谷 好通コラム

2006年09月24日(日曜日)

1481.元気の素が燃えた

今日は仙台で、
今週の土曜日に行なわれるゴルフGTIカップレースSUGO戦のための練習だ。

 

練習に付き合ってくれるのは石川朗選手で、
昨日から一緒のホテルに泊まって朝一番から仙台SUGOサーキットに行く。
天気予報はあまりいい予報ではなかったが、
見事にはずれて、雲一つない大晴天となった。

 

まず、9時半から1本走った。
1本とは25分間であって、約13周くらい走れる。
初めてのSUGOは面白かった。

 

ストレートはあまり長くなく、エンドでやっと200kmちょっとまで、
ストレートに続く第一コーナーは、
思ったより速いスピードで抜けられるので、かなり深くまで突っ込まねばならない。

 

すぐに来る2コーナーは出口をあまり膨らませずに抜ける。
下り坂の3コーナーへのラインを取り易くするためだ。
3コーナー入り口ではブレーキを踏まない。
アクセルをちょっと抜くだけのタイミングで車の向きを変え、
速いスピードで駆け抜ける。

 

次の4コーナーは鋭角のコーナー、しっかりとブレーキを踏んでクイックに抜ける。
するとすぐにかなりキツイ上り坂になりつつシケインがある。
スピートが乗るところでもないのに、しかも上り坂のシケインとは何のため?
そんなことを思いつつ、縁石に思いきりタイヤを乗せてアクセルを踏み切って抜ける。
私はアクセルを踏んで抜けるS字コーナーとかシケインが好きである。

 

次のコーナーまでの上り坂を駆け上がるが、
乗っているとここが上り坂であると感じない。
上ったてっぺんに35Rの直角コーナーがあるが、
そこまで昇りで思ったよりコーナー入り口でもスピードが乗っていないので、
ここは自分の感じよりもっと深くまで入ってからの軽いブレーキングで十分だ。
すぐに同じようなコーナーが来るが、
ここは思ったより回り込んでいる感じで、出口で思いっきり膨らむ。

 

そこから長いバックストレッチ。
それもかなりキツイ下り坂で一気に加速する。
短いストレートではあるが、エンドでは200kmを越していた。
その後に来るのが「馬の背コーナー」
大きなヘアピンという感じで、
見た感じに騙されず、ある程度のスピードを維持して回り込まなくてはならない。
下り坂ストレートのあとのヘアピンとは怖い感じがするが、意外と楽なコーナーだ。

 

すぐに大きな直角コーナーが二つ続く。
ここをどう攻めるかがこのコースのポイントであると聞いていた。
果敢に攻めるが、
なかなか攻められず、
まだ出口で外側のコースが余っている。
この二つのコーナーを抜けると同時に大きな130Rの最終コーナーが待っている。
この最終コーナーは“極端な上り坂”なのである。
(自転車で昇るのはとても大変であろう。)
だから最終コーナーへの進入スピードが低いと上り坂に負けて、
ストレートへのスピードに大きく響き、このコースのタイムに大きな差が着くという。
頑張って色々と試してみたが
ストレート入り口のダンロップゲート下でのスピードが全く変わらなかった。
やはり、先輩方のおっしゃるとおりここは難しそうである。

 

以上、1本目を走って感じたこと。
私のようにヘッポコではないドライバーから言わせれば、
「解ってないね~~。」となるのであろうが、
とりあえず1本目で色々なことを感じながらコースを憶えた。
1分49秒台にやっと入っただけの1本目である。

 

2本目は午前11時ちょうどから。
1本目でブレーキが深く感じたので、
2本目はブレーキのエア抜きをしてからスタートした。
ところがスタートして直後、
「ブレーキフルードが何とか(英語なので意味が解らない。)だから、ストップせよ。」
という警告が出た。
ブレーキはちゃんと効いているのだが、
一応「警告」なので、よく解らないがピットに入る。

 

ピットに構える石川さんにそのことを告げ、
ブレーキオイルの量を見るが異常ない。
前回のもてぎでのレースでも、ブレーキ関係をいじったら警告が出たが、
結局異常なく、どうして警告が出たのか解らなかった。
今回もそんな事だろうとは思ったが、
慎重な石川さんは、ピット前でもう一度ブレーキのエア抜きをしてくれた。

 

ものすごいスピードで作業をする石川さんを横目に、
私はシートに座ったままだ。
なんか申し訳ない気持ちと、ドライバーの特権みたいな感じで複雑な気持ちだが、
とにかくじっとシートに座って作業が終わるのを待つ。
作業は15分ほどで終わった。
早いっ、早いっ。

 

すぐにコースに戻るがまだ8分ほど時間がある。
少なくとも4周は走れる勘定だ。
4周でも練習にはなる。

 

1本目で感じた克服すべき私の問題点、
・1コーナーでスピードが落ち過ぎること、
・3コーナーでついブレーキを踏んでしまうこと、
・一番上の35Rでコーナー手前でスピードを落としすぎること、
・二つ続く直角コーナーで攻めきれなかったこと、
・そして、何と言っても最終コーナー入り口の進入スピードをもっと上げること。

 

そんなことを考えながら少ない残り周回を一生懸命走った。
しかし、こんな風に色々考える時はなかなかタイムは上がらない。
かえって1分50秒台に落ちる。
イカンイカン、色々考えるあまりにスムーズさに欠けている。
まったくダメだ。
あと少なくとも5秒は縮めなくてはならないのに、焦る。
しかし、あっという間にチェッカーが出て、11時からの2本目が終わる。
いや、
チェッカーフラッグは出ても、
ピットに帰るまでの1周があるではないか。

