谷 好通コラム

2013年11月12日(火曜日)

11.12.初めて何事もなく無事に終わったインタープロトの練習

昨日、取締役会と役員会が終わってから、夜、富士に走って、
今日の朝一番からの走行枠で、インタープロトの練習をしてきました。
インタープロトは本当に本格的なレース用の車です。
1,100kg足らずの車重に345馬力のエンジンをミッドシップに積んで、
フォーミュラに使われているシャーシと足回りに、
ウェットカーボンファイバーのボディが覆っています。
たまたま今日の富士に走りに来ていた最新のフェラーリ428と、
プロが乗った時のインタープロトと同じラップタイムでした。

 

自分で言うのは変ですが、
とんでもない車に乗ることにしてしまったのです。
軽自動車並みに軽い車なので、
アクセルを無造作に踏めば、345馬力がその場で車を暴れさせます。

 

練習走行のたびに何かがありました。
約3ヶ月前の、
最初の練習は雨の日でした。
今考えると、あの日はやめておくべきでした。
初めての走行を、雨の日に行ったのは完全に間違いでした。
畠中君がヘアピンの立ち上がりで、アクセルを開けすぎ、
スピンしガードレールに激突、車にかなり損傷を与えました。

 

「一度、乗ってみなよ。」と勧める私に、
「いや、やめときます。」としり込みする畠中君を、
「いいから乗れよ」と、あおって乗せた私にも責任があります。
私と畠中君が折半で弁償、修理しました。
その日は、雨の中で私もヨレヨレで、まともに走れませんでした。

 

 

次に行った時には、
富士の長いストレートの終わり、230km以上出ている所で、
1コーナー手前の急ブレーキで後輪がロック、
水平に2回転半、スピンしました。
ハンドルがまっすぐだったので、両サイドのガードレールにぶつからず、
無事に1コーナーの向こうに停まりました。
高速で横に流れる風景に、本気で「あっ、死ぬのかな」と思いました。
もちろんそんなことでは
本物のレーシングカーは人を死なせません。
頑強なパイプフレームがコックピットを造っていて、
どんなスピードでぶつかっても、人に損傷を与えるような変形をしないのです。

 

最新のレーシングカーは、絶対に大丈夫なのです。
でも、本当に恐怖でした。
その恐怖に自分がとらわれないようにするには、すぐまた走ることです。
スピンのあと、ピットに帰ったら、
スピンで傷んだタイヤをさっさと交換して、(私は乗ったまま)
「もう一回走っといで」と、とっととピットを追い出されてしまいました。
不思議ですが、
私自身もそれが当たり前と思えて、
そのままコースに出て行き、
そのあとの一本で、自分のベストタイムを出しました。1分57秒です。

 

その次が4日前です。
この日は、路面が冷えていました。
冷えた路面で、冷えたスリックタイヤがどんな風なのか、全く知りません。
1本目、冷えたタイヤを履いて、
ピットロードを60m/hでゆっくり進み、
コースに出る白線を越えた所で、
速度制御のスイッチを切って、アクセルを踏み込みます。
何気なく、いつものようにアクセルを踏んだら、
その場でタイヤが大空転して車がスピンし、コースの真ん中へ飛び出しました。
これはびっくりしました。
ストレートを走ってくる車があったら、大変なことです。

 

ちょっとアクセルを踏んだだけで空転したタイヤは、
冷えた路面の上で信じられないほどグリップのないタイヤだったのです。
これをだましだましコントロールして熱を加えていって、
グリップを上げつつ、アクセルオン、ブレーキング、コーナーをきつく回って、
どんどん熱を加え、普通に走れるくらいにタイヤに熱を持たせねばなりません。
車が軽いので、相当ハードに責めないとタイヤの温度が上がりません。

 

しかし、私はだましだましのコントロールをしながらも、また滑って、
冷えた路面もあって、ちっとも熱が入らず、
いつまで経っても熱が上がってきません。ギブアップしました。
1本目は、初めての軽いレースカーのスリックタイヤに熱を加えられないまま、
あちこちで滑って、ビビッて、ビビリまくって終わってしまいました。

 

