谷 好通コラム

2012年08月27日(月曜日)

【本文】一人分の減より、もっと大きな減を造る人

前話の【前文】で、
45口径弾と9mmパラベラム弾の違いは、
その弾丸が敵の兵士に命中したら、
即死状態で殺してしまう率が高いのが45口径弾で、
貫通力が高く比較的大負傷で済むのが9mmパラベラム弾としました。
それを戦術的に見ると、
敵の兵士を一人殺してしまえば、敵の兵力は一人分減るだけだが、
負傷させれば、その兵士が減るだけでなく
負傷兵を治療したり運んだりして助ける兵士が必要になってくるので、
数人分の敵の兵力が減ることになって味方に有利になる。
だから、世界中の軍用銃では9mmパラベラム弾が一般的になった。

と、書きました。

人殺しの道具である拳銃の話を一般に当てはめるのは大変不謹慎ですが、
仕事の上においてこの話自体は当てはまることが多いと思って、
(本文)を書きます。

 

 

仕事の上において、それに従事する人は、
それぞれに別々の性格と価値観を持っています。
しかし仕事の能力という面おいては、
ある程度一次元的に高低の差の判断が出来ます。
能力の低い人は、仕事が遅かったり、品質が低かったりして、
その分だけ仕事全体が遅くなったり、品質が低くなってしまいます。
しかし、人それぞれに能力のばらつきはあるわけですので、
そこは、みんなで補い合って仕事をしていけば何とかなります。
能力の低い人も、
それはまだ経験が少なかったりの理由があるので、
みんなが助け合っていけば、いずれはその人も仕事を習熟して、
能力が高まり、助けられる側から助ける側に廻るでしょう。

 

こういう事は新人が入ってくれば、
いつものように当たり前にあります。
みんなで助け合ったりするので、かえって職場はいつも明るく、
仕事もスムーズで効率も上がります。
能力が足りなかったら、みんなで補えばいいだけです。

 

しかし、
たとえば、
何をやっても不平不満を言い続ける人もいます。
みんなと同じことをやっていても、
何かにつけて不平不満を持って態度にあらわにして、
そのくせ自分は何かにつけて楽な仕事をしています。
それを誰も注意できません。
下手に言うとその人に何を言われるか分からないからです。
こういう人が仕事の集団の中にいると、
雰囲気が暗く重くなって、
職場全体に覇気が無くなり、
ミスが続出したり仕事全体のスピードが落ちたり、大変苦労する事になります。
周りに負の影響を撒き散らす人は、数は少ないですが、います。
負のオーラを出す人は周りの人の力を吸い取るように、
全体の力を落とします。
こんな場合には、
改善でその人の不平不満を解消する努力をしても、
次から次へと不平不満の種を引っ張り出してくるので
切がありませんから、
どこかで見切りをつけてキチンと正式に退職勧告をします。
変な理由をこじつけたり、遠まわしに言ったりせず、キチンと勧告します。

 

この場合はむしろ単純です。同じ職場の人も納得します。
その人が去った後の職場は、
びっくりするほどその瞬間から、
元の明るくみんなが助け合って働ける職場に戻ります。
今までのあの重苦しい雰囲気は何だったのだろうかと不思議になるほど、
瞬間的に元に戻ります。
その人がいなくなったことで仕事をする手としての人の数は減りますが、
その人の出す負の力で奪われていたみんなの力が戻りますので、
仕事はうんとはかどります。
いなくなっていただくことが、みんなにとって最善である人もいます。

 

 

 

