谷 好通コラム

2003年03月03日(月曜日)

654話 「貧すりゃ鈍す」

実は私の会社
12~3年ほど前に、資金繰りに窮して
下手すると、そのままつぶれてしまうかと思えた
危ない状態になった事がある

 

今のトレーニングセンター
この形になる前の前
最初は、「クリーンベースWith」という有人洗車場であった
その店を建てた頃である
(今の快洗隊のノウハウは、このクリーンベースの時の経験が大きく影響している)

 

この建物を作る時には
まだ、ガソリンスタンド「共同石油・高津波給油所」を、やっていただけで
それほど資金的に余裕があるときではなく
このクリーンベースを作るための資金の返済は
クリーンベース自身が上げた利益の中から、払っていく事にしていた

 

しかし、クリーンベースの立地条件は決して良くなく
店の存在を、地域の人たちに認知してもらうためには
かなり苦労することは目に見えていた
しかし、そのころ私は
車をきれいにする新技術を身に付け
日本国中の車を磨きまくろうと、理想に燃え
あらゆる困難を乗り越える自信に満ち溢れていた

 

開店した当初は
案の定、客入りはあまり無く
赤字経営であった

 

しかし
「もっと宣伝すれば、必ず、お客様は来てくれて
クリーンベースの洗車と磨きを経験してくれれば
絶対、ファンになってくれるに違いない
そうすれば、今の赤字などぶっ飛んでしまう」

 

ひたすら、そう思い込んで
宣伝を打ち続けた
新聞折り込みチラシ、地元自動車雑誌への広告掲載などなど

 

毎月の高津波給油所での黒字を
クリーンベースの運営赤字で使い果たし
建設資金の毎月の返済と、打ち続けた宣伝広告の費用が
まるまる赤字になった

 

少なくとも毎月何十万円、時には2百万円を越すこともあった
その前の土地の取得時の大きな出費
建設を開始した頃、新しい要員を入れて運営数ヶ月前からの人件費、研修費
運営を始めてからの宣伝費、借入れ金の返済
あっていう間の数ヶ月で、数千万円以上の資金が圧縮した

 

資金繰りは、非常にタイトになっていて
月末支払いのたびに四苦八苦した

 

それでも、私は宣伝広告を打ち続けた

 

それと同時に
収支計画を前もってすることをしなくなった
毎月、毎月、行き当たりばったり

 

今考えると非常に危険な状態であった

 

資金的にタイトなときにこそ、綿密な収支計画、資金計画をして
問題点を洗い出し
それを解決する方向で
注意深く経営をしなくてはならないのに
かえって、それをしなくなってしまったのだ

 

とんでもない話である

 

何故、それをしなかったのか
“楽しくなかった”からである

 

「収支が今現在どうなっているのか」なんてやっても
どうせ赤字なのだし
今月どれだけ赤字なのかを計算しても、楽しくなかった

 

どんな手を打てば、どう収支が予測されるのか
計算してみても
怖かったし、楽しくなかった
ただ、資金調達だけは、かなり前から手を打って
月末の土壇場に、どうしようもない状態になってしまうことだけは
巧みに回避していた

 

と言っても
銀行、金融公庫などから金を借りる手筈を、前もってしただけであるが
(ただし、高利貸しから金を借りるようになったら
その時、もう商売自体をやめようとは、決心していた
高利貸しからお金を借りるようになったら、この企業は完全に死に体だから)

 

収支の改善は
ひたすら宣伝広告を打ち続けて
客数を増やし、売り上げを上げることだけと思っていた

 

経営者としては、まったく未熟である

 

それでも、何とか
現・専務が店長であったそのスタッフ達が、がんばってくれて
何とか黒字の店にしてくれ
まもなくその危機は脱出したのだが、今考えると冷や汗物である

 

あのころの私は、今までの経験の中で
一番だらしなかった
無駄な金を使っても、平気であった
宣伝広告も気前よく打った、費用対効果なんて考えもしなかった
毎晩のように外で酒も飲んだ

 

どうせ赤字なのだから、それが少々増えても大勢に影響ない
そんな感じであった

 

赤字経営の会社は、
投げやり的なお金の使い方をする
そんな傾向がある
自分のやっていることが「赤字」であることを、忘れようとせんばかりに
刹那的な、放漫とも思えるお金の使い方をする
どうせ
少々頑張ったって“赤字”なんだから

 

赤字=貧しい経営
放漫=鈍い感覚
「貧すれば鈍す」とは、正によく言ったものだと思う

 

逆に経営が黒字になってくると
俄然、様子が変わってくる

 

経費の使い方、宣伝費の使い方、交際費の使い方
あらゆる出費に対して、微々たるところまで無駄が気になり始める

 