そして二本目は、
最初の5周をプロ若いドライバーに乗ってもらって、
タイヤに十分な熱を入れてから、私に交代してもらう方法をとりました。
とにかく、全力で走る感覚を取り戻さないと、
ここでダメになってしまうと思ったので、情けないけど、仕方がありません。
この方法はうまく行って、(・当たり前だ。)
二本目を全開で走ることができました。
しかし、油断したのでしょう。
何周目かのストレートエンドで、またブレーキをロックさせてしまい、
今度はなぜか少し減速したからのロックで、
派手なスピンはなかったのですが、ガードレールに吸い込まれるように接触。
左前輪のサスペンションを損傷してしまったのです。
この日は、これで終わり。最終的に2分01秒で終わってしまいました。
ぶつかって終わったので、ビビリは・・・残ってしまいました。

 

 

私はそのとき気がつかなかったのですが、
#37のインタープロトは、
翌々日、トヨタ・ガズーフェスティバルで、プロが運転して、
お客様を乗せて走る「同乗走行」のイベントが待っていたのです。
だから、メンテナンスをやってくれている東名スポーツさんは、
必死で直し、何とかトヨタ・ガズーフェスティバルに間に合わせたようです。
私は気が動転していたので、そのことにも気がつかず、
大変申し訳ないことをしました。
トヨタ・ガズーフェスティバルでは、
荒天にもかかわらず、大勢のお客様が来られて、
私達KeePerのブースも大盛り上がりと、スタッフプログに書いてあります。
伊藤大輔選手による#37KeePer TOM‘S SC430と同時に、
#37インタープロトにも伊藤大輔選手が乗って、同乗走行がされたそうです。
東名スポーツのみなさんのおかげです。

 

 

そして今日です。今日も走りました。
でも本当は、昨日の時点で一度、
「今回はやめておきます。」と言い出す誘惑に駆られました。
4日前の何度かすべった感触が濃く残っていて、ビビッて、
暖かくなる春まで待つことにして、今回はもうやめとこうと思ったのです。
早い話が、逃げ出そうと思ったのです。

 

そう思いながら、朝、会社に出た時、
「中途入社で入ったばかりの・・・君が、出てきません。連絡も取れません。」
と、常務から報告を受けました。

 

ふと、思いました。
そういうことは時おり起きる事だから仕方ないにしても、
ビビッて逃げ出す俺は、
イヤになったら、だまって逃げ出した新入生と変わらんなあ。
そう思うと、急に自分が情けなくなって、これじゃあイカンと思って、
予定通り富士に行くことにしたのです。

 

しかし、昨日の夜から、そして今朝も、本当はビビリまくっていたのです。
テレビの天気予報が「この冬一番の冷え込み」「氷点下にまで下がる。」などと、
しきりに言うので、ビビリました。
「きっと、ツルンツルンだよ。」と、しきりにぼやきながら、
富士スピードウェーに到着。

 

でも今日は、本当に危ないので、
プロのドライバー若手の井口君に最初から乗ってもらって、
タイヤが温まってから乗ることにしてしまいました。
情けないとか言っている場合ではありません。
少ない練習時間をタイヤを暖める事で終わってしまっては意味がありません。
とりあえず、自分のビビリを取ることが先決です。

 

で、井口君にまず走ってもらってタイヤを暖めてもらい、
とりあえず乗りました。
一本目は、それでも、半分ビビリが抜けず見たいな感じでしたが
二本目は、完全に、取りあえず、ビビリが抜けて、
集中して走れるようになりました。

 

今日は関谷さんまで私と畠中君にご教授をいただいて、
今、どうすべきかを明白にしてくださいました。
「もう一つ、クイっ」です。
意味が分かりませんが、意味を書き始めると、すごく長くなるので、
とりあえず、「もう一つ、クイっ」です。

 

今日も、みなさんにご迷惑とお手間をかけさせた挙句に、
最周回でやっと1分59秒1で、
ベストを越すことすら出来ませんでしたが、
路面が冷えている悪条件でのタイムであることと、
取りあえず、ビビリが取れたのと、
「もう一つ、クイっ。」が分かったので、
今年中に1分55秒突破が、果たせるかもしれません。

 

それに、
初めて何事もなく、
無事に終わったインタープロトの練習でした。

 

まぁ、何ですが、とりあえず、ビビリがなくなったので、
レースに出るのをヤメにはなりませんでした。

 

 

写真は一枚もありません。
そんな余裕は全くありませんでした。

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    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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