 

そのチェッカー後の1周は、前の車を抜かす事は出来ないが、
そこまでは全力で走っても良い。
前にいるビッツは、まだ数百メートル先にいる。
追いつくまで全力で走ろう。

 

1コーナー、2コーナー、3コーナー、シケイン、てっぺんの35R、
長い下り坂のバックストレッチ、馬の背コーナー、
そして、攻めきらなくてはならない二つの直角コーナーの
一つ目に差し掛かったところ、

 

突然、
“ガッ”というショックを体に感じて、
次にバックミラーに大量の真っ白な煙が写ったのが見えた。
「ギャー、エンジンブローだっ。」

 

何年か前にEK9シビックのエンジンをブローさせた時
同じ真っ白な煙を見た事があったので、
わが?25のゴルフのバックミラーに写った白い煙を見て、
それがエンジンブローであることを一瞬で悟った。

 

すぐにコース脇に車を寄せる。
エンジンオイルが漏れているはずである。
それでも30~40メートルぐらいはコース外に出られず、
コースをオイルで汚してしまった。

 

コース脇に車を止めて、
「またやっちゃった・・・・、あ~あっ」
そんなことをボォーっと思い空を仰ぎながら、
コースのスタッフが来てくれるのを待つ。

 

しかし、待っているうちに
ボンネットの中からの白い煙が激しくなってきた。
この時は本当に焦った。
「ありゃー、車が燃えちゃう。」

 

やがて駆けつけてくれたスタッフに、
「ボンネットの中が燃えてるみたいだ。早く消火器で火を消さなきゃっ」と怒鳴った。
一本、二本と消火器を持って、
消化剤をボンネットに中に噴霧した。
(噴霧というより、ぶち込んだといった方がぴったりなほど大量に。)

 

やがて煙も収まった。
気が着いたら
わが?25ゴルフは、
消化剤のピンク色の粉で全身がまぶされている。

 

牽引されてピットに戻る。

 

車は、体中ピンクの粉だらけになった姿をさらしながら
ピットの前にたむろする「走行会」のおにぃちゃん達の好奇の視線を浴び、
ピットに帰って来た。

 

なんと痛ましい姿であろう。

 

 

これで、30日のカップレースは無しである。
ガッカリである。

 

ピットに帰って来てからが大変だ。
車の隅々にまで入り込んでいる消化剤をきれいに取り除かなくてはならない。
最初はエアーガンを使って粉を吹き飛ばして見たが、
あまりもの大量の粉がピット中に舞い散って、いくらなんでもこれは迷惑だろうと、
水で洗い流す作業に変えたら、
意外や意外、水で洗い流した方がはるかにきれいに取り除く事が出来た。

 

こんなことは滅多にあるものではないが、
「消化剤は、水で洗い流すべし」という変な学習をしてしまった。

 

 

消化剤の始末をしながら石川さんが言う。
「この車は、ミッションでありながら電子制御のオートマチックという優れものだから、
オーバーレブ(エンジン回転の回し過ぎ)もしようと思っても出来ない仕組みだし、
シフトロックも無い筈だし、
エンジンオイルもCOX指定の物が量もきちんと入っている。
いきなりエンジンブローなんてあり得ないよ。
なんか他の事なんじゃないかな。
エンジンじゃなくて、タービンが焼き付いたんじゃないかな。」

 

そう言いながら、ある程度きれいになった車の下にもぐって調べ始めた。
(最初は粉だらけでとても下にもぐれなかったのだ。)

 

「あっ、ドライブシャフトのブーツが破れて、中のグリスが飛び散ってる。
これがタービンのカバーにかかって煙が出たんじゃない?
そうだったら、ブーツを換えればいいだけだから簡単だよ。」

 

えっ?ブーツが破れているだけ?
そりゃ最高だ。
そんなことなら、部品さえあればすぐにでも直る。
30日のカップレースに出場することもまったく問題ない。
ワクワクしてきた。

 

そんなことを思いながら、下にもぐっている石川さんを見ていたら、
「あれっ、これ何だ?引っかかって取れない。
あーっ、コンロッドだよっ、これっ。
コンロッドがこんなところに飛び出して、引っかかってた。」

 

コンロッドとは、エンジンの内部にある最も基本的な大きな部分の一つで、
これが外に飛び出していたということは、
エンジンの中はグチャグチャになっており、全損であるということである。
絶望なのである。

 

飛び出ていたコンロッドとその破片。

 

 

私も見てどうなっているのか解らないが、
石川さんが苦労して撮ってくれたコンロッドが飛び出た部分。

 

 

やはり、エンジンブローであった。
なんと前触れもなく、
突然「ガッ」というショックと共に
エンジンが中がグチャグチャになって、
シリンダーブロックを破ってコンロッドまでが飛び出したほどの全損である。

 

あり得ない事が現実に起こった。
あのガッというショックは、
シフトロックをやってしまった時のショックのような気がする。
そう考えると色々とつじつまが合う。
誰がやったのか・・

 

結局、どうしようもなく、
とりあえず仙台地元にワーゲンディラーに引き上げてもらう事にした。

 

もちろん30日のカップカーレースには出場できる確率はゼロである。
夕方、ピットに中で消化剤をほとんどすべて洗い流してもらった?25ゴルフは、
今にも動き出しそうに見えるが、
心臓であるエンジンの中がグチャグチャになって、
今は、完全に死んでいるのだ。

 

 

SUGOを引き上げる頃、
陽は完全沈み、葬送曲を奏でているようであった。

 

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    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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