谷 好通コラム

2009年03月25日(水曜日)

2169.一瞬の軍国少年A・谷 好通

57歳の私の“子供”のころは、
まだ戦争の後遺症が残っていたのか、
漫画も戦争物が一番多かったし、
少年雑誌には戦闘機や戦艦、戦車などが必ず載って、
どの戦闘機が一番速いか、上昇力が強いか、何ミリ機関砲を何基装着しているかなどと
その兵器としての戦闘力を競って書いていた。

 

私が憶えている日本の戦闘機は、
まず海軍機の「零戦」(ゼロ戦ではなくレイセンと呼ぶ)が代表的。
星型空冷エンジンで、20mm機関砲2基と7.7mm機関銃2基。
戦闘機で初めて、増槽と呼ばれる切捨て式の追加燃料タンクを備えていた。
中島飛行機(今の富士重工?)の製作で、
デビュー当時はスピード、空戦性能(小回り)、航続距離、
装備の銃器の破壊力すべてにおいて世界一であった。
また、その当時の陸軍機の花形は「隼(はやぶさ)」、
7.7mm機関銃2基だけの脆弱な銃器ながらも
軽量を活かしスバ抜けた空戦能力で中国上空の制空権を守った。
そんな具合で
「雷電」「彗星」「紫電」「紫電改」「鐘軌」「飛燕」「疾風」「震電」「烈風」などなど。
漫画では私は戦闘機物が一番好きで「紫電改の鷹」なんてのをよく憶えている。

 

戦艦はなんと言っても「大和」「武蔵」46cm砲は世界一の威力だった。
大和が旗艦になる前は40cm砲の戦艦「長戸」「陸奥」が
交代で大日本帝国海軍の旗艦を務めていた。
戦艦「日向」「愛宕」「伊勢」「扶桑」「榛名」「金剛」「山城」・・・・・
航空母艦「信濃」「赤城」「瑞鳳」「飛龍」・・・
もうほとんど忘れてしまったが、子供の時はそれぞれ十以上のその名前を知っていた。

 

あの頃、私は軍国少年Aだったのかもしれない。
人殺しの道具でしかない兵器が大好きであった。
今の子供の怪獣大好きと同じレベルで
「戦闘機」「戦艦」「戦車」が大好きだった。
それが人を殺す道具でしかないことを全く思わなかった。
子供は、男の子はいつの時代も「強いもの」に憧れるのかもしれない。

 

今日はお客様周りで神奈川県を巡った。
ところが、担当の青木所長が、先日、大遅刻をして失敗をしたので、
ものすごく時間に神経質になり、
余裕をたっぷり取って、横浜から横須賀に行くのに2時間以上の時間を取っていたので、
横須賀で本当に2時間近く時間が余ってしまった。
(道が空いていて30分かからなかったから)
それで、ボォ-としている訳にも行かず、
「アメリカの横須賀基地に行って軍艦を見に行こう」と誘い、
NAVIで米軍基地を目的地にセットして走ったのだが、見えるのはゲートだけであった。
チラッと潜水艦の黒い姿が見えたが、紡錘形が艦全体にまともに見えたので、
あれは米軍の原子力潜水艦ではなく、小型の日本の海上自衛隊の通常潜水艦であろう。
そんなことをブツブツ言いながら、走ると
「三笠公園」という標識が目に入った。

 

横須賀で「三笠」と言えば、「戦艦 三笠」であろう。
そう思って覗いたら、本当に「戦艦 三笠」があった。
もう海には浮いていなかったようだが、公園に本物が置いてあるのだ。

 

ルンルンに見に行く。
「戦艦 三笠」は第二次世界大戦の前の第一次世界大戦のそのまた前の、日露戦争の軍艦だ。
東条平八郎が、ロシア・バルチック艦隊を撃破した時の、大昔の軍艦である。
それでも本物の軍艦を見るのは初めて。
気の乗らなさそうな青木君を連れて大昔の旧艦「戦艦 三笠」に乗る。
緊張してじっと時間を過ぎるのを待つだけではつまらないし、勿体ない。

 

ほんの20分でしかなかったが、
私は、一瞬の軍国少年Aになった。

 

大人になると、余計な事をいっぱい考えたり、
やらなくてもいいことをやりたがったりする。
もっとシンプルに生きればいいのに。

 

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2009年03月25日(水曜日)

2168.茶トラの猫のチーちゃん

茶トラのチーちゃんはハンターだ。
堤防の草むらを一日中監視して色々な生き物を捕まえてくる。
その辺のトカゲの尻尾が途中から切れてほとんど短いのは、チーちゃんのせいだろう。
両手で持たなくてはならないほどでっかいモグラを捕まえてきた時のチーちゃんは
これでもかの得意顔であったらしい。

 

生まれて数週間しか経っていないころ、
親にはぐれたのか、ガリガリに痩せて、蚤まみれで拾われたチーちゃんは、
信じられないほど大きく、立派で美しい猫に育った。
猫は本能としてハンターだ。
動くものには、押さえ切れない本能がうずくのか、何にでも飛びかかって行く。

 

人間とじゃれていても、
じゃれているうちに本能のスイッチが入るのか、
本気で爪を立ててくるし、噛んでくる。
それでもどこかで安全装置が働いているのか、
軽い引っかき傷で済む程度にしか力は入れていない。
本能としての狩と、遊びが微妙にバランスを取っているようだ。
とは言っても、人間の腕や足にはくっきりと跡がついて、少し血が出ることもある。
微妙なバランスだ。

 

そんなチーちゃんも
1歳児が恐る恐る手を出すと、そっとやさしく舐めるだけで
決して爪を立てたり、歯を立てたりはしない。
「お前はまだ、私が本気で遊んでやるには速すぎるわい。」と言っているようだ。

 

 

ペットは、犬でも猫でも自分は人間の仲間であることを知っていて、
トカゲや小鳥、モグラなどは、明確に獲物となるべき相手だが、
人間は自分たちと同類であり、獲物とは違う相手と認識しているようだ。

 

獲物ならば、相手が強かろうと弱かろうと容赦なく攻撃するが、
仲間である人間には、小さな弱い者である子供と見分け、
やさしく、やさしく、いたわるように接する。
人間の自分に対する優しさと信頼に応えるように。
生き物とは素晴らしいものだ。

 

それに対して人間はなんと悲しい性を持った生き物なのか、
自分に与えられた信頼を、
目先の小ざかしい損得計算で裏切ってしまうこともある。
人間の発達した脳細胞を猫のチーちゃん以下の方向に使ってしまうこともある。

 

自分の中にもきっとあるだろうそんな愚かさを見つめ、
茶トラのチーちゃんを思わず尊敬してしまう自分は、
謙虚である心を決して忘れなければ、
ひょっとしたら猫のチーちゃんに追いつけるかもしれない。

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    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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