谷 好通コラム

2008年06月05日(木曜日)

1933.日本民族の前にアメリカ市民として

何年か前、
最初にアメリカに来たころ、まず人種の豊かさに驚いた。
白人がとりあえず一番多いが、
黒人も、アジアン、ヒスパニック、インド人と
ありとあらゆる人種が、人種の違いを感じさせない自然さで混在している。

 

そんな状態の所にいると、
人種なんて人間の個性の一つでしかないことに気付く。
いずれかの人種間に優劣の差などあるわけがなく、
見た目の個性が違うだけだ。

 

今や飛行機の発達で世界のあらゆる場所が十数時間で結ばれ、
ほとんどの国がノービザで入れるようになり、
婚姻や出産によっていずれの国籍をも名乗れるようになり、
アメリカのようにある程度アメリカ国内で真面目に働くと永住権が得られる。
一定の条件さえ揃えば、いずれの国の国籍をも取れるようになってくると、
何世代かが経った後には「人種」なんて概念そのものがなくなっていることは確実だ。

 

エントロピーの法則に持ち出すまでもない。
人類が霊長類から抜け出てから100万年ぐらいか(?)
それから地球の各地に散った人類が、
たまたま住み着いた場所の気候に適合した遺伝子を濃くして、
骨格や皮膚の色が違った個性を持つようになり、今に至る。
人種とはたまたま住んだ場所の気候が違いに順応した結果だけの違いなのだ。
人とチンパンジーの遺伝子の違いは2%ほどしかないと何かで言っていた。
ならば人種の違いなどDNAの違いで言えば、
多分、1万分の1ほどの差もないのではないか。
それは同じ人種の中の個性の違いのDNAの違いほどもないのではないか。

 

歴史が記されるようになってから3,000年くらい。
人種という概念そのものが消滅するのに、
多分あと100年もかかるかどうか。
いまさら人種差別とかチャンチャラおかしい。
ましてや同じアジア人ならば外見の違いすらもまったくない。
差別感を持つのも、被差別感を持つのも、そろそろ時代遅れだ。
アメリカに来るとそんな感を強くする。

 

アメリカでは韓国人と中国人が急激に増えているそうだ。
韓国も中国も民族意識が高く
ナショナリズムを強く持っている民族である。
アメリカの中でもそれを感じることが多いそうだ。
しかしそんな民族的な意識がアメリカの中で消滅するのも時間の問題ではないか。
アメリカとはそういうところであろう。
あらゆる人種と民族が混在して経済的な活動を行っている国においては、
ナショナリズムは持っていても意味のないものになっていくだろう。

 

トニーさんのように約30年前にアメリカに住み着いた人たちの感覚を見るとそう思うし、
特にその娘さんのようにアメリカで産まれた人には、
アメリカ市民である意識は持っていても、
自分が日本民族である意識はまったくないに等しいだろう。
日本民族である前にアメリカ市民であるし、
アメリカ市民である前に人間であるのだろう。

 

かつて昔の日本は、
特に、かの大戦の時、日本は「神国」であり、
唯一神の宿る国として強烈な民族意識を持っていた。
しかしそれは、
太平洋戦争、第二次世界大戦、大東亜戦争、いずれの呼び方があろうと、
人と人が殺しあう人間として最低の行為を権力者として正当化するために
民族意識が利用され、あるいは、そのように鼓舞されていただけのように思える。

 

もっと大昔、
日本の戦国時代がそうであったように、
日本国内のいくつもの地域の権力者、豪族同士の争いとして、
同じ民族の中で殺し合いが行われてきた。
その場合、いずれもが戦う正当な理由をもち、悪いのはいつも敵であった。
それはヨーロッパでも同じであるし、韓国でも中国でも、
同じ民族の中での激烈な殺し合いが権力者の都合によって行われ、
アメリカにおいても南北戦争があった。
それが、
兵器の絶対的な発達と
移動手段の発達で戦争のスケールと単位が大きくなり、
今の国家の単位での戦争になってから、
今まで殺しあってきた同士が、「民族」というくくりでまとめられ、
同じ民族としての意識を高揚されてきた。
民族意識とは作り上げられてきた人為的な意識であったのではないか。
民族によってそれぞれの文化があって、
それはそれで守られていくべきものであろうが、
民族間で憎しみあったり、差別をしたりするような理由はまったくない。
ナチがゲルマン民族を優位な民族とし、ユダヤ民族を憎むべき民族としたように、
日本は神の国、最も尊い民族であり、他民族が劣等であるとして侵略の理由にしたように、
民族意識は、たびたび権力者のプロパガンダの道具に使われる。

 

そういう見方も出来るのではないか。
かつての戦争では、“民族”は戦争の理由になった。
その残りカスが、民族的な差別、被差別の形でわずかに遺物として残っているだけだ。

 

すべての人種とすべての民族が混在するアメリカで、
それぞれの民族意識よりもアメリカ市民としての意識でまとまっている姿を見ると、
血族を基とする民族意識が、
たまたまその地域で住んでいただけのわずかなDNAの傾向(違いではない)だけであって、
そんなもので結束するのはあまり意味を感じないし、
お互いが憎み合うことも必要ない。
ましてや殺しあうなどまったく意味がないことに気が付く。

 

核兵器の発達で地球全体を何回も滅ぼすだけの破壊力を持ってしまった人類は、
もう、そうそう簡単に世界的な戦争は出来なくなった。
どちらも勝てない戦争、
両方とも必ず全滅するという戦争は、
権力者として戦争をする意味を持たないからだ。
あっても局地的な通常兵器を使った制御された戦争だけが存在し続けるが、
それも、
インターネットという
世界中のあらゆる人と一瞬の内にアクセスできる手段を世界中が持ったからには、
民族間の唯一の違いである言語の違いをいつか克服する時、
偏った民族意識が消滅すると共に、
民族意識を利用した権力者のためのプロパガンダが効力を失って、
地球レベルでの本当の平和を手に入れるのだろう。そう信じたい。

 

憎むべき民族間の違いなど誰かの都合ででっち上げたられたものであって、
もともと憎み殺しあうべき違いなどどこにもない。
アメリカで、あらゆる民族が、たまたまその国に集まって、
民族が何であろうとまったく関係なく、アメリカ市民というくくりで生活し、
戦争もしている。
考えてみると、
アメリカは民族的なプロパガンダなしで戦争をする珍しい国だ。
世界平和を謳い文句にして、でも、しっかり経済的な理由もあって、
戦争をする。しかも志願兵だけで。
なぜこんなことが出来るのか、私は、もうしばらく考えなくては理解できない。

 

 

ロスの街には「ジャカランダ」の花がいっぱい咲いている。
元々ブラジルの木だと聞いた。
写真で見ると一見「桜」のようにも見えるが、
花がピンクではなく、「紫」なのだ。
葉っぱがほとんどなく花だけがびっしり咲くのは桜と同じだが、
花が紫になると、ピンクの花の桜とはまったく違う印象である。

 

 

すでにアメリカ国籍をとって名実ともにアメリカ市民であるトニーさんと、
とりあえず永住権を取ろうと頑張っている英語ペラペラの里美さん。

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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