谷 好通コラム

2008年02月19日(火曜日)

1849. 好意と仕事熱心さが仇になることもある

洗車とかコーティングは、
その店舗でほとんどすべてが造られる珍しい商品だ。
洗剤とかケミカルという作業のための材料(道具)は使ったとしても、
あるいは機械の手を借りたとしても、
初めから最後までスタッフの手と技術で、キレイになるのを確認しながら
ほぼすべて店舗のスタッフによって造られる商品だ。

 

対象になる車の形も大きさも千差万別、
車の色も、汚れ具合も、その時の車によってすべての要素が変わると言っていい。
加えて、そのお車を持ってこられたお客様のキレイに対する好みも感性もばらばらだ。
作業をする環境も一定ではなく、気候、天候にも大きく左右される。
洗車とかコーティングという商品には定型もなければ規格もなく、
絶対的な標準と呼べるものがないのが特徴だ。
それでも一定の品質をお客様に提供することが必要で、
それを実現するために、最大公約数的な「作業マニュアル」というものが用意されている。

 

スタッフは店舗に配属されたら、
まず、店舗のルールと基本的な接客を教えられ、
次に、この作業マニュアルに従って訓練を受けることになる。
この作業マニュアルは、
10年前に快洗隊の1号店である刈谷店が出来た時に最初に作られ、
それから何度も、何度も、手直しを受け、
店長会議でも新しい作業の方法などがよく提案され、
そのたびにみんなで検討してマニュアルの変更が加えられる。
新しい車種や新しい商品などが出来ても、新しいマニュアルも必要となってくる。

 

作業マニュアルは、車をキレイにする方法の蓄積であり技術である。
もう一つの意味として、作業マニュアルはひとつの目安であり「基準」でもある。

 

どんな車に対しても、どんな条件の中ででも、どんな車種に対しても、
マニュアルどおりに作業をしていれば完全というわけではない。
あくまでも最大公約数的な存在だ。
だから、その状況に合わせて変化させて使わなくてはならないものでもある。
私たちは機械ではないのだから、
決まりきったようなことしか出来ない機械ではないのだから、
だからこそ私たちは、変化に富んでいるあらゆる車を、あらゆる状況に合わせて、
隅々までキレイにすることが出来るのだ。

 

逆説的に言えば、私たち人間はマニュアルから外れた事が出来るから、
どんな車も同じようにキレイにすることが出来、それが人間のメリットであるとも言える。

 

ならば、マニュアルなど要らないのではないか。ということになる。
ところが、「基準」なしでその時に思ったように作業をしていくと、
どこまでやっていいのか、どこまでやったらいいのか解らなくなってしまい、
ある時は過剰サービスとなり、ある時は手抜きとなることもあるのだ。
この洗車商品を買う人の欲求自体には標準も、基準もないので、
特に高い欲求を持った人の規準に合わせていくと作業にキリがなくなってしまうし、
そこまでの欲求を持っていない人からすれば、
「何をいつまでやっているのか、早く終わってくれ。」となり、
親切で細かいことまでこだわってやったつもりでも
そのお客様を逃がしてしまうことにもなりかねない。

 

だから、「ここまでやればいい。」「ここまではやらなくてはいけない。」
という作業の基準、標準、目安、最大公約数が必要となってくるわけだ。

 

これを見失うことがある。
お客様に対しての貢献の心を持ち、
仕事熱心で、向上心があり、親切な人が陥りやすい罠である。
つい、親切心で、マニュアルから外れて作業が上乗せされ、複雑になっていく。
良かれと思ってやっていることが、
ある人には気が効いたことになるが、ある人には余計なこととなることもある。
仕事熱心や、お客様を大切に思う気持ちから出た親切が、
時には仇になることもあるということなのだろう。

 

今日の快洗隊店長会議四国ブロックで、
北神戸店の山本店長が、休憩中に言っていた。
「北神戸店の工事中、愛知の快洗隊に研修に入って本当に良かった。
店に入って、他の店舗ではあんなに速く店が回っていることに改めてびっくりしました。
気持ち良かったです。いいと思ってやっていたことが、かえって店の動きを止めて、
お客様に迷惑をかけていたことに気がつきました。もう、バッチリです。」と。
これからの北神戸店、楽しみになってきました。

 

石鎚サービスエリアから見た、西日本最高の夕日に浮かぶ石鎚山。

 

東京、羽田空港のホテルの中より。

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    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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