あるいはもう一つの例で、
本人もやる気があって、悪気もなく、能力も人並みにあるのに、
仕事において、
何事についても不正確な人がいます。
たとえば、
○■▲×●◎を、
自分の思い込みで○■▼×●◎と誤認して上司に伝え、
伝えられた上司は、当然○■▼×●◎として仕事をするので
見事に失敗し、事の重大さをその人に文句を言っても、
「ちょっと間違えた」という単純なミスとして、
事の重大さを理解しないまま、自分の中に飲み込んでしまう。
それがどんな大きな損失を発生する重大な過失でも、
○■▲×●◎を、
○■▼×●◎とちょっとだけ間違えたとしか認識されない。
これはちょっとしたことのように見えて、
実は、大変恐しいことで、
その人の言葉を、
常に誤認の可能性がある言葉として聞かねばならず、
余分な仕事として、事前の確認をその人以外の人に行ったりして、
倍の手間と神経を使わなければならない。
それをしても、なお残る「あの人のいった事、本当かな?大丈夫かな?」の
不安と、恐怖を持ってする仕事は、
あまりうまく行かないことのほうが多い。
本人も自らが持っている不確実性を知っていても、
これは本人に悪気があるわけではないので、繰り返されることが多い。
この場合の対処方法は実に難しい。
悪い事をしたわけでなく、ちょっと間違えてしまっているだけなので。
変わることは、無く、これが続くと、いつも爆弾を抱え続けるようなもので
いつか本当に致命傷になりかねない。

 

 

また、たとえば、
Aさんの場合。
Bさんから、Aさんの部署の人、
あるいは関係者のみんなに
ある禁止事を伝えて欲しいつもりで、
Aさんにその禁止事を伝えたとするが、
Aさんは、自分が守るべき禁止事と思ったのか、
その伝えられた禁止事を誰にも伝えず、
Aさんの部署の人や関係者がBさんの前で平気でその禁止事を破ってしまった。
Bさんは、「この会社の人たちは何という人たちだ。」
「Aさんにちゃんと言ったのに、
皆さん、私の目の前で平気で禁止事を破る。この会社はダメだな。」
と思ってしまった。
でもAさんは、
Bさんから言われた禁止事を、
自分は破らなかったので、別に平気だった。
しかしこの事で、会社は信用を大きく失ってしまい、
この後の仕事はまったくうまく行かなくなってしまった。
もちろん、Aさんは、それが自分のせいだとは気がついていない。

 

中間管理職の人で、情報を止めてしまう人は多い。

 

外からの情報を社内に伝えず、
会社からの指示であったり情報を部下に伝えなかったり、
部下からの情報を上司、あるいは会社に伝えなかったりで、
基本的な報告・連絡・相談の意味をまったく理解していない人がいる。
単なる能力の問題でなく、ある意味、価値観の問題でもあります。
たとえば、
外からの相談を、自分で解決できると思って、
相談すべき人に相談せず、自分で勝手に間違った解決法を伝え、
それがトラブルの元になって、
おおごとになってから、初めて事の重大性に気がつく人がいる。
なぜ相談しなかったか
「相談するとそれくらい自分で判断せよとバカにされるのが情けないから」
これは「自分が恥をかきたくない」という自分勝手な価値観です。
しかし事の重大性に気がついて、強く後悔し、反省できる人は、
その価値観を修正できる可能性が残っています。
何度も同じ事を繰り返すかもしれませんが、
繰り返すたびに後悔し、反省し、懲りているうちに修正されることもあります。

 

始末が悪いのは、
もっと根の深いところで自分を軸とした価値観をもっている人で、
そういう人は、人から伝えられた事は、自分に伝えられた事であって、
それを誰か他の人に、報告したり連絡したり相談するべき事であるとは
ずっと気がつかない人がいることです。
悪げなく嘘をつく人も同じです。
そういう意味では、組織にとって危険人物であるといえます。

 

 

非人間的な戦争では、
兵士を殺して一人分の兵力を減らすより、
兵士を負傷させて、敵により多くの手をかけさせた方が、
戦術的に敵の兵力をより多く減らし、味方にとって有利であるとあった。
それが、9mmパラベラム弾が軍の制式になっている理由の一つだとも。
それでも負傷兵は助けるべきであることに変わりはない。

 

 

しかし、
平和な仕事をする会社においては、
組織の中に、
その人一人分の力が減ったとしても、
その人によって起きるマイナス面を、
いつも他の人がカバーするために、余分な労力を必要とする場合、
比較する例は悪いが、その人には、
いなくなっていただくことが最善であることに通じるのではないだろうか。

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    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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