谷 好通コラム

2001年11月10日(土曜日)

273話 不思議な一夜

時差8時間からの時差ボケから
このところ、やっと、開放された

 

夜寝ようと思っても、いやに目が冴えて寝れず
そのくせ昼間はボーっとして
そんな状態が、しつこく一週間ぐらい続いた
環境に対する適応性が、歳をとってきて低下しているのか
まさかと思うぐらい、時差ボケが直らなかった

 

ドイツから帰ってから、もう10日も経つ
向こうに行ったときは、一日が8時間長く伸びた形の時差
つまり、ひどい夜更かしをした感じで
一晩ぐっすり寝たら、もう大丈夫だった
しかし
帰って来た時は
その逆に一日が8時間短くなった形
夜がうんと早く来て、しかも短くなって
寝そびれたまま
飛行機の中で朝を迎えた
朝食が出たのは、日本時間で朝7時、(ドイツ時間では夜の11時)
そのまま朝9時に飛行機を降りて
その日、寝床に入ったのは夜9時過ぎ(ドイツ時間で昼の1時)

 

体内時計がパニックになった!
翌午前3時に目が覚めてしまい、そのまま朝まで眠れない

 

その辺で体内時計は、完全にブレーク!

 

1週間ぐらい、昼はボーっとしたまま、夜は眠れない
一度ブレークしたら、リズムがつかめないまま
始終、気分の悪いまま
自然に元に戻るのを待つしかなかった

 

それにしても、1週間もボケた状態が続くとは、情けない
私の環境適応能力は、少なくとも時差に関しては、バツである

 

時差ボケとは、言葉では聞いていたが
なかなか、辛いものでした

 

飛行機の中での
わずか6時間余の夜
不思議な一夜でした

 

ドイツ時間午後2時、飛行機が飛び立ってから
わずか1時間半後に、空が薄暗くなり始め、夕方の感じ

 

座った席は、進行方向に向かって右の席
つまり東に向かって飛ぶ飛行機の、南側の席
太陽が赤くなって、後ろの方に沈むころ
前方に満月が、白く浮かび上がった

 

 

じっと白い月を見つめていると
昇ってくるのが、解ると錯覚するほどの速さで
あっという間に、空に浮かび上がってしまった
そして
みるみる空が暗くなって“夜”

 

不思議なことに
白く輝くようになった満月は、昇るのをやめて
どんどん前から後ろの方に、横に動いていく
飛行機が東に向かうと同時に
緯度を北に上げて、コースを取っているからだろう

 

下界はシベリア
ところどころに、さびしそうな街の灯りが見える上空を
白く輝きながら、横にどんどん動いていく不思議な“月”

 

 

とにかく、「今度こそは寝なければ」と
ジッと目をつぶるが
全く眠気が来ない
離陸してから5~6時間後
目的地の日本では、深夜3時ごろ
しかし、今さっきまでいたドイツ時間では、やっと午後7時ごろ
腹が減ってきて、目も冴えてくる

 

どうにも寝むれなくて
窓から外を見れば、あの白く輝く月が随分後ろの方にいる
その美しさに、うっとりと見とれているうちに
その月が後ろに見えなくなってしまってから、しばらく経って

 

飛行8時間後
空が徐々に明るくなってきて
朝日が出てきたようだ

 

そのころには
飛行機は、北北西から南南東にコースを取っているので
太陽は私の席の反対側から昇ってくる

 

 

日本時間で朝7時半ごろ(ドイツでは夜11時半)
朝食が出て

 

午前9時に名古屋空港にタッチダウン
入国と税関を済まして出てきたころ
ドイツ時間での深夜1時過ぎの体内時計を持ったまま
日本の明るい午前9時の日差しを受けて

 

ながいながい時差ボケ生活が、始まったのでした

 

あの不思議な一夜
横に動いて行った“白く輝く月”を

 

やっと正常に戻った体内時計が、懐かしんでいるようです

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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