谷 好通コラム

2006年02月19日(日曜日)

1348.1年半ぶりの快感

ふと気が付いたのは、高速に入ってしばらく走ってからであった。
「あっ今日は日曜日なんだ。」
思わず独り言が口に出た。

 

今日は朝8時03分の新幹線に乗って、まず広島に行き、
広島の新しいトレーニングセンターの打合せをして、
また新幹線で福岡に行き、
レンタカーを借りて、福岡の新しいトレーニングセンター作りの打ち合わせ、
そのまま熊本に走り、アイビー石油さんに取り付ける快洗Wingの打ち合わせ、
何とか最終の熊本⇒中部国際便に飛行機に乗って帰って来る。

 

なんともはや、せわしい出張だが、
とにかく普段の時間がないので、仕方がない。
明日の都合を考えて、車で名古屋駅に向かった。

 

名古屋駅8時03分発に乗るならば、
7時40分くらいには駅について、切符を買いたい。
朝一番は切符売り場が混んでいて、
行列が長い場合があるので20分前には駅に着くようにする。
とすると、駐車場に車を入れる時間と朝の名古屋高速の混雑を考えると
1時間前に出なければ、
そう考えて、6時40分に出たのだが、
高速道路に出た途端、道がガラガラである事に気が付いた。

 

今日は日曜日なのだ。
目の前にほとんど車がいないのだ。
おかげで、名古屋駅には7時15分ごろに着いてしまった。

 

日曜日まで仕事をしているということを言いたいのではない。
昨日、土曜日、あまりにも気持ちよく遊んでしまったので、
今日が月曜日であると勘違いをしてしまったのだ。

 

それほど気持ちよく遊んでしまった。

 

場所は富士スピードウェー。

 

一昨年の夏に十勝で24時間レースに使った?25インテグラを、
去年、岡山から富士スピードウェー近くの東名スポーツさんに持ってきていて、
Nプラス仕様であったのをN1仕様に直してもらっていた。
そのシェイクダウンを富士スピードウェーでやったのだ。

 

十勝24時間レース以来、
本格的にこの車に乗ったのはほとんど初めてで、
去年の春、この車でMINEのジュニア耐久に出たときには、
レース前に私が乗った時、数周も走らぬうちにブレーキオイルが抜け、
最終コーナー外に突っ込んで練習の時間を失い。
結局レースには出なかった。

 

だから、十勝で24時間レースに出た後、
ほとんど乗っていなかった事になる。

 

1年半ぶりの?25インテグラである。
それも、初めてのレーシング走行で走る富士スピードウェー。

 

 

前夜の夜遅く御殿場に入って、
インターのすぐ近くのホテルに泊まり、
久しぶりの「遊び」を祝して、
“公私”の“私”では師匠に当たるH.オサムと祝杯を挙げた。
久しぶりにレース走行をするための祝杯だ。

 

富士スピードウェーは、一昨年の大改装を経て素晴らしくきれいになっている。
それに東京に近いこともあって、スポーツ走行を楽しむ人が多く、
コースの走行スケジュールは混んでいる。
私たちは、あらかじめインターネットでタイムスケジュールを見て、
走行枠の予約を入れてあったのだが、
ナンバー付きの一般車枠を2本、
レースカーの走行枠を2本予約できただけであった。

 

まず1本をナンバー付きの車で走って、
コースをよく憶えてから、レースカーで走る事にしていた。

 

ナンバー付きの車は我が通勤車の?8795「ハナクソ号」である。
全くのノーマルの状態だが、
デフをノンスリップタイプのものに換え、
タイヤも軟らかいコンパウンドのラジアルにしてあるが、
肝心のサスペンション周りはノーマルのままである。

 

11時40分からの30分間。
ノーマルのハナクソ号に私とH.オサムが半分ずつ乗る。

 

ノーマル車と言えども、一応充分な装備で乗り込む。
写真の私は何をやっているかというと、
ヘルメットを被ってからメガネを差し込むのだが、これがなかなかうまく行かない。
苦労して、メガネを耳に押し込んでいる図。

 

