谷 好通コラム

2004年06月26日(土曜日)

983話 チラシを5秒見る

私達のように一般の人を対象とした商売をやっていると、
チラシをよく使う。

 

新聞に大量に折り込んだり、
雨が降ったりして暇な時には、
自分たちの手で、一軒一軒の新聞受けに配る“ポスティング”に使ったり、
住所を登録してもらった会員さんに郵送する“DM”に使ったり、
あるいは、店頭で配ったり
「チラシ」は、自分の店をアピールする為の大切な道具だ。
特に私達のように地元に密着した商売では、
看板とか店構えと同様に、チラシは重要な意味を持つ。

 

それだけに、チラシ作りには頭を絞る。

 

色々工夫して作るのだが、
作っていくうちに、あれも載せたい、これも載せたいと、
だんだん盛りだくさんの内容になっていくのが常だ。

 

たくさんの商品を載せていって、
しかも、どれもこれも強調したいばかりに文字を大きくしていくと、
なんか、大声で商品名を連呼しているようで
わめき散らしているような、うるさいチラシになってしまう。

 

ただの「売りたい」だけの、売り手の欲が丸出しになった
品もなければ、商品の品質も感じられない、
魅力のないチラシになってしまうのだ。

 

チラシは売り手のマスターベーションではない。
買い手の心が、つい動いてしまうような魅力がなければ、
チラシ本来の目的は達せられない。

 

チラシはお客様に「欲しい」と思ってもらう事が目的。
売る側が「売りたい物」を、ただ並べ立てても「欲しい」と思ってもらえるものでない。

 

商売の第一歩とは、お客様の「欲しい」を見つけることと言ってもよい。
その欲求は、顕在的なもの、つまり欲しいと意識で思っているものは、
ある程度アンケートなどのリサーチで分かる。
それに普段からお客様が言葉にして出しているので、
これは誰でも見つけることが出来ると言える。
問題は、「潜在している欲求」
世の中に今までなかった物で
新しく作られた上で、その商品を見たら
「欲しい」という気持ちが触発されるような物。
これは今までなかった物なのだから、
こんな物を見つけたら、
あるいは、作り出すことが出来たら、
その商品は、見つけた人がしばらくは独占的に販売することが出来る。

 

私たちの商売、洗車屋とは、
日本において今まであまり存在しなかった商売であって、
その高品質洗車は、今まで無かった物なので
お客様の欲求が顕在的になっていたわけではない。
しかし、自分の車を“もっと”綺麗にしたい。とは潜在的に欲求があったに違いない。
お客様が、私達の店舗を見て、あるいは洗ったり磨いている姿を見て、
「いいなぁ、こりゃいいわ。」と、
潜在していた欲求を掻き立てられれば、そのお客様を勝ち取ったことになる。
そして、少なくともこの辺りでは、このような店舗はここしかないわけなので、
そのようなお客様を独占することが出来る。

 

しかし、逆を言えば
今まで見た事がない商売であり、店舗であるので、
この店に何があって、どんなサービスが受けられるのか、
そうすると自分の車がどのようになって、自分はどんな満足を得られるのか、
そんな事が、
その店を見て、作業を見て、
そして多くの場合は“チラシ”を見て、
その全体が、容易に想像出来なければ、
その店が何の店であるのかお客様には解からず、
入店しようとは思わないだろう。
認知しづらい店は、繁盛した店舗になるのに非常に時間がかかることになる。

 

その店の商品・サービスをお客様に理解していただけること。
これを私たちは“認知”と呼んでいるが、
認知のスピードが遅すぎると、店舗が暇な状態が続くことになり、
暇な店は、暇であること自体がマイナスの宣伝効果を出す。
たとえば、ラーメン屋などに入った時、
昼時にも関わらず、お客が一人の入っていなかったら
「わぁ、しまった~、まずいラーメン屋に入っちゃった。」と一瞬のうちに後悔する。
行列の出来る店舗に見られるように、
たくさんの人が店舗に押しかけていること=支持されていることに他ならず、
暇な店を世間に露出しておくのは、長くなればなるほどマイナスが決定的になる。

 

だから、認知のスピードを上げることは重要なことであって、
特に、世間がまだ知らない商売の場合、
早く認知をもらうことは、その店の死活問題になってくる。

 

そういう意味で、
認知のための“チラシ”の出来は、大変重要なのだ。

 

「チラシとは、5秒眺めれば、
何が書いてあるのかが、おおよそ分からなくてはならない。」と、いつも言う。

 

新聞にはたくさんのチラシが折り込んである。
特に、一番効果が高いと言われている土曜日の朝刊には、
一冊の雑誌が出来るほどの多くの枚数のチラシが折り込んである。
人はその中から自分が興味があるチラシだけを見る。
それ以外は、ただ“めくる”だけ。

 

それでも何枚かのチラシを見ることになって、
パッと見て、また次のをパッと見て、次から次へと見ていく。
1枚について2~3秒だけ。
その中で、
面白そうな内容か、すごく得になりそうなチラシだけを
ちょっとだけジッっと見る。
その間1枚につき“5秒”か
パッと見て、何が書いてあるのかよく分からないチラシなどは、
その時点で失格で、当然紙くず行きである。

 

チラシは、そのほとんどが見てもらえずに紙くずになる。
たとえ、うまく読んだ人の興味を引いて
見てもらえたとしても“5秒”。
その5秒で、お客様の心をつかまなくてはならない。
気持ちをつかめれば、
やっと今度こそ、ジックリ見てもらえる。

 

ジックリ見て、
「いいなぁ、行ってみようかなぁ」と思ってくれて
ここで初めて、商売としてチラシの効果が出たということになる。
考えて見れば
たかがチラシであるが長い長い道程である。

 

 

スタッフが
「チラシの原稿が出来上がりました。見てください。」
と、新しいチラシのコピーを持ってきた時、
私は、5秒しか見ない。
たった5秒だけ見て、とっとと返して
「ダメダなぁこれは、何が書いてあるのかさっぱり分からない」と言う。

 

チラシの版下を持って来たスタッフからすれば、
せっかく苦労して作ったのに、
私が、たった5秒ぐらいしか見もせずに、「さっぱり分からない」と言って
チラシを突っ返されることに、どうも納得できないようだ。
「もっとちゃんと見てくださいよ。」って感じだ。

 

何時間もかかって苦労して企画して、
たった5秒程度だけ見て、「ダメ!」と決めつけられるのは、
私の横暴であり、傲慢に思えるのだろう。

 

その度に
「5秒見て、何が書いてあるのかおおよそは解からなければ、
チラシとしては失格なんだよ。
お客様は本当に5秒しか見てくれないんだから。」と、いちいち説明する。

 

概して、印刷屋さんがクライアントの言うとおりに
従属的に作ったチラシはそんな悪い傾向を持っている。
本当のプロの作ったチラシは、
彼ら自身の目が、お客様たちの見る目になる訓練が成されているので
本当にその5秒間に勝負してくる。

 

これなんか見た瞬間に、
何を言いたいか解かるいいチラシだと思っているのですけど、
どうでしょうか?
2年前の6月、水垢取りキャンペーンの時のチラシ。
いいものはいいもので使い続ければいい。
それが財産である。

 

しかし、いつかは新鮮なものも作っていかないと
いい加減に飽きられてくることも事実。
お客様の眼になりきって、また5秒の勝負をかけなければならない

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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