谷 好通コラム

2007年10月26日(金曜日)

1762.もう一つの側から見た事実

昨日乗った長野新幹線「あさま527号」で財布を拾った。
列車を最後に降りたので気が着いたのだが、
ブランド物でかなり使い込んだ財布で、シートの上に忘れてあった。
私は忘れ物をすることはあっても、人の忘れ物を拾ったことなどほとんどなく、
しかもそれが大切な財布となれば、これはもう早速届けなければならない。
改札口の駅員さんに「忘れ物がありましたよ。」
いつも人に迷惑をかけるばかりなので、たまに逆の立場になると、
何かとても良い事をしたような気がして、嬉しかった。

 

長野駅前のホテルでキーパープロショップ長野ブロックミーティングを開く。
長野ブロックは大変熱心な方が多く、
プロショップ登録14軒の内13軒の方が出席していただいた。
皆さん熱心で話題が盛り上がり予定時間を大幅にオーバーしたが、
夜9時ごろから懇親会に移動する。
みんな仕事を済ましたから来ているので車の方が多く、
懇親会には4名の方とこちらのスタッフで計7名。
飲酒運転は絶対に出来ないということが浸透しているので、
懇親会にはなかなか集まりにくい環境になっている。
今後はプロショップミーティングの在り方を、
技術研修を含めた研修会の意味合いをもっと強くして、
懇親会は年に一回ぐらいにした方がいいかなとも思った。

 

いずれにしても、飲み会は大好きだ。

 

みんなと懇親会場の近くの居酒屋へ向かおうとした時、
しかし、私のカバンが一つ無いことに気が着いた。
今回の出張は、長野から松本に行って札幌、仙台と回るので、
寒くなって来たことも考え、
今回はカバンを二つにして、セーターとジャンバーなど着る物を持ってきた。
その追加したカバンが見つからないのだ。
どこへ置いてきたのだろうか・・・。

 

思い出してみると、
どうも、長野新幹線の列車の中に置き忘れてきたらしい。
あの財布を拾った「あさま527号」だ。
財布を拾ったことに気をとられて、
私は自分のカバンを忘れてきてしまったらしいのだ。
アホである。
人の忘れ物を拾ったという私にとって珍しい事件があって、
そっちに気が行って毎度の自分の忘れ物をしてしまったわけだ。
私の忘れ物癖はもうほとんど病気である。
長野駅の忘れ物の係りに電話して、
該当のカバンが列車の中にあったことを確認した。
そして、次の朝、つまり今朝、忘れたカバンを駅で受け取ったことは勿論である。

 

人間一つの事に気が行ってしまうと、
一方の事には神経が行かなくなってしまうのは、ある程度仕方がないことだ。
自分を正当化するわけではないが、ある程度は仕方がないのだ。

 

 

店舗についても同じようなことが言えて,
自分が店舗の側の立場になると、
お客様の側からの視点で店舗を見ることが出来なくなってしまう。
これはかなり深刻な問題であるのだが、
それが問題であることすら気が付かない場合が多い。

 

先週の日曜日から月曜日にかけて快洗隊の店舗を回り、
お客様の一人として待合室にじっと1~2時間座っていたら、
意外なことがたくさん解った、とこのブログ「1760.快洗隊の仕事を開始」に書いた。

 

特に驚くべき発見があったのが快洗隊・東海店である。

 

この東海店は、約2年前にFC店としてオープンし、
オープンした月から200万円以上の実績を上げて私たちを驚かせた。
この周辺地域は刈谷店、知立店、安城店と、かなり快洗隊の密度があって
若干でもドミナント効果があったのであろうことと、
交通量の多い片側一車線の生活道路であり人口密度もまあまああって、
安城店に似た非常に良い立地条件でもある。
土地も400坪と快洗隊店舗の中でも最も大きな部類だ。
快調なスタートを切った東海店は、最初は直営店をおびやかす勢いであったのに、
少しずつ実績が低下してきたのは不思議であった。
快洗隊は、まだ世間に認知されていない店舗なので、
オープンしてから徐々にでも実績が上がり続けるパターンが普通なのだが、
東海店では、オープンと同時にかなりの来店客と売り上げが出たのだが、
数ヶ月もするとみるみる実績が下がってきたのだ。
その時の店長さんに聞くと、
店側のスタッフが足りなくて、
土日など忙しい場面ではお客様を断っているので客数が減ってきたのでは、と言っていた。
店舗でスタッフを何人使うかはその店の都合にもよるので、
無理に人を増やすようにも言えず「勿体ないなぁ」と思っていた。
しかし、一年経った時、FC店を運営する法人さんから、
「人がどうしても集まらないので、アイ・タックで運営してもらえないだろうか。」と、
相談が来た。