 

富士のコースは本当に高速コースだ。
ノーマル車でゆっくりコースを記憶しながら走る。
ゆっくりと言ってもノーマル車として全力で走るのだが、
ナンバー付きの車でも、バリバリにチューンアップしている車が多く、
私を抜いていく車が多い。

 

特にストレートでは、ノーマル車では180km/hでスピードリミッターが効いて、
それ以上加速しないように出来ている。
180km/hでは、ストレートの半分をちょっとすぎたぐらいで出てしまうので、
仕方なしに、そのあとはハーフスロットルで走る事になる。
(ディラーに行き、リミッターをはずして下さいとお願いしたら、きっぱり断られた。(^・^))

 

それでも、前もってコースを憶えるためには知っておいて良かった。
富士はMINEと全く違うコースであり、
とにかく高速域での走行が多く、
最初の2.3周は、そのことだけに面食らってしまい、
走っていることだけで精一杯であった。
4周、5周目かで何とか、どこにどんなコーナーがあるのかが、
やっと頭に入った程度だが、
それだけでもものすごく違う。
少なくとも“道に迷う”ことはない。
(冗談ではなく。コースをよく憶えていないとどこを走っているか分からなくなる事がある。)

 

レースカーによるスポーツ走行の枠は、二人とも一本ずつしかない。
そんなレベルの習熟をやっている暇はないので、
このノーマルカーでの15分ずつは、大変に意味があった。

 

そのあと昼ご飯を食べて、
いよいよレースカーでの走行だ。

 

まず、H.オサムから出る。
私はすぐに、コースの外に出て、
色々なコーナーに走っていって、
彼がどんな走り方をするか、他の車がどんな走り方をするか、
自分はどうすればいいのか、興味津々で
金網にへばりつき目を凝らして見る。

 

H.オサムに与えられたエンジン回転数は8000回転。
通常のレースでは、この車の場合レースの時は9300回転ぐらいまで回すので、
かなり低めである。

 

だからレースでは必要のないシフトアップをしたりダウンをやったり忙しそうであった。
H.オサムの走りと他の車の走りを見ていると、
どこが違うのかよく分かる。
彼も色々と悩みながら走っているようだ。
約30分走って、ベストタイムは2分04秒9
ワンメイクレースのインテグラが予選で2分00秒ぐらいと言っていたので、
まぁまぁのタイムではないか、
?25インテグラは、耐久レース用なので、
燃料タンクが100L用とでかいし、車載ジャッキがあるので、若干重い。
それも計算に入れれば、
初めて走ったコースでもあるので、まずはこんなところか。

 

 

次は私の番、
コーススケジュールの関係で2時間ほど間が空いて、
日が陰って、ぐんと寒くなってきていた。

 

一度脱いだレーシングスーツを着込んで、ヘルメットを被る。
今度はヘルメットを被ってからメガネはうまく入ったが、
自分の息で白く曇ってしまう。
全くメガネには苦労させられる。

 

 

気合を入れて出る。

 

 

ピットから出て第一コーナーはきついコーナーだ。2速。
第一コーナーを抜けて、
頭が出口の方を向いたらすぐに全開で加速である。
コースのすべてがものすごく広いので、コーナーを抜けてからの加速地点が早い。

 

第2コーナーのコカ・コーラコーナーまで、2速、3速、4速と上げていく、
コースは微妙に曲がっているが、
出来るだけまっすぐに最短距離で走る。
H.オサムの場合は8000回転までに抑えられていたので、
ここでは5速まで上げていた。
つまり4速のままだと8500回転くらい、
コーナー手前100m手前で、ぐっとブレーキングして、3速に落とし、
出来るだけ高い旋回速度を保ちながら抜ける。
ところが、常連と見られるインテグラは
ここを4速で回っていたそうだ。
3速に落とすようではまだ旋回速度が低いということなのだろう。
コーナーを出て目いっぱいアウトにふくらみながら前回で加速をしていく。

 

