谷 好通コラム

2003年07月18日(金曜日)

757話 “差不多”その?

“差不多”とは、中国語で“ツァープートォン”(のような発音)
そのまま読めば、「差は多くない」、つまり「あんまり違わない」
もっと言えば
“差不多”
「だいたい」「ほとんど同じ」という意味だそうだ

 

“差不多”とは
従来の中国製品の品質を表した言葉で

 

何を造らせても、きちんとは造らない
「あんたの言うとおりに造ったよ。違うって言ったって、ちょっとのことじゃない
何故、そんなに細かい事を言うのか。おかしいよ」

 

注文された“ようなもの”を作って
「何でこれでいけないのか“差不多”だよ。」

 

だから、高品質を求められたり、精密さを要求される製品は
中国で製造するのは無理であり
大まかな品質でよいものであり
その人件費が安いことを利して作った“安かろう悪かろう”の製品のみが
中国での製造に合っている
つまり
中国製品=安物=低品質
それが中国製品に対する一般的な見方であった

 

ところが、時代は変わったのだ
中国の企業家達は、この“差不多”を猛反省し
これからの時代は、高品質の製品を作っていかなくては
事業としての成功はあり得ないと
悟ったようだ
「高品質こそ、成功の鍵」と

 

今日、上海主張の目的のひとつである“陶さん”のタオル工場に行った

 

半年以上の快洗隊での厳しいテストの繰り返しの中で作り上げた
私たちの要求通りの「洗車拭き上げ専用のタオル」のサンプルが出来て
今度は、その仕様で作り上げた量産製品6万枚が
出来上がったのだ
今回は、この製品の抜き取り検査、“検品”なのだ

 

 

ドキドキであった
中国の工場はいい加減であると、さんざん言われてきたし
一ヶ月ほど前にこんな事があったのだ

 

やっとの思いでOKを出したサンプルのあとで
もう一度、前回のものと同じものを作って見て欲しいと
再サンプルを出してもらったら
それがペケであって、吸水力がかなり下回っている

 

「何でこんなことになるのか」と強く言って
もう一度だけ、OKを出したものと同じものを作る様に要求したら
今度は、きちんとしたものが出てきた
それで量産の指示を出したのだが
不安であった
ペケのサンプルは
「やっとOKを貰ったあとで、ちょっと気を許して、染色の釜の洗浄が甘く
綿花油が残っていたようでした」
という理由であった

 

それでも
試作品と量産品をぴったり同じ品質で作ることは
かなり難しいもので
量産品の6万枚について、正直、不安であった

 

だから、出荷前に検品に来たのだ

 

陶さんの工場に着いて、少しだけ話を交わした後
早速テスト
工場にうず高く積み上げられている製品の中から
自分で勝手に手を突っ込んで、3枚のタオルを抜き取った
さわり心地は良さそうだ

 

だが、実際に使って見なくては分からない
ドキドキの瞬間である

 

陶さんの車が実験台
買ったばかりのホンダ・オデッセイ
一番差が見やすいフロントガラスに、水をぶっ掛けて
タオルで拭いてみる

 

日本から持っていった何種類かの良いタオル、悪いタオルと
何度も何度も比較しながら
一回一回水をぶっ掛けて、拭いてみる
・・・・・
いいようである

 

新品タオルを水に濡らして、手で絞ってそのまま、水の着いたガラスを拭く
自分の手だけでは分からないので
同行の熊澤君
同じく同行の通訳“李さん”
特に李さんは、洗車にはまったくの素人なので
テストには適任である

 

 

何度も、何度も色々なタオルとの比較テストをすると
陶さんの量産タオルの拭き上がりが一番良いのがよく分かる

 

OK!
間違いなくOK!である

 

ホッとして、何が良くて、何が悪いのかみんなに説明する
テストをしていたら、いつの間にか大勢が集まっていたのだ
こりゃ解説しなければなるまいと

 

「いーですか、こっちが陶さんのタオル、
ガラスを拭いた後、うっすら残った水がス~~ッと乾いていくでしょ。
それで乾いた跡が残らずに、きれいになっているよね。
そして
こっちが悪いタオル
同じように拭いても、水の残りが多いのが分かるかな?
そっち陶さんのタオルの方みたいにス~ッとは乾かないでしょ。
それでやっと乾いても、水が乾いた跡がはっきり残っているでしょ。
分かるかな?
もう一つ
こっちの悪い方のタオルは、こまかーい糸くずが着いてしまったけど
陶さんのタオルの方は、ぜんぜん糸くずが着いていないよね。
これが欲しかったんだよね。
合格! 大合格!だよ。これは」

 

いつの間にか、私は、そこが中国であることをすっかり忘れて
日本語で大きな声で喋っていた
そのことに気がついたのは、思い出しながらこれを書いている今である
それぐらい、あの話はよく通じた
ちゃんと驚くところで、みんな驚いていたし
見て欲しいところでは、ちゃんとみんな見に来てくれた
実際に目で見てもらいながら話すと
言葉はまったく通じなくても、全部通じてしまうもののようだ

 

 

何はともあれホッとした
これでペケだったら、どうしようと思っていたのだ
ダメなものは、もちろん、買い入れることは出来ない
かといって6万枚なのだ
修羅場にでもなったらどうしようなんて、要らぬ心配をしていたのだが
合格、それも大合格で、とにかく良かった

 

※OKが出たところでみんなで記念撮影

 

 

陶さんの「洗車専用タオル」の仕事
私たちが出した注文どおり100%ぴったりの性能を出してくれた
決して、“差不多”ではなかった

 

タオルは
綿が紡織工場で糸になり→染色工場で色を付けられる
その状態でタオル工場に持ち込まれ
織機にセットする糸巻きに必要な分だけ巻き取られる

 

 

今度は、織機によってタオルに織られる
この時に、模様も入れられる

 

 

何枚かつながって織られたタオルを
1枚1枚に切り離し、
今度はタオルの端を1枚1枚ミシンで縫っていく

 

 

たかがタオル
でも、こんなにいっぱいの手を経て作り上げられていくのです。
大切に使わねばと思うのです。

 

“差不多”の話、これだけではありません
このあと、みんなと一緒に食事に行くのですが
そこでの真剣な話が、実に面白かったのです。

 

その話は、また明日、“差不多”その?で
お楽しみに

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    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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