谷 好通コラム

2004年09月09日(木曜日)

1016.キャッシュレス?

話は「キャシュレス」の続き。

 

現金を使う機会が減った。
何らかのカードなどを使うことによって、顧客は便利になったし
そして、売る側としては、
何とかこのカードで顧客の囲い込みをしたいと色々と工夫する。

 

キャッシュレスと完全にはリンクしているわけではないが、
マイレッジもその一つの方法で、
全日空ANAはマイレッジをフル活用して、
儲かる客=ビジネス客を囲い込んだ。
私も囲い込まれたその一人である。
マイレッジで有効に戦おうとすると、密なダイヤが必要となる。
その結果かどうか分からないが、競合であったJALとJASは合併に追い込まれ、
それでもANAは、いまだに国内線のビジネス顧客の囲い込み体制に揺るぎはない。

 

何らかのカードなどを使っての顧客の囲い込みは、
販売戦略上、避けて通ってはならない問題である。

 

カードには、後で支払いをするクレジットカードと、
あらかじめお金を払ってからカードを使う「プリペイドカード」がある。

 

クレジットカードは、
今お金がなくても商品を買うことが出来る消費者側の利便性と、
その代金が決済されない、つまり焦げ付く恐れがあるという販売側のリスクがある。
そのリスクを拡散して薄くするために信販会社があり、
その信販会社を通すことによってリスクを集中を避けている。

 

クレジットカードで物を販売すると、
販売店が、クレジット手数料として2~5%程度クレジットカード会社に天引きされる。
これは「手数料」というより、
クレジット利用者に、ある一定の焦げ付きが出ることを前提とした
リスクヘッジ料と言える。

 

考えて見れば、
払う気もないのにカードで物を買うという一部の反社会的な奴らがいて、
そのリスク、つまり焦げ付きが発生するリスクを分散したものを
きちんと払う当たり前の人たちが
クレジットの手数料として払っていることになる。
もっともこの手数料は、クレジット利用者から直接取るのではなく、
販売者から徴収することになっているので、
販売するものは、そのコストを織り込んで商品の販売価格を設定している。
だから、クレジットを使わない人までもが、
一部の金を払わない馬鹿者が払うべきお金の分までを負担していることになる。
そう考えると、クレジットは誠に理不尽な一面を持っている。

 

いずれにしても、後払いのクレジットは
販売者から、リスクヘッジ料を取ることになっているので、
カードを使うこと自体にコストがかかっていることになる。
最初からコストがかかる仕組みなので、
顧客の囲い込みに、あまりコストをかけることが出来ない。

 

販売者が発行するクレジットカードを、発行者の店舗で使うと
何%かのメリットがつくという例が、
ありそうで、あまり多くないのは、そういう理由であるようだ。

 

ならば、クレジットと決済方法が逆になっている「プリペイドカード」はどうか。
これは、販売者にとって有利な条件が揃っている。
先にお金が支払われてからカードが発行されるので、
焦げ付きの発生は原理的にない。

 

しかも、そのプリペイドカード(プリカ)を利用している途中で紛失する場合もあり、
その分は発行者側のそっくり儲けになってしまう。
(ただ、これはあまり多くはないそうだが)
ランニングコストは、ほぼプリカ本体の発券コストのみ。

 

プリカは、販売者側にメリットが大きい分、
消費者へのメリットも付けやすい。
プリカの大部分は何らかの形の“割引き”を伴って発行されている。

 

プリカの元祖、「テレフォンカード」では、
1,000円で、1,050円分の度数があり、割引率5%である。
かつては、5,000円とか10,000円のテレかもあり、
割引率も高かったが
カード自体が、構造的に偽造されやすい欠点があり、
また、換金も出来るカードなので、
偽造が頻発し、高額テレかはもう販売されなくなってしまった。

 

ハイウェーカードも、
50,000円で58,000円分という16%引きという高い割引き率のものもあったが、
今は高額なカードはもう販売されていない。
やはり偽造が頻発したのだろうか。
偽造テレカを街角で不良外人が売っているところはよく見たが、
ハイウェーカードはあまり見ていないけど。
(私が知らないだけか?)

 

いずれにしても、プリペイドカードは、
クレジットカードよりも発行も、取り扱いもはるかに簡便であり、
焦げ付きのリスクもない。
結果的にコストが少なく済んで、
顧客囲い込みのための“値引き”がしやすい構造になっている。

 

マイレッジも顧客囲い込みには非常に有効だが、
カードの登録、マイルの商品への交換業務などなど
マイレッジの運営にはものすごい労力と、それに伴うコストがかかっている。
航空券のように、一回の購買金額がかなり高い商売でないと、
なかなか出来るものでない。

 

それに比べて、“値引きは”は、実に簡単である。
テレカのように1,050円分のカードを、1,000円で販売すればいいだけだ。
運営のためのコストはほとんどかからない。

 

実は、テレかにしても、ハイカにしても、
高額カードが廃止されたのは、偽造が原因だけではないような気がしている。
プリペイカードは、高額カードになるほど割引率が大きくなり
50,000円のハイカなど割引率が16%にまで及んで
一番安く高速道路に乗る方法として、多くの人が利用していた。
私の家族もこれを使っていたほどだ。
考えるに、
割引率が高いカードは、
公団としても、それほど売れるとは思わなかったのではないか。
しかし、たくさん高速道路を使うものとしては16%の割引は大変“おいしい”。
だから、思ったよりもこれが売れることが分かってきたら、
いわゆる単価の低下が、予想以上にあったため、
高速道路の収益にまで影響すると考え、
思い切って高額カードの発売をやめてしまったのではないか。
偽造カードの発生という高額カード廃止の理由は、
ひょっとしたら2次的な理由ではないか

 

高額プリカに大きな割引率をつけてしまったため、
計算外に全体の収入にまで響いてきて、
あわてて発売を中止したと言うこと、
こちらの方が主なる理由であると、私には思えて仕方がない。

 

 

もうちょっと、しつこく考えてみる。

 

消費者側として、
プリペイドカードのデメリットは、先にお金を払わなければならないだけで、
それによって、十数パーセントも安く買えることになれば、
それは大歓迎なのだ。
バカみたいな高い利息が付いているサラ金や、
カードローンなどを使っている“計算できない人達”は、一部の人であって、
買う前に、あるいは利用する前にお金を払うだけで、
十数パーセントも安く買えるカード、つまり高額プリペイドカードが
消費者に有利であることを“計算できる”人達も
たくさんいるのだ。

 

その人たちが高額であるかも知れないが、
十数%も安くなるプリカに殺到すると、
これは商売の平均単価を著しく低下させて、
ある限界を越すと、採算点すら割ってしまうことも考えられる。

 

高額プリカで16%引きをやった場合、
ひょっとして半数もの人がこれを買ったとしたら、
売り上げは確実に8%下がってしまう。

 

8%の平均単価の低下、8%の売れ上げ減があったのでは、
採算が取れるわけがない。

 

8%の経常利益/売り上げ、
つまり、経常利益率を上げているような
そんな滅多にない、すさまじい高収益企業があったとしても、
ほんのちょっと資金が入ってくるというプリカのメリットのために、
その利益のすべてがすっ飛んでしまうことになる。
そんなことを誰がやるものか。

 

プリカは割引がしやすいので、
つい十数パーセントもの割引をしてしまうが、
大きな割引率が、自分の首を絞めることになりやすい。

 

いろいろ考えていくと
プリペイドカードとは、
世の中がキャッシュレスの便利さを享受する方向を向いていることと、
焦げ付きのリスクの分散という無駄なコストもなく、
消費者にとって一番のインセンティブである「割引」を、
容易に提供できるシステムとして、非常に有用であると考えられる。

 

ただ、プリカの特性として割引きが容易に提供できるばかりに、
つい採算に大きく影響するほどの割引きまでを、やってしまいがちであることは
プリカを採用するに当たって、十分に注意すべきであるようだ。

 

このキャッシュレスの時代に
洗車も、自前のキャッシュレスの仕組みを持つことは、
今後、必要なことと考えている。
そして、その仕組みは顧客の囲い込みに有効な仕組みであるべきであろう。
そう考えていくと、
「プリカ(自前の商品券も含む)」は、
多くの意味で、もっとも適切であると思える。

 

しかし、洗車の販売にプリカを採用するに当たっては、
十パーセントを越すような、
採算に大きく影響し、
経営的に致命傷になってしまうような大きな割引きを、
添加しやすい体質を持っていることを、
よくわきまえた上で採用することが必要である。

 

私的な感覚で言えば、
5,000円の洗車プリカで5,300円分、300円(6%)の割引き添加。
10,000円の洗車プリカで10,800円分、800円(8%)の割引き添加が、
洗車を事業と考える観点での限界ではないだろうか。

 

プリカを提供する側と、買う側と、両方ともが
プリカを利用し続けられる一番よいバランスと感じる。

 

続けられるものでなくては、やるべきではない。

 

5日、名古屋から福岡に飛んで、田中氏と話をして、夜飲んだ。
6日、下関に移動、下関と宇部市で仕事のあと山本・畠中と飲む。そして広島に移動。
8日、広島で仕事後、台風18号に広島で捕まり、ホテルに缶詰となった。一人で飲む。
9日、朝一番で名古屋に戻り、2日分の仕事を嵐のように片付け、オーパラの人など7人で飲む。
10日、本日、また福岡まで飛行機で飛び、約50人の方が集まるセミナーで、
講演をさせていただいた上で、また飛行機で名古屋に戻った。
・・・・・今日は飲むのやめとこ~

 

台風と、連夜の飲み会の5日間であった。
・・・・・
不思議に疲れていない。
元気である。
不思議である。

 

※この写真はずいぶん以前にとったもの。
本文と全く関係ないが、なんとなく載せたくなった。

 

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    代表取締役会長兼CEO

    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
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