谷 好通コラム

2004年09月29日(水曜日)

1030.夜.背筋に冷や汗

私の会社も創業以来約20年、
長い時間の間には、過去何度か、倒産するのではと思ったこともある。

 

資金繰りについては、今では、私の頭の中はレジカウンターのようになっていて、
四五ヶ月先の月末の残高がいつも表示されている。
これは、創業の初期、月末の資金繰りに苦労した後遺症かもしれない。
なんでもない時に、ふと計算してしまうのだ。

 

たとえば夜中、
ウツラウツラしている時に、突然計算が始まって、
「あれっ?うちの会社、五ヶ月先に倒産するじゃん。」
なんてことになるのだ。

 

そうなると、もう眠られない。
目がパッチリと開いて、
たぶん冷や汗をかいていたのだろう。
背筋がゾクッとしてくる。

 

でも「今考えても仕方ないから、今日はとりあえず寝よう」
なんて一生懸命寝ようと思っても無駄。
寝ようと思えば思うほど頭が冴えてきて、結局起き出して、
電卓持ち出し、計算を始める。

 

今でこそこんな事は無くなったが、
10年ほど前までは、こんなことが何度かあった。

 

電卓と紙と鉛筆で検算をしてみると、
ほぼ合っている。
間違いなく五ヵ月後に我が社は資金ショートを起こして、
不渡り手形を出し、倒産することになっている。

 

こんな場合には、
即、翌日から資金調達を検討し始める。
5ヵ月後に資金が足りなくなるわけだから、そんなにバタバタはしない。
じっくりと銀行さんと交渉を始めるわけだ。
もちろん「五ヵ月後に資金がショートするから・・」なんてことは言わない。
いろいろな計画を立てて、
通常の資金調達の話として交渉する。
「いつまでに必要なのですか?」と聞かれたら、
「別に急いじゃいないですよ。二ヶ月後でも、三ヶ月後でもけっこうです。」

 

本当にそうだから、正直に言うだけだ。

 

銀行さんも、緊急に必要だということならば警戒する。
それは経営状態が切迫しているということだからであり、
経営が切迫している企業に融資をする銀行などありはしない。

 

「急いでいない、別にいつでもいいですよ。」ならば、
銀行さんも安心するのだ。
何らかの計画があっての融資の申し込み。
大抵の場合、二三ヵ月後には融資が実行されて、
あの夜分かった五ヵ月後の危機は、誰も気がつかないまま、
というより危機になる前に
回避されてしまうのだ。

 

これが、「今月の月末に資金的なショートが起きるかもしれない。」と、
切羽詰ってから気がついたのでは、
本来調達出来たはずの資金も、
銀行さんも、こちらの切迫感を不用に警戒して、
ひょっとしたら調達できないこともあったかもしれない。

 

五ヶ月前に準備を始めた資金調達と、
一ヶ月前に気がついて、あわてて資金調達しようとするのでは、
その結果に雲泥の差があるのだ。
切羽詰り、あわてて申し出た資金調達が結果として失敗すれば、
本当に不渡りを起こして、倒産などということもあり得るのだ。

 

同じ経営内容であっても、
五ヶ月前にそれに気がつけば、余裕を持って準備できるので、
その危機は、危機でも何でもなく、ただの資金繰りの一過程としてクリアできたものが
気がつくのが直前であったばかりに、無用に銀行に不安を抱かせて、
結果的に倒産してしまう。

 

そんなことだってあり得ることなのだ。

 

もちろん、何ヶ月も前から予定を立てても、その通りに行くとは限らない。
しかし少なくとも“お金”については、
入ってくるお金は思ったより少なく、
出て行くお金は思ったより多くなってしまう。というのが普通であって、
その逆は滅多にあるものではない。
資金的な見通しとは大抵の場合、甘くなるのが通常で、
その上でショートが予想されるのであれば、
その事態は間違いなく来るものだ。

 

だから、前もって何ヶ月もの先を予想しておくことは、
経営をする者としては、絶対にしなければならないことであって
それが、直感としてやれるようになったら本物。
その直感も、ここ10年以上危機信号を送ってこない。

 

あのころを思うに
どんな危機でも、前もって分っていれば、
危機でも何でもない。
ただの解決すべき状況でしかない。
これは資金繰りという場面だけではなく、あらゆることに言えることなのだろう。

 

 

今月の月末は明日。
今晩の台風は、あっという間に通り過ぎるに違いない。

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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