 

その法人さんは大きな自動車修理工場を経営しているのだが、
工場の整備士さんたちは洗車に対して偏見があるのか、
なかなか快洗隊での仕事に着きたがらない。
そんな理由で、どうしても人繰りがつかないという理由らしかった。

 

東海店は、店としてのポテンシャルは高いと思っており、
とりあえず引継ぎをさせていただいたのだが、
引継ぎと同時に、若干の手直しとコンセプトの変更をしたのが成功したのか、
4月、すぐに洗車280万円の売り上げを出して、
快調な再スタートとなった。
これなら、品質を維持してリピートの積み上げをして行けば、
刈谷店を凌駕するような店舗に育つと楽しみにしていたのだが、
数ヶ月だったところで、ジワッと下がりはじめた。
店長は直営店の中でもエースクラスが担当し、スタッフもいい。
何故、売り上げが低迷してきたのか分からないまま何ヶ月が過ぎていたのだ。

 

今回、月曜日の朝一番で東海店を訪れ、
一時間半待合室でじっとしていることにした。
お客様の目線に立って、東海店を見直してみようと言うことである。
入った時に、
室内がちょっとゴム臭かったのが気になったが、そのまま待つ。
この店は、タイヤのショールームが隣にあって(修理屋さんが経営をしている)
ショールームにある山ほどのタイヤの匂いが待合室に洩れているのだろう。

 

やがて小さな子供さん連れのお母さんが来店された。
初めての来店らしかったので、店長が洗車メニューの説明をした。
説明ははっきりとした声で、歯切れよく感じのいいものであった。問題はない。
撥水手洗い洗車をご注文されて、
母子のお客様は待合室の中で作業を待っていたのだが、
子供さんがはしゃいで動き回るのが気になったのか、
お母さんが「外へ行こうか?」と、子供を誘う。
しかし、子供さんは中で相変わらずはしゃぎ回っている。
「外へ行こうか?」と、お母さんは何度も子供を誘う。
そうするうちに作業が終わって、
店長が「洗車が終わりましたので、仕上がりをご確認ください。」とお客様を外へ。
その間、待合室で20分ほど。
フィールドで店長と一緒に仕上がり確認をしてもらった後、お勘定をする。
お金を店長に渡した後、お客様の表情が妙に“しかめっ面”をしている。
何があったのだろう。
仕上がり具合が悪かったのか、値段が高かったのか?
値段はメニューを見てもらった時点で分かっていただいているはずなので、
思ったより高かったということはないだろう。
仕上がりも、ベテランの店長がやった仕事だ、しかめっ面をするほど悪いとは思えない。

 

しばらく待っている、
タイヤの匂いが鼻についてきた。
「ちょっと臭いなぁ」と思っている間に、
次のお客様がやってきた。
ベンツ最新のS500のブラック、50歳代の女性だ。
常連さんらしくメニューボードから手短じかに注文をして、すぐに外に出て行かれた。
出て行かれるその表情がまた“しかめっ面”。
なんか変だなぁ、と思いながらも、もうしばらく待合室に座っていることにする。

 

そのうちに頭が痛くなってきた。
胸もムカムカして気分が悪くなって、思わず外に出た。
「わ~気分が悪い。これだ、さっきの人たちの“しかめっ面”の原因はこのゴムの臭いだ。」

 

