谷 好通コラム

2015年02月05日(木曜日)

02.05中部空港編。「大」は「小」を兼ねないこともある。

朝、長崎空港から羽田空港に飛んで、
東京営業所で、東京と仙台の営業拠点会議に出席する予定でした。
しかし、東京行きの便が朝7時過ぎの時点で46便も欠航になっていたり、
首都圏に大雪の情報があったりで、
今日は東京に近づかない方が良いと判断して、
中部空港への便が、たまたまあったので、それに乗ることにしました。
つまり、東京に行くことをやめて、名古屋に帰ることにしてしまったのです。
営業会議には、テレビ会議で出席します。

 

本来ならば実際に出席して、
出席者の顔を直に見ながら会議に参加するのがベストですが、
テレビ会議システムで出席する臨場感の無さというマイナスと、
東京に行くことによるリスクは、
腰と足が不調な今は、後者のリスクを回避することを優先したということです。
単に「楽」を選んだという後ろめたい違和感がないわけではありませんが、
ここは、その違和感を、冷静に押し殺した結果です。
出来れば、仕事は長く続けたいので、
違和感があろうと、自分で自分の行動をコントロールすべきと思います。

 

もう一つは、空港での歩く距離を考えてしまいました。
やはり世界有数の大空港である羽田空港は広く、
何か月前、羽田空港に降り立った時、
空港内のホテルまで歩ききれずに途中から車いすを使ったことがありました。
長崎から飛行機が羽田空港のどのポストに止まるが分りません。
そう考えると中部空港の方がまだマシなような気もしました。
しかし、いつも思うのですが、
中部の空港は、全体として大型機が頻繁に発着するような造りになっています。
この空港を設計したころの昔は、
飛行機はどんどん大型化していましたから、
大型機を標準にして空港を造ったのでしょう。
しかし今は、
小型機を、いかに便を多くして飛ばすかが、
利便性を重視した顧客獲得の勝負どころになっています。

 

中部空港程度の大して多くない旅客数ならば、
少なくとも国内便では、
空港に発着する飛行機はそのほとんどが、
ボーイング737、A320クラスの小型機ばかりで、
ボーイング777クラスの大型機は、その姿を見たことがないし、
ボーイング767、787の中型機すらほとんど来ません。

 

なのに、駐機中の飛行機と飛行機の間隔が、大型機の間隔であり、
すごく離れているのです。
それは大型機が来ても止められるということで、
小型機が、間隔を過ぎて止まっても
不都合があるわけではないのだから、
いいじゃないか。と思われるかもしれませんが、
機体と機体の間隔が無駄に離れていると、
乗客が、乗り降りのためにたくさん歩かなければならないのです。

 

どうせ来るのがほとんど小型機ならば、小型機専用のブリッジを造って、
歩く距離を短くすればいいと思うのです。
余分な間隔を、毎日何百人、何千人が余分歩くわけですので、
これはすごい無駄になっていると思います。

 

それに、
空港ビルの乗降の高さが高すぎます。
一階が、バスや荷物を運ぶトラックが通り、手荷物を整理する階ですが、
二階を、到着専用の階になっていて、
三階が搭乗客が待つスペースとゲートになっていて、
普通の建物ならば4階建てくらいの高さにあります。
それで到着時には、
ボーディングブリッジを渡るわけですが、
中部空港の場合は、他の空港に比べてすごく急な登り坂になっています。

 

ブリッジが大型機を想定した高さになっているのに、
来る飛行機は小型機ばかりであり、
それも特に機内にタラップを収容するタイプの、脚の短い、
短足なボーイング737がほとんどなので、
飛行機に取り付けられるブリッジの高さが低くなって、
大型機を想定した中部空港の場合、
ビル側が非常に高いので坂の傾斜が特にきつくなってしまうのです。
これは結構きついもので、
歩きにくい人にはつらいものです。

 

さらに、
ボーディングブリッジを操作する操作が、
いかなる大型機が来てもいいよう、非常にフレキシブルに出来ていて、
機体にブリッジを装着するまでに、他の空港に比べて3分は余分にかかります。
すべての乗客が日々3分ずつ余分に待たされているので、
その無駄は想像以上でしょう。

 

さらに、さらに
一番の無駄は、
到着した人が、近い所にある車寄せで車に乗れないことです。
普通、車寄せは「乗降車場」とあるものですが、
ここは「降車場」としてあり、帰ってきた人を乗せることが出来ません。
車を置いて行ってしまう迷惑な人を防止しているつもりかもしれませんが、
そのおかげで、
歩くのがつらい人まで、
その車寄せで乗車することが出来ず、
そこから4~800mも離れた立体駐車場まで歩くことになります。
この無駄を放置することは本当に犯罪的です。
ものすごく広いプラットホーム上の車寄せは、いつもガラガラですが、
乗車しようとする人を追い払う役割のガードマンが二人連れで始終います。
まったく無駄です。
本当にガラガラなのです。
中部空港は、絶対的な大きさが羽田空港に比べて小さいので、
歩く距離はまだマシですが、無駄な距離が多く、
どうも、イライラしてしまいます。

 

ものすごく飛行機の間が離れた小型機ばかりの国内線の駐機場

 

 

国際線は、A340、A330、ボーイング777などの大型機が並んでいます。

 

 

長崎行の小型機ボーイング737の機内。

 

 

久しぶりに見た御嶽山。
今までは噴煙に煙っていてなかなか見られなかったのです。

 

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2015年02月05日(木曜日)

02.04.「大」は「小」を兼ねないこともある。

スカイマークエアラインが、
民事更生法(?)の手続きをしたと、新聞に書いてありました。
いわゆる「倒産」です。

 

スカイマークエアラインは日本におけるLCC(格安航空会社)の草分けで、
ANA、JAL、の運賃の半額近い安さでスタートし、
当時は、特に若い子たちに圧倒的に受けました。
しかしすぐに、
何本かのスカイマークエアライン便の”前後のANA、JAL便”を、
ANA、JALがスカイマークエアラインの価格に合わせて”安くする”戦法でいじめ、
スカイマークエアラインは、たちまち経営が行き詰りました。
そこに激安ツアーで急成長していた旅行代理店HISが、経営権を取って、
HISの影響力を使ってか、ANAとのコードシェア路線を実現するなど、
経営を立て直していました。

 

スカイマークエアラインの機体はスタート当初は、
中型機のボーイング767だけでしたが、
成長するにつれてLCCの定番である小型機ボーイング-737が増えました。
路線も増え、日本唯一の格安航空会社として急成長し、
日本”第三位の航空会社”になったのです。

 

成長したスカイマークエアラインは、
もっと積極的な経営戦略を考えたのでしょう。
その頃まだ試験中であったエアバス社の二階建て超大型機”A380”を、
6機を総額約1,915億円で発注してしまったのです。
大型機ボーイング747ジャンボジェットをしのぐでかい飛行機です。

 

大型機は、席が埋まれば埋まるほど、乗客一人あたりのコストは下がります。
それに航空関係者にとって超大型機は”夢”です。

 

売り上げを増やす⇒乗客を増やす⇒輸送量を大幅に増やす⇒超大型機の調達
超大型機⇒輸送コスト単価を下げ、運賃を下げれば、いくらでも乗客は増える。
その根底には、
「安くすれば、いくらでも売れる。」の安売りの論理があったのでしょう。
それで6機のA380を予約注文したのは何年前のことだったでしょう。

 

ところが、二年前、
LLCの規制緩和があって、
ピーチエアライン、ジェットスター、エア・アジア・・・などなどの
LLC格安航空会社が一挙に増え、
スカイマークエアラインの運賃は、
別に特に安い運賃ではなくなってしまったのです。

 

安さだけで売っていた商売は、
“もっと安い”をぶつけられるとひとたまりもありません。
安さのメリットは、安さだけであって、
もっと安くする者が表われれば、
よりもっと安くするしか対抗手段がありません。

 

スカイマークエアラインは乗客数も激減して、
経営が厳しくなったのですが、
そうなるとすでに予約注文してあるA380が負担になります。
それを買い取って運行するなんて力は、とうに無くなっています。
だから、仕方なくキャンセルをしようとしたのですが、
発注した時の契約で、約710億円のキャンセル料を払わなくてはなりません。
それでも、スカイマークエアライン側は
話し合いで何とかなるとタカをくくっていたかもしれませんが、
エアバス側はそんな交渉をまったく受け付けずキャンセル料を取ります。

 

それで、スカイマークエアラインの経営は行き詰まり、倒産です。

 

しかし、たとえば、
予約注文していたのが超大型のA380ではなく、
LCCが多く使うエアバスの小型機A320とかA319、A318、
あるいはボーイング737-800などならば、
少しディスカウントすれば、世界中にいっぱいあるLCCが、
取り合いするほど、すぐに売れます。
しかし
超大型機A380ともなると、
国を代表する航空会社、
たとえばエーアフランスとか、ルフトハンザ、シンガポールエアラインとか、
巨大な航空会社しか買い手はいません。
しかしそういう会社は、すでに長期に計画立てた調達予定があるし、
そういう会社は、飛行機を3クラスの独自な自社仕様にしており、
LCC仕様になっているA380は、とても使い物にならず、
つまり、キャンセルしたA380の買い手が全くいなくて、
エアバスもキャンセル料を取らざるを得ないのです。

 

これが超大型機でなくて、小型機だったら、
スカイマークエアラインは倒産せずに済んだはずなのです。

 

超大型機は、席が埋まれば単価コストが低くなるのは解かりますが、
他のLCCが、なぜ、みんな小型機ばかりなのか。
それば事業的リスクが少ないからという理由も大きかったはずです。

 

それでも、スカイマークエアラインがA380を発注したのは、
海外事業への進出計画とか、
色々あるのでしょうが、
やっぱり、
飛行機にかかわる者はでかい飛行機が好きで、
理性では小型機にすべきことが判っていても、
超大型のA380を発注してしまったのでしょう。

 

 

少なくとも、飛行機は、
数多くの航空会社の失敗例を挙げることなく、
断じて大は小を兼ねないことは、明白なのです。

 

今朝、中部空港で見た小型機ポーイング737のスカイマークエアライン。

 

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    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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