谷 好通コラム

2006年10月26日(木曜日)

1498.膨大な報告の効果

約1ヶ月前、SUGOサーキットで練習中、
何の前触れもなく不意にエンジンブローした我がKeePreゴルフの修理が
無事に終わり、明日、神奈川にある工場COXに取りに行く。

 

11月5日のゴルフGTIカップシリーズの最終戦「筑波戦」に何とか間に合ったわけだ。

 

明日、湘南での午後からの仕事の後、
COXに車を取りに行って、そのまま東名高速を走って一度名古屋まで持って帰り、
明後日の午前中の大切な仕事の後、
今度は筑波までその車で走って行き、
その翌日、つまり明々後日、10月28日には筑波で練習もする。
筑波は私にとって初めてのコースであり、
おっさんレーサーとしては絶対に練習が必要なのだ。

 

二日がかりの神奈川⇒名古屋⇒筑波は、
たぶん、全部で700km以上はあるが、
新しいエンジンの“慣らし”をする必要があるので、そんな面倒な事をすることになる。

 

7月30日の「もてぎ戦」以来、
途中のSUGOでの痛恨のエンジブローを挟んで3ヶ月以上、
溜りきったストレスを一挙に発散すべく、
シリーズ最終の「筑波戦」に全力を尽くして戦う。
満を持してのレースに、我が心が子供のように躍っている。
仕事以外何も趣味の無い私だが、
自らの本能を猛獣の心にして戦うレースが心底好きで、
戦いを前にして、心が躍っている。

 

 

それにしても、SUGOでのあの突然のエンジンブローは不可思議なことだった。
コンロッドがシリンダーブロックを破って飛び出すまでに壊れたエンジンは、
全損となって、ベースエンジンをそっくり交換するまで重症であった。
DSGという最新の自動ギヤシフト装置を持っているこの車では
絶対にオーバーレブ(回しすぎ)はないし、
パワーダウンなどの前兆もなかった。
本当に納得のいかない突然のエンジンブローであった。
だから、
いまだにクレーム対象のトラブルではないかと思っているが、
あとは、ディーラーさんに対して
メーカー保証の対象になるのではないかとちょっと粘ってみるしかない。

 

しかし、不思議にも
修理をしてくれたCOXに対して文句を言う気には全くなっていない。

 

“COX”とは、
フォルクスワーゲンとポルシェのレースに関わる仕事をする会社で、
トヨタのTRD、日産のNISMOに匹敵する存在なのだろう。
私はよく知らないのだが、たぶんそんな存在だろうと思う。
ゴルフGTIカップレースと、ポルシェカップレースの主催者でもある。

 

そのCOXのメカニックの責任者であろうか、吉永さんという人が、
私のゴルフの修理を担当してくれた。
彼が実際に手を下したのかは分からないが、
修理の過程を、膨大な写真と共に、じつに事細かに報告をしてくれて、
その度に、自分の車が今どうなっているのか、
どんな風になっていたのがどのように処理されているのか、
克明に理解できて、
最初は半信半疑であった気持ちが
今では、「COXで修理をやってもらって良かった。」と本気で思っているのだ。

 

途中で修理の様子を見に行ってくれた石川朗選手も、
「あれはすごいですよ。
あそこまでやっているとは思わなかったですね。丁寧な仕事で、
これはCOXで修理したのは正解だったと思いますよ。」と言っていた。

 

彼の言葉からしても
実際に丁寧でいい仕事をしていてくれたことは間違いない。

 

では、「キチンといい仕事をしているのだから、それでいいだろう。」と、
あんなに細かい報告をしてくる必要があったのであろうか。
たとえば、会社でこんなことがある。
「ちゃんと仕事をしているのだから、
いちいち“報告”なんか、何故しなきゃいけないんだ。
やるべき事を、ちゃんとやっていればいいんだろ。
いちいち報告をさせるなんて、上司は自分を信用していないのか。」

 

腕に自信のある気難しい職人気質の人が言いそうな言葉であるが、
これは間違っている。

 

「報告」は信用できないから求めるのではない。
「報告」を求めるということは、信用するとか、しないとか
そんな低レベルの話ではないのだ。

 

「報告」によって、その人の、その仕事をより知ることになり、
理解することによって正しく評価し、
その仕事に正しく協力が出来る事、それが報告の目的なのである。
乱暴な言い方をすれば、
「報告すらしない者を信用せよという方が信用できない。」とも言える。

 

「報告」「連絡」「相談」によって、
つまり情報を相手に与え、また相手から情報を受け取ることによって、
自分を理解してもらい、相手を理解することによって、
より深く、お互いがお互いを信じ合うことが出来るようになるものだ。

 

情報は与えれば与えるほど理解を得られる。
報告はすればするだけ、理解され、協力を得られ、いい仕事が出来る。

 

たとえば、
病院の医者で、
「ごちゃごちゃ聞きたがらずとも、黙って医者の言うとおりにしてればいいのだ。」と、
患者の病気について何の説明もせずに、
ただ「出された薬を飲んで、言われたようにしていろ。」
と言うような医者に、患者は安心して治療を受けることが出来るだろうか。
不安になるに決まっている。
たとえ、医者にとってつまらない風邪引きの患者にでも
詳しく病気のことを説明してくれる医者が患者から頼りにされ、信用される。

 

情報は相手に与えれば与えるほど信用されるもの。
これは、仕事の上での同僚の関係でも、上下の関係でも言えることであり、
顧客との関係でも、会社と社会の関係でも言える大切な原則だ。

 

COXの修理は、
8,600円/時間・人と決して安くはない。
我が「?25KeePreゴルフ」の修理代は、
十勝を共にしたキーパーインテグラを売った代金とさほど変わらなかった。
そう、インテグラを売ってしまったのだ。(涙)

 

それでも、明日は気持ちよくKeePreゴルフを取りに行けそうである。

 

思わずギャーっと声が出てしまった修理代の見積もりと同時に、
以下の吉永さんからのコメントがなかなか泣かせるのである。
「お世話様でございます。
当初のお見積もりの9月26日時点では、車輌火災の事は不明でした。
誠に、申し訳ございませんが、追加部品及び追加作業が増えましたので
金額も変化してしまいました。
今回の作業内容で、納期もありまして、火災の追加作業を含みまして、
作業時間は2名で正味、各96時間を要しておりますが、
当初見積もりの基本ベ―スの作業時間(5h+15h=20h +追加の31h)合計51hで
明記をさせて頂いております。
消化剤の被害は当初思っていたより、隅々の部品に広がっており、
車輌の今後の腐食防止の為、徹底的に作業を致しました。

 

今回、谷 様からお車の修理依頼された事で、VWディ-ラ-以上をモット-に、
お車に愛情を持って作業をさせて頂きました。
大変でしたが、あらためまして、良い仕事をさせて頂きました事を、谷 様に感謝を致します。
値段が変わってしまいまして、心が痛みますが、
何卒、ご了承をお願い申し上げます。
以上、宜しくお願い申し上げます。 吉永」

 

私は甘いのかもしれないが、
インテグラを売った金で、喜んで、ギャーッという修理代金を払おうと思っている。

 

残念ながら吉永さんは明日から岡山のレースに行ってしまうそうなので会えないが、
今度の筑波のレースで会えるのが楽しみだ。
会ったら心を込めてお礼を言おうと思っている。

 

COXの吉永さんからの100枚を越す膨大な写真たち。

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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