私は、長年ガソリンスタンドに勤務していたので、
タイヤのゴムの臭いにはある程度慣れていたから、最初はどおってなかった。
しかし、1時間半その臭いの中にいたら、頭が痛くなって気分が悪くなってきたのだ。
これは大変だ。
慣れているはずの私でも、こんなに気分が悪くなったのだから、
普通のお客様にはとても耐えられないはずだ。
店舗のスタッフに聞くと、
「そういえば、最初引き継いでキャンペーンをやった時には、
待合室の中で洗車を待っている人が多かったのですが、
そういえば、最近中で待っている人、そういえば、いないですね。」
店舗のスタッフは、待合室にあまり入らないのであまり気にならなかったようだが、
作業を待つお客様は待合室に何十分か、あるいは1時間以上も待たれるわけで、
たまらなかったのだろうと思う。
お客様から「中がゴム臭いね。」と言われたことはあったそうだが、
それほどのことではないと思っていたらしい。
ゴムの臭いは、時間が経つにつれて強烈に不快に感じるようになって、
外に出た後もしばらく気分の悪さが続く。

 

考えてみると、
この強烈なゴム臭さが、
この店の不思議な売り上げの低迷のすべての原因なのかもしれない。
そう考えると、今までのことのつじつまが合うではないか。

 

オープンの時とか何らかのキャンペーンの時に、
利用してされ、

 

二度のオープン時に快洗隊を知りユーザーが
「面白そうな店」「きれいにしてくれそう。」とたくさん来店され、
たくさんの方が、待合室で快洗隊自慢の手洗い洗車とコーティングなどをご覧いただいた。
最初は手洗い洗車で20分ほどの待ち時間、
待合室は臭いが短い時間ならそれほどもなかった。
それが、KeePreなどもやってもらい始め1時間以上待つようになると、
この臭さがどうしようもないレベルに達して、この店がイヤになる。
それでも、この店の洗車やコーティングは気に入っている人の内いくらかの人が
車を置いていく方法で(つまり「臭い店で待たず」に)
洗車などを買い続けていただいている。
そんなストーリーではなかったのだろうか。

 

そんなストーリーを想像した時、ぞっとした。
待合室の中がタイヤのゴム臭かっただけで、
数えきれない人に胸が悪くなるような不快感を与え、
スタッフが頑張って良い仕事をしてくれたのに、
それに増すお客様がいなくなる要因を放置してしまったのだ。

 

店を引き継いでから1年間、その前にFC店さんが運営していた1年間、
誰も、待合室に1時間以上座らなかったのだろう。
あるいは、そういうことがあったとしても、
その時の不快感がお客様の不快感でもあることに誰も気が付かなかった。
ということか。

 

実に情けない残念なことである。
日頃から、お客様の立場に立って考えようと言ってきたくせに、
お客様がいる場所に、
お客様がいる時間、誰も座らなかった。
あるいは座っても、その不快感をお客様のものと思わなかった。
恥ずかしい話である。

 

一つの側でしか考えられないと、
もう一つの側のことを忘れてしまって、
本末転倒の商売をすることになる。

 

今すぐ、お客様の所へ行こう。
そうすると今まで見えなかったものが、鮮やかに見えてくるはずだ。
ブラックマターが、見える星達の100倍もあることが解るように。

 

 

今日はキーパープロショップの北海道ブロックミーティングである。
札幌は、もう紅葉が真っ盛りに近い。

 

 

いつも、プロショップミーティングの時は、
集中しているのか、写真を撮るのを忘れてばかりいて、
そのあとの懇親会の写真ばかりになって、プロショップミーティングは要するに飲み会なのかと、
誤解を与えそうであった。
今回は、プロショップミーティングが終わって、
皆さんが帰り支度をしているときにやっと気が着いて、
飲み会以外の写真をやっと取ることができた。
皆さん、プロショップは飲み会の集まりではありません。
真面目な、真面目な勉強熱心な人の集まりなのです。どうか誤解なきようお願いします。

 

今日の北海道ブロックミーティングは20名。
ほぼ全員出席である。

 

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    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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