソ連内で競ってきたし、
「輸送機部門」「爆撃機」「旅客機」など大型機の分野では
「アントノフ」、「イリューシン」、「ツポレフ」が常に競ってきた。

 

しかし鎖国経済の中で他国と競う必要のない「乗用車」の分野では、
「トラバント」が何十年もそのままの姿で無競争の中に生き続けた。

 

同じ体制の国家の中でも、
激しく進化して高い競争力を持つ分野と、
守られて弱くなっている分野があるようだ。

 

だからなのか、中国は鎖国を破り経済を開放しほとんど自由経済にしたら、
それまでは「人民」としてひとくくりで扱われていた人々が、
一人一人が競争し、競って富を求め、
世界が全く経験したことのない奇跡的な進化と成長を果たした。
と同時に、莫大な費用を投じて軍事面においても急激に進化している。
すでに「量」においては当然だが、「質」においても日本を凌駕し始めている。

 

日本には厳しい競争によって進化し、
今も進化し続けている分野はやはり「ソフト」を含めた「技術力」であろう。
また、日本独自の感性を活かした「サービス」の分野であろうとも思う。

 

日本には労働者が少なく、
特に中国や東南アジアのような安い労働力は無い。
資源も無い。もちろん軍事力も低く、交渉能力も低い。
しかし、いまだに高い水準の「技術力」と、
安定した高品質を生む品質管理の「ソフト」と「まじめさ」、
日本人独特の感性、やさしさから生まれる質の高い「サービス」。
これらを活かした競争力はいまだに十分世界に勝てる分野ではないだろうか。

 

日本の強みがそこにあるならば、
日本が世界の中で生き残っていくために、
その強みを活かした戦略を進めることが、勝つための条件ではないだろうか。
残念ながら国に手厚く守られ続けた故郷としての農業には競争力がなくなっている。
守るから進化が滞り競争力が落ちるのでないか。

 

しかし日本の農産物はその品質と味、
特に安全性において中国でも人気がある。
上海から頼さんが日本にやってくると必ず子供用にミルクを買っていった。
半端な量ではなく、文字通り抱えきれないほどのミルクを買っていった。
国民総ダイエットの日本では牛乳の消費量が激減して、
酪農が衰退するばかりだが、
その品質においては十分に競争力があるのだから、保護を求めるのではなく、
高品質ミルクとして積極的に輸出すればいいのにと思うことがある。
農業も、安全と品質と味に特化した農産物として
輸出に積極的に力を入れるべきではないだろうか。

 

世界最大の食の需要地である中国は工業の発展を優先したので、
海も川も汚れ、近海での漁獲量は減っているそうだ。
樹木の伐採も激しく、国土の砂漠化が急速に進み、
農業の近代化の遅れと同時に収穫に減少の不安がある。
それに品質においての競争が無かったので、特に安全性において不安がぬぐえない。

 

農産物、酪農製品、漁獲物の世界最大のマーケットがすぐそこにあり、
地理的にも日本は最適の場所にある。
輸入規制で守られ、競争を避ける方向ではなく、
積極的に品質と安全性、味で競争を仕掛けていったほうが、
勝つシナリオが書けるのではないだろうか。

 

もちろん工業製品において日本は勝った。
勝ちすぎて、強烈な円高を浴びせられ、今、苦戦をしているが、
いまだに高い水準の「技術力」と、
安定した高品質を生む品質管理の「ソフト」と「まじめさ」、
日本人独特の感性、やさしさから生まれる質の高い「サービス」。
これらを活かした競争力はいまだに十分世界に勝てる分野ではないだろうか。

 

自由な競争にさえ持ち込めれば。

 

競争力とは、自由な競争の中でこそ身についていくものなのだう。

 

 

上海の浦東空港に近い郊外で昼食をしたが、
レストランの外で海産物を売っている露店が出ていた。
管理がされているのかどうかは分からないが、
その素朴な姿に、
私は本当に買って帰りたくなったが、もちろんそんなことは出来ない。
しかし、本当にうまそうだ。
管理された食物ばかりの日本にいると、かえって素朴なものが欲しくなる。
本当にうまそうだった。

 

 

渡り蟹の類だろう。

 

 

信じられないほど安かった「シャコ」

 

 

伊勢海老のようだが、錦海老だろうか。これもうまい。

 

 

左が大きなガチョウの卵で、右が鶏の卵。
断然ガチョウの卵がうまい。

 

 

上空を東方航空のB-737-400が飛んでいった。
B-737はタイヤカバーがなく、脚を引っ込めてもタイヤが下から見える。

 

 

何年か前、刈谷店で保護された野良猫であった「リンちゃん」
君は競争しなくてもいいのだ。可愛いだけで十分なのだ。

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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