やがて、富士名物の100Rに入っていく。
半径100mの大きな半円が延々と180゜続く。
ここは、どう走ったらいいのかよく分からない。
他の車を見ていると、
インについたりアウトに出たり複雑な動きをしているが、
どういう意味でそうやっているのかさっぱり分からない。
かなりの秒数連続して同じ方向のGに耐えながら、
もっとアクセルを踏むべきかどうかずっと迷いながら、
でも結局踏み切らずに、多分ゆっくりと100Rを抜けると、ヘアピンが目の前に来る。

 

ヘアピンと言っても、3速で回るかなり大きなヘアピンコーナーで、
かなりのスピード入っても、コーナーを出てからアウトに膨らみきれない。
コースがとにかく広いのだ。
3速でかなりの高い回転で旋回してもいいようで、
このコーナーをヘアピンとは考えない方がいいようだ。
こんな速いヘアピンは初めての経験である。

 

ヘアピンを抜けたら、長いゆるやかなカーブを描きながら、
シケインに向けてしばらくの間アクセル全開のバックストレートである。
3速、4速、5速、
5速もかなり長く伸ばす。
MINEの正面ストレートよりもかなり長く、
すごく気持ちのいい所だ。
エンドでは時速は200kmをオーバーしているかどうか。

 

バックストレートの終わりには鋭角のシケインが設けられていて、
150mくらい手前から急減速である。
5⇒4⇒3⇒2と、3段階のヒールアンドトゥとシフトダウン。
かなりのマイナスGがかかる。

 

私はこのシケインへの減速で、2周目に派手にスピンをしてしまった。
左後ろのタイヤがロックしてしまったのだ。
少しブレーキバランスが悪かったのと、
リアウィングを着けていなかったので、リアが不安定であったことと、
私のブレーキングが少し唐突過ぎたこと、
たぶん、この3点が原因で、ブレーキングに失敗して、
コースから外へ向かって3回転ほどした。

 

びっくりした。
全く怖くはなかったが、びっくりした。
車が回っている間の景色は、
テレビとか映画で風景がくるくる回る場面のそのままであった。

 

そのあと、ちょっとうろたえてしまったので、
残りのコースをゆっくり走って、ピットに一度戻る事にした。
こんな時は無理して走り続けない方がいいのだ。
ピットで、リアのブレーキのバランスを取ってもらいながら、気を落ち着かせる。

 

 

スピンのあとは、身がすくんで、思い切って走れなくなってしまう時がある。
しかし、そこで走るのをやめてしまうとショックのあとを引き、後遺症が残る。
ここは一発度胸を決めて、
アクセルを思いっきり床まで踏み込むのだ。

 

奥歯に力を込めて、
踏むべきところでアクセルを床まで踏み込むと、
何とかペースがつかめてきて、
気持ち良く走れるようになる。
スピンしたシケイン前で慎重にブレーキングするようになった以外は、
大胆にコーナーに突っ込むことが出来るようになる。
特にストレートでは5速で8500回転のレブリミッターに当たる初体験。
220~230kmは出ているだろう。
快感である。

 

ただ、2周目のスピンで左後輪のタイヤに大きなフラットスポットを造っていて、
ストレートの半ばでかなりスピードが乗ってきた頃から激しい振動が出て、
サインボードを見ることすらツライ。
でも、何も怖いとは思わない。

 

何周か走っているうちに、
一緒に走っているレースカーの動きを見る余裕も出て、
ラインの取り方、ブレーキングポイント、コーナーの旋回速度など、
短時間にたくさんのことが学習できる。
当然のように、タイムもだんだん上がってきて、
ベストは2分07秒8、H.オサムに2秒9遅れである。

 

そんな頃には、
気持ちのいいGと、高周波の振動が、脳の真ん中を痺れさせてくる。
アドレナリンが出ているのだろうか、あるいはドーパミンか?

 

快感である。
誤解を恐れず言うならば、間違いなくエクスタシーである。
走っている間中、ずうっとエクスタシーのままである。
快感のきわみである。

 

1年半ぶりに、このエクスタシーを味わった。
存分に味わった。

 

楽しかった。
あ~~~~~ッ、楽しかった。

 

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    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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