自分から病院の外に何かをしようと思っても、
電話をかけるのか、
メールを書いて送るくらいしか出来ないのですが、
会社のみんなは私が病院に入っている事を知っているので、
暇つぶしで言ってきたと思うくらいで、
何を言っても効きはしないでしょう。
それでもついゴチャゴチャと書いてメールを送ったりします。
まるで世捨て人になったような気分です。

栄養分が肝心であって美味しさにはあまり興味のない決められた三食を、
決められた通りの時間に規則どおり食べて、
その前後に体温や血圧など色々なことを調べて記録する。
その間にMRIとかCTとか色々な検査をやって、もう6日目です。
自分のためだけの6日間。

たとえば、少なくとも、私の脳の中に動脈瘤はなさそうです。
私の年齢になると心配になってくる
「ガツンと頭を殴られたような痛みを伴って脳のどこかで出血する。」なんてことは
当分、私は心配しなくて良さそうです。
たとえば心臓は・・・・・・・大丈夫のようです。
そんなことが次々に解ってきていて、
私は自分が思っている以上に丈夫であることが確認されつつあります。
それが目的でしたが、
意外となんの感動があるわけでもなく、
何があったかあまり記憶のない6日間です。
アルコールを6日間まったく飲んでいないのに自分が平気なのは驚きですが。

今日のテレビでは台風に伴う大雨の報道がひっきりなしに行なわれ、
最大限の警戒を、と呼びかけていますが、
ずっとテレビを見ていると、
民放では警戒を呼びかけているというよりも、
とにかく非日常的な情景を選んで、その部分だけを切り取って映し、
レポーターが怖がって見せて、不安を煽っているように思えてきました。

テレビは見てもらってなんぼ、
なので、人が興味を持ち、釘付けになるような情景を写し、
興味を掻き立てるようなことを言い続けるものなのかもしれません。
テレビの目的は、見てもらう事です。
だから、見る人が、見たいものをひたすら映し、
見る人が、思いたいと思っていることをひたすら代弁します。

そういえば、
特に考えてしまうのはある種の週刊誌です。
このような週刊誌の目的は、あくまでも買ってもらうことなので、
人の悪口をえげつない言葉で見出しにして、
買ってもらおうとします。
すべての週刊誌がそうではありませんが、
最も売れている種類の週刊誌に多いです。
そこには、優しさとか、尊厳とか、学習とか、希望なんてものはまったくなく、
ただひたすら自分を正しく、人を悪く言う、悪意に満ちた言葉が並びます。

たとえば、
有ること無いことを書きたて、
確認されている事と、勝手な想像をごちゃ混ぜにして、
ありもしない不安を煽りたてます。
今、その絶好の餌食が放射能のようです。
不安がる必要のないことまで、あたかもそこに不安があるように書いて、
みんなを怖がらせ、不要な警戒をさせます。
不安な世情では、そういうエセ情報がよく売れるのです。
被害者をより苦しめている風評被害とは
こういうところから出てくるのかと思いました。

みんなで、何にでも「どうしてくれるの」と、
モンスターペアレンツか、クレーマーが迫るように、
ヒステリックな被害妄想が、
すべての政治、政党はいつも悪く、
政治家はすべて無能でしかも強欲。つまり悪者として、
自分を含めた市民は、いつも、すべて正しい被害者とする偽正義が
日本の政治から力を奪い、日本を壊していくような気がしました。

何でこんなことを書くのかと言うと、
つい病院の売店で何年ぶりかに悪口見出しが並ぶ類の週刊誌を買ったのです。
そしてこんな文章が、何百万部も売れているのかと思うと恐ろしくなったのです。

ついでに、昨日の昼。
病院内の床屋さんで頭を刈ってもらいました。
私は床屋さんに行っても、絶対に「顔剃り」をしてもらいません。
「眉毛は男の力の源」と何かで読んで、
その理由にものすごく納得したので、
男の眉毛はそのままにしておくべきと「顔剃り」を断ってきたのです。

ところが、病院の中の床屋さんは、
大昔に行っていた小さな床屋さんの雰囲気があって、
その空気が懐かしくて、
つい「顔剃りは要りません。」と言いそびれてしまいました。
それで床屋のお兄ちゃんは私の顔をさっさと剃ってしまい、
目をつぶっている間に、
眉毛をかなり剃って小さく「麿(まろ)の眉毛」のようにしてしまいました。
少なくとも私にはそう思えて、すごくいやです。

そろそろ台風が上陸しそうです。
申し訳ないのですが、病院の10階から高みの見物になってしまいます。
ごめんなさい。

昨日の夜、10階から。