谷 好通コラム

2018年01月22日(月曜日)

1.22.知らぬからこそ、出来てしまう危うさ

太平洋戦争の頃、南洋の島で、
何の補給もない戦いで追い詰められ、
銃弾尽き、飢えと渇きの上に敵からの猛攻にさらされる中
現地は大本営に
「補給か応援を送ってくれるか、それが無理なら、撤退を許可して欲しい。
このままでは全員が死ぬのを待つばかりだ」と、連絡したら、
大本営は現地に、
『名誉ある玉砕』を命じた。
全員、単に、死ねということだ。

 

大本営の司令部には、抜群の頭脳を持った超エリートの将校が
飢えも乾きも経験したことがなく、ましてや、
仲間が撃たれ、血を吹きだして死ぬところを経験したこともなく、
自分の傷に蛆が湧いて自分の肉を食う痛みも知らない将校が、
地獄のような戦場からの
「撤退を許可して…」の願いを、
地獄を知らないので、
「名誉ある玉砕」という、単に死ねという悪魔の命令を、
決まった手順通りに伝えて、何百、何千の命を絶った。

 

こういう話は、私が若かった頃にはよく聞いたような気がする。
テレビでも「人間の証明」とか、
何とかいう真面目くさったドラマをいくつもやっていた。
そういう意味では、
今でも人気ドラマ「相棒」で、
キャリア官僚の非人間性をあばくようなドラマもある。

 

私はずっと現場で働いてきたので、
現場の事はよく知っているつもりです。
現場の冷たさも、暑さも、痛さも、つらさも、
足に持つ障害ゆえに人よりだいぶ多く感じて、
しかし楽しさも、しびれるような感動も、
現場の良さと、現場にしか真実は無いという事実も、
人一倍知っているつもりです。

 

知っているから、解かるし、同じように感じられるし、
どうすれば良くて、何をしたらいけないのか、実感を持ってわかる。
まず、知る事だろう。
理解も、判断も、プラスの側面もマイナスの側面も、
まずそのものを、
その現場を知る事からすべて始まるのではないのでしょうか。

 

南海の孤島に戦った兵隊に、玉砕という名の虐殺を命じた将校は、
地獄の現場を知らないので、
「名誉ある玉砕」という、単に死ねという悪魔の命令を、出せただけでしょう。
知らなかっただけの事です。

 

知らないことが、
残酷なことだと知っている者は、
知ろうとするので、必ず現場に身を置くことをする。
私が尊敬する経営者はみんなそうします。
正しく正確なことを現場で知ろうとするので、
その判断に間違いはなく、
知らないから出来る残酷なことなどせず
多くのみんなを少なくとも幸せにしようとするはずだ。

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    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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