谷 好通コラム

2016年01月09日(土曜日)

1.09.痛いことこそ、生きている証拠だ。

人間は、
図体がデカくなると、鈍くなる。
全体の質量が重くなり慣性の法則によって、
動きのスピードが鈍くなる。

 

でも、神経は鈍くならない。
足にトゲが刺さると、図体がデカくても痛い。
デカくてもチビでも同じように痛い。
アフリカの巨象が、
足に刺さってどうしても抜けないトゲの痛みに、
四六時中さいなまれて、狂って、殺人象になった実話があるそうだ。

 

図体がデカくなっても、痛さは鈍くならない。
巨体でもチビでも痛いものは痛い。
生きていれば、痛い。

 

 

ところが、
組織(会社)は、違う。

 

会社は、図体がデカくなると、動きが鈍くなるだけでなく、
神経まで鈍くなって。
痛みを感じなくなることがある。

 

たとえば、
仕事に間違いやミスがあって、
お客様に迷惑をかけたり、会社に損害を与えても、
その仕事は「分業」でされているので
みんなが誰かのせいにして、
自分が「しまったぁ」とは思わず、自分の痛みとして感じない。
だから、
お客様の迷惑、会社の損害に、
誰も痛みを感じないまま、
単なる仕事上のアクシデントとして、片付けられ、忘れられる。

 

あるいは、
ミスに誰も痛みを感じないから、
誰も反省をせず、
ミスの原因を探そうともしないので、
同じミスが、また起きる。
何度も、何度も、同じミスが起きているうちに
そのミスをミスと思わなくなって、
ある時には犯罪的な意味を持ってくる。
たとえば、
「賞味期限シールの貼り換え」とか
「産地の詐称」の常態化とか、
あるいは最近では
「マンションの地盤強化のクイの打ち込みデータの改ざん」とか、
それは組織的な犯罪構造すら作り上げる。

 

 

会社がでかくなると
みんな、特に幹部が、
自分が「大物」になったみたいなつもりになってくる。
「大物」は、
細かい事にぐちゅぐちゅ言わないのだ。
たとえば、
部下の不始末を勝手に大目に見て、
許すことによって、自らの太っ腹を見せる。
その不始末によってお客様の迷惑や会社の損害が出ていても、
その痛みを感じるどころか、
もみ消して、許すことが、度量の大きさと勘違いする者が出てくる。
そんな、えせ大物は、
威勢のいい物言いと、
おおへいな身振りになることが特徴である。
一つや二つの失敗は
どおってことはない。
太っ腹で許すのが、大物。
「俺が黙っていれば、大丈夫。
気にするな。誰にも言うな。
困ったことがあれば、俺に言え。
俺にだけ言え。
会社の言うことより、俺の言うことだけを聞け。」
会社の中に、
小さなボス系統が出来て、
会社としての指示系統、命令系統はズタズタになり、
組織としての力は激減する。

 

 

あるいは、
お客様が怒った。
でも大物は、小さな事は気にしない。
「客なんて何百万人もいる。
またチラシ打って、CM企画して、看板出して、
集客すればいくらでも来る。」
怒ったお客様の痛みはそのうち埋もれる。
しかし当然、そのお客様は、もう来ない。

 

 

 

あるいは、
「今までのやり方で、ここまでデカくなった。
このやり方で大丈夫。俺は、もう分った。
文句はもう聞きたくない。
学ぶことは、もうない。」
成功が、その人を鈍くして、進化と進歩が止まって、
しかしその分った人は、
会社の新しい次元に着いて来れなくなって、
会社全体の重い足かせとなる。

 

 

会社がデカくなって
神経が鈍くなると、
ミスの痛みも、
お客様の怒りの痛みも、
失敗の痛みも、痛みとして感じなくなる。

 

 

人間は、
図体がデカくなっても、
痛みは、痛みとして鈍くなるものではないが、
会社という組織はデカくなると、てきめんに鈍くなってくる。

 

 

ところが、
人間でも、
「病気」で、神経が鈍くなることがある。



たとえば、
重症の糖尿病では、
神経障害という症状が出て、
特に足の末梢神経がマヒして、足の指先の痛みが無くなることがある。

 

すると足の指先に怪我しても判らない。
傷しても判らないから放っておくと、ばい菌が入り
腐って、壊疽(組織が死ぬ)になる。
壊疽はどんどん進行する。
小指から、となりの指から全部の指へ、
足の甲まで進むころには体全体に腐った毒素が広がりはじめて、やがて死だ。
とにかく壊疽が進む前の部分で
一刻も早く、
切断して捨てるしかない。

痛みを感じなくなると
傷を負っても、
判らないから放置して腐る。
組織が死ぬ。壊疽。

 

壊疽は一刻も早く、切断。
切って捨てるしかない。

 

 

会社が痛みを感じなくなると
ミス、誤りでお客様を痛め、信用を痛め、会社が傷ついても判らない。
傷が広がって組織が腐り、広がる。企業理念など吹っ飛んで、
指示系統が壊れて、
ポリシーも崩壊し、会社そのものが崩壊していく。

 

もはや助かるには、切断するしかない。

 

腐った部分を切り捨てて、
痛みを取り戻すしかない。
でなければ、会社は潰れる。

 

 

痛みを取り戻すのだ。

 

 

ミスがあったら
自分が「しまったぁ」と痛みを感じ。
お客様の痛みも感じる。
だからもうミスしない。

 

 

ミスに誰もが痛みを感じるから、
みんなが反省をして、
ミスの原因を探しだして、改善するので
同じミスは、もう起きない。
ミスの痛みを、我が痛みと感じミスはなくする。

 

 

お客様が怒った。
大変だ。
一人のお客様の怒りは
チラシ打っても、CM企画しても、看板出しても、とても収まるものではなく、
そのお客様を取り返せるものではない。
お客様の怒りの原因を解決するしかない。

 

 

今までのやり方で、
ここまで来たが、
もっと先に行くには
これまでのやり方でうまく行くわけがない。
もっと進化しなければ、ここからの先に行けるわけがない。
もっと先に行きたい。
文句を言ってくれ。教えてくれ。
学びたいことばかりだ。

 

 

私は大物なんかじゃない。
いつまでも、細かい事にまで痛みを感じ、
社長のくせに、いつまでも
細かい事に、ぐちゅぐちゅと口を挟んで、文句を垂れる。
私は腹は出ているが、太っ腹の大物なんかじゃない。

 

 

会社がデカくなっても
神経が新鮮で鋭ければ、
ミスの痛みも、
お客様の怒りの痛みも、
失敗の痛みも、
痛みとして強烈に分かる。
痛みが分かれば、
その会社は、もっと大きくなって発展できる。

 

「痛いっ!」
「痛いよ!」
「苦しい!」
だからまだ、生きられる。
新鮮にもっと、もっと生きられる。
生きているから、痛い。

 

痛いことこそ、生きている証拠だ。

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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