赤字は、経費を使うべき以上、あるいは使える以上に、使かってしまえば
無限に出るし、出せる
たとえば、1千万円の売り上げでも
馬鹿なお金の使い方をすれば、3千万円でも1億円でも
“余分に使った分だけ赤字”が出る
だから、「どうせ赤字なんだから」と、赤字に輪をかけるような馬鹿なこともできる

 

しかし、黒字はそうは行かない
たとえば、同じように1千万円の売り上げであったら
そこから商品原価が払われ「粗利」が、間違いなく1千万円より少なく出る
小売業ならば、30%前後が普通だろう(粗利=3百万円、仕入原価=700万円)
そこから経費がどれぐらいかかるか
健全な企業であっても
人件費とか、研究開発とか、運送代とか、事務所の家賃とか、宣伝広告とか
粗利の90%ぐらいは使ってしまうものだ(270万円の経費)
だから営業利益としては、その10%ぐらいのもの

 

1千万×30%×10%=“30万円”=営業利益=黒字

 

黒字は出すだけで大変な苦労であるが
出しても、商売の大きさ=売り上げに対して、微々たる金額しか出せないものなのだ
赤字のように派手に出すことなど、絶対出来ない

 

1千万円の売り上げに対して、30万円の黒字が出たとする
そこで、経費削減に一生懸命努力して
270万円の経費を、30万円削減して240万円にすると
営業利益は60万円になる
黒字が倍になった!
もう一丁頑張って、仕入の原価を10%下げると
(原価率63%、粗利益率37%になる)
700万円×10%=70万円が営業利益に上積みされて
改善後の営業利益
60万円+70万円=130万円になる

 

経費を10%削減して
仕入原価を10%下げると
それまで30万円の営業利益が、130万円になる
なんと、4倍以上になるわけだ
営業利益率13%は、上場企業でもなかなか出せない立派な実績だ

 

そんな努力をして
なおかつ10%の売り上げ向上を果たすと
一千万×110%=1,100万円×37%=407万円-240万円=164万円
164万円の営業利益となり
改善前の約5.5倍の営業利益となる

 

ごく普通の小売業で
営業利益率3%程度の、健全な会社が
10%経費削減、仕入れ10%ダウン、10%の売り上げアップを果たすと
純利益、営業利益が5.5倍以上になるのだ

 

こんな楽しいことはない

 

だから、経費の無駄に神経質になることも楽しいし
仕入れにもシビアになる
売り上げを向上させることにも、一層力が入る

 

赤字は、そのまったく逆だ
ある程度の赤字が出ていると、多少気を緩めても
赤字が増えるだけ
その赤字額が大きくなってくると、10%程度の改善は焼け石に水で
逆に10%だらしなくやっても
赤字も、全体から見れば少々膨らむだけ
仕入れにも、経費の使い方にも、売り上げにも
だらしなくなる

 

最後には、馬鹿高い金利という
まったくメリットのない金にまで手を出すようになり
ここで事実上アウト!
破滅に一直線
よくあるパターンである

 

「貧すりゃ鈍す」は、赤字スパイラルの素

 

十年以上前のあの経験
赤字スパイラル突入寸前、何とか踏ん張ったあの経験が
私の経営の原体験になっているのかもしれない

 

今日は、朝5時に起きて
?部長と、約250km、車で神戸に向かった
神戸では、うってつけの土地に
新しい神戸快洗隊を作り上げるための工事屋さんとの初打ち合わせだ
とても、楽しい時間であった

 

その土地をお世話してくれた不動産屋さんと、神戸快洗隊の阪田さん
神戸快洗隊の福の神である

 

 

とんとん拍子で話は進み
昼、大阪伊丹空港から「四国・松山」に向かう
機体は「サーブ34B?」
34人乗りのプロペラ機である

 

空は小雨
雨雲が垂れ下がる中
飛行機は揺れに揺れた

 

機内アナウンスで「ただいま翼に着いた氷を除去していますので、
取れた氷が機体に当って音がしております。ご心配ありません。」
と言っていた
初めての経験である

 

※尾翼が凍っている。

 

 

※降下中

 

 

翼の後端のフラップが下がって、いよいよ着陸態勢

 

 

明日は、また早く起きて
朝7時過ぎのフェリーに乗って、大分に渡る
約4時間の船旅だ(乗船料1300円!)
その夕方、今度は飛行機で東京へ移動
このところのスケジュールは、馬鹿馬鹿しいぐらい密である
誰がこんなスケジュールを組んだのか
もちろん自分である (#^.^#)

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    谷 好通

    キーパーのルーツであり、父であり 男であり、少年でもある谷好通の大作、名作、迷作コラム。
    読めば読むほど元気になること間違いなし。・・・の